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ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」82

その夜、剛は夫人に連絡する。 「Yes, I'll locate the article,,,そうです。近々作品の場所が判るでしょう。状況が固まってきました。私の父を殺したのが誰なのか、恐らく、店の誰か、、。そして、作品を隠したのは、その人物かあるいは周防夫人本人」 「そう、、」 そう、やはり店の人間が、、。まだ日本にあるはずだとは思っていた。持ち出された形跡はなかった。後は万一破壊されたりしていなければそれでよかった。「例のあの作品」とは、それなのだ、、。 剛の報告を受けて、夫人は急遽来日する。店の立ち入り捜査が始まるだろう。日本の捜査官や上層部には内密に状況を報告しておいた。周防美術商ということで最初は渋っていた彼等は、しかし殺人事件となれば動かざるを得なかった。ただ「あの作品」のことは彼等には伏せられたままだった。 そうして剛は来日してから初めて調査員として店の閉店間際に入った。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」81

沈黙の後、彼女は続ける。 「私には、いわゆるトラウマはないの。 あまりに小さかったから。でも、得体の知れない恐怖だけがずっと残っているの。だから、その、壁があるの、壁が」 「いいよ、もうそれ以上言わなくても」 「あなたにも」 「そうだ。俺にも、それがある」 「意識できない「トラウマ」があるでしょう?そう説明してよければ」 赤子の時の体験。まだ認識さえもなかった。言葉さえもなかった頃の恐怖。言葉さえも無意味な、トラウマにさえなることのない恐怖。ただその恐怖反応は消えることはない。 「親のことは、恨んでいないのか?」 「もう恨んでないよ」 「どうしてそんなに寛容になれる?」 「愛しているから、親のことは。どうにもならないし、仕方ない。理屈では説明できない。ある日、突然、こう天から降ってきたような」 不思議なジェスチャーをしながら彼女は空を仰ぐ。 「愛されていなくても、関係ない。どうしようもないんだよ。どうしようも」 彼女は一旦口を閉じ、再び開く。 「それに、誰もいなくて誰も助けてくれないと思った時、天の声を聞いたと思ったことがあったから、だから、それでいいの、それで」 理沙から何か温かいものが流れてきたように感じ、剛はそれを確かに受け取った。光。そう言って良ければ、、。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」80

剛が理沙を避けるようになって、一緒に住む話も立ち消えになり、理沙は別の場所へと引っ越していった。 でも彼は自身の出生の真相へと近づき、無性に彼女に会いたくなる。結局、相変わらず美術商に勤め続けている彼女の現住所を、翻訳の仕事を頼みたいからと口実を作って管理職から聞き出す。 彼女に会えば何かが変わるかもしれない。 「久しぶり、、」 そう言う剛に理沙は何も怒ったりはしなかった。彼が何かに苦しんでいるのははっきりとわかっていた。 「君の言っていた見えない心の意味が何となくわかったよ、、。見えないものを見ようとしても無駄だって言うことが」 それから彼は実の父と母のことを彼女に話し始める。聞き終わった彼女はまた自身の過去を話し出す。 「私は、、、階段からどうも落とされたらしいの、、。ほら」 言いながら彼女は前髪を生え際までかき上げる。そこには確かに小さな傷が、はっきりと残っていた。 「頭が、ボールみたいに腫れたんだって、、、さ」 彼女の瞳から雫が溢れる。 「今でもわからない。どうして、その、母がそうしたのかは。彼女はもうとっくに死んだから、、、遠くで」 何を見ているのかわからない透明な視線が彷徨う。 彼女は黙り込む。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」79

「あなたの母親はあなたを守って隠すためにあなたを公園に捨てたの。引き取りの段取りをした後で。彼女の遺書に、もしあなたがいつか帰国した時に、それを説明して欲しいと書いてあったわ。店は、あの時、息子だけでなく、店の秘密を知っている者、もちろん彼女のことも付け狙っていたから。彼女は店の人間があなたのことも手にかけると思っていた。だから」 それが本当のことだったってわけだ。剛の母から資金を得て、亜由美はアメリカ留学を果たした。それから彼女は彼をアメリカに置き去りにし、いつの間にか店に所属する「先生」になっていた。剛は亜由美を母親だと思い、しばらくの間でも、本当の母親のことを、彼を捨てた人間として憎んでいた、、。 そして、ずっと、捨てられたことから彼は、永遠に消し去ることのできない、取り除くことのできない、認識することのできない「トラウマ」を抱えていた。 それが、真実へとつながる扉に鳴った、、。 理沙の言っていた、「見えない心」の意味がうっすらと解り始める。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」78

周防美術商は店の将来を考え、そのために夫人の作品の存在のもみ消しを図ろうと、秘密を嗅ぎつけ探っていた剛の父を殺したのだろうと日記のページに綴られていた。作品の存在を知っていたもう一人の人物が藤木だった。彼に剛の父親殺害の罪を被せるために、店の誰かが藤木を現場に呼び出したのだろうと記載されていた。 そして、藤木は濡れ衣を着せられ、さらにパリで殺された。 それから剛が生まれる前に父親は死亡したのだろう。母は何かの理由があって生まれたばかりの剛を捨てたのだろうか。何故そうしたのか?求めても得られない父と母に関する疑問の答え、、。 深い物思いに沈んでいた時、電話のベルが鳴る。 「Hello? What? OK. Thanks!!」 手元のメモに素早く名前と住所を書き留める。同僚からの電話だった。彼女は剛の父の母、剛の祖母にあたる人の住所と電話番号を伝えてきた。もう夜も遅いと知りながら、剛は急いで「祖母」に電話をかける。 「はい、、、ええ、篠田ですが、、、?え?あなたが、、」 絶句した後、剛の祖母は電話口で涙を流しているようだった。 少しして落ち着いた後、彼女は静かに語り出す。剛の父のこと、そして彼女が反対した父母の結婚のこと、、、それから、剛の母親が店の追跡と追及を逃れるために「自殺」したこと、、。強いショックを受け目眩を覚えながらも剛は聞かずにはいられなかった。 「どうして、彼女は俺を捨てたんだ?」 暗い暗い深淵の底から真実が浮かび上がる気配がする。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」77

「何なの、これは!?」 瑠璃は秘書の前で週刊誌をデスクに投げつけた。 彼女と滝沢との関係が詳細に掲載され、彼女に作品を買わされたと名門美術商のスキャンダルがぶちまけられていた。それには彼女が短いスカートで彼を誘惑する仕草をしている写真が丁寧にも添えられていた。もちろんふたりがホテルの部屋に入る写真も。 瑠璃の赤い爪の指先は怒りと屈辱で細かく震えていた。 作戦がうまくいったこととは別に、思い悩んだ末、剛は夫人へ電話をかける。遠い国のコール音が確かな物ではないように響く。七回程鳴ったところで夫人が答える。彼の深刻で、沈鬱な声を聞き、何か聞く前に静かに語り出す。 「You have to find the truth, like I have to find my truth. The truth for you and me. By mean, you are my son and I am your mother」 夫人は二人が真実の探求で強く結ばれた親子であると語る。 「You already know about it?」 この事を知っていたんだろう?と剛は夫人を責める。 夫人は静かに続ける。 「あなたの父親は、私の父が調査を頼んだせいで恐らく死亡した。父は大戦中に奪われたあの作品を探していた」 剛の父は、その作品を探し出し、夫人の父へと渡す予定だった。それに伴い新たに店を開くだけの資金援助を受ける予定でもあったと藤木の日記に記載されていた。剛は夢中でページをめくった。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」76

 瑠璃はブランド物のピンクのスーツに身を包み、宝石の散りばめられた作品を数点滝沢のオフィスに持参した。 「本日はご足労いただきありがとうございます。本来ならお店におうかがいするのですが」 「いえ、大切な滝沢様のお目にとまったと言うことなので、特別に」 言いながら彼女は流し目を送る。口調は滑らかで声は艶やかだった。こんな感じで顧客を手玉に取ることには慣れっこになっているといったところだろうか。 「コーヒーでもいかがですか?」 「ええ」 身体が沈み込むようなソファに腰掛けながら、瑠璃は作品をガラス張りのテーブルの上に丁寧に置き、包みを解く。コーヒーが運ばれてきて、事務員が応接室を立ち去ると、滝沢はドアを閉める。 「さて」 瑠璃は作品にかかっている覆いをそっと外しながら、同時にテーブルの下で足を組み替える。滝沢は瑠璃の向かいではなく隣に腰掛ける。彼女の身体が一瞬はねる。彼は彼女に身体をピッタリと寄せ、短いスカートから剥き出しになったその太ももを撫で始める。本来ならそこで何らかのリアクションがあるはずだった。彼は指先をスカートの中にわずかに差し込み、それ以上の関係をそれとなく彼女に示唆した。婚約者を亡くしたばかりの滝沢はどことなく崩れて何か残忍な影を持ち合わせ、作品を売ることとは別に、瑠璃のめがねに敵わないと言うわけでもなかった。 「作品はお気に召しまして?」 「ええ。それとここもなぜか気に入りそうで」 滝沢は瑠璃の下着に触れる。そして彼が作品を買うことを暗黙の条件として取引は成立した。 「部屋は押さえてありますよ」 彼は彼女の手を強く握る。 その日の内に彼は作品の代金を入金した。 夜には彼は彼女の肉体を入手した。 滝沢は高価な作品を購入して、十日後、デート商法の記事を週刊誌に掲載させた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」75

父親の死の真相と母親から捨てられたということが剛の精神にも混乱を招き、バー通いをして、酔っ払うようになる。酒に浸ることで頭上のぐちゃぐちゃを追い払う。ひりつく精神の中、「俺に一定以上近づかないでくれ」と理沙を遠ざけ始める。 しかし調査は予定通り進められた。彼は夫人と協力して、飛行機の中で滝沢と瑠璃が出会うように工作する。滝沢は瑠璃と同じファーストクラスに乗り、彼女に接触する。予定通り名刺を交換する。滝沢の名刺に刷られていた身分があまりに高いものだったので、もちろんまずそれが瑠璃の気を引くには十分だった。おまけに飛行機の中で通販主流の高級品ばかりを特集した雑誌を広げているところを彼はわざと瑠璃に見せる。あとは全く計画通りだった。ありきたりの差し障りのない会話を二人は機中で交わし、連絡先を交換してから別れた。 帰国後、瑠璃は早速その名刺から滝沢を例のごとく調査し、しばらくしてから彼のところへ店からパーティーの招待状が届いた。名門の店とあればそのパーティーは誰もが入れるというものでもなかった。入れる人物は限られていて、概ねはプライベートで招待状を持たずにはその門は狭くてくぐれなかった。 滝沢は瑠璃と再会し、徐々に親しくなっていった。次の段階へと進むにはそう難しくはなかった。それから彼女に作品を持ってこさせるように画策した。 「じゃあ、明日の午後二時にオフィスに作品を見せに来てください。お話ししましょう」 「承知いたしました」 彼女は少しずつ蜘蛛の巣に近づいていく。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」74

 アナウンサーがニュースを何の抑揚もつけず、ただ淡々と話す。 「十五日午後一時半ごろ、渋谷の雑居ビルのネットカフェ「メディアライブ」で女子トイレの洗面台に、男の乳児が捨てられているのを清掃中の女性従業員が発見、救急へ通報しました。男児は病院に運ばれ、命に別状はないということです。警視庁渋谷署は、保護責任者遺棄容疑で、現在捜査中です。調べでは、乳児は洗面台の中に衣類に包まれていました。臍の緒が着いており、上から布がかぶせられていました。通りがかりの従業員が泣き声に気づいて乳児を発見した模様です。同トイレの個室内に血を拭った跡があることから、同署は乳児がトイレ内で生まれた直後に置き去りにされたとみて、不審な女性の出入りがなかったか調べています」 薄暗い公園、、、雨、、、寒い夜、、。 赤ん坊の泣き声、、。 それらがまるでリフレインのように剛の頭の中でこだましている。 俺は、あの時、死にそうになった、、。血まみれの乳児、、。生まれたままで俺は捨てられたのか、、。 思い出せない過去。死にそうになった感触。恐怖だけがただ蘇り、はっきりとトラウマを形成するほどの記憶もない。生まれたばかり。見えない覆い。見えるはずもない。まだ認識すらない。あの夫人にも、どうにもできない剛の恐怖の記憶。捨てられた記憶?感覚?実の母の意思か、それとも、、。公園で産み落とされた。引き取った亜由美にも捨てられた。ずっと寄宿舎暮らし。夫人が援助していた。途中から彼女が剛を探し出したから。何故なら作品の行方を追い、剛の父が殺され、その近親者の行方、さらにはその恋人の行方を追い、全てを不確かながらも把握した。大戦という言葉の記憶は剛がまだお腹の中にいた時に聞いたのか?産み落とされた時に、聞いた母の叫びなのか、、。 それからしばらくは、剛は理沙も避けるようになっていく。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」73

 剛は思考をぐるぐると巡らせる。 もし、父が生きていたら、どこかでこっそりと二人で生活を始める予定だったのか?そして俺を孕っていた彼女は、俺の父となる男をずっと待っていたのか?生活費は? そうか、作品を本来の持ち主に返すことで謝礼が入る予定だったのだろう。でもそれは、同時に敵を作る危ない金だった。俺の父は、だから殺された。俺の母は、俺を産み落とし、そして捨てた。何故?俺は必要なかったのか?愛はなかったのか? そして、あの亜由美は、俺の母だと思っていたあの亜由美は、ニューヨークへの留学資金確保と引き換えに公園から俺を連れ出し彼女の親戚の子供か何かということで一緒にアメリカへ渡る。しばらくはお金があったが、俺の母からの送金も途絶え、貯金も底をつき、レストランなどでバイトをしていた。やがて心身がキツくなり、金銭事情も厳しくなった。 そう亜由美は説明した。 剛は、雨の降った、あの惨めな夜を思い出す。 ゴミクズのように路上に放り出されたあの夜、、。 激しく降る雨がコンクリートにたたきつけられていたあの夜、、。 真相に近接したその晩、ラジオのニュースが流れた時、剛の中で何かが壊れ、崩れ始める。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」72

 全てのことを知ってか知らずか、彼を援助し続けた女性、夫人がいた。しかし彼女はある目的を持っていた。祖父が所持していた宝石を彼女は探していた。彼女の父はふとした縁からその作品を探すのをある男性、剛の父に頼んでいた。そしてトラブルは発生した。どこから宝石を引き取ったのかわからないと言い張る店。しかしその実、作品には大戦にまつわる忌まわしい過去があった。 作品を所有していた人物は店のお得意で店の身内の関係者であり、なおかつ財界の中枢に位置する人物だったのではないか。作品が盗品であることを知りながら旧知の人物から店が買い取り、戦後その人物の財政の立て直しを手伝った。 そして作品が店に流れ込んだ。大戦が終わり、店は作品を処分できずに、ずっと隠し続けていた。それを剛の父が探り当てていた。それらの報告を夫人の父にしようとした矢先に殺された。 結果、秘密は再度、封印された。 待っていた恋人、剛の母の、来るはずだった恋人は亡くなってしまった。おそらく結婚するはずだったのでは?でも何故、二人は孤軍奮闘していたのか。剛の父の、あるいは母の両親は二人の関係に反対だったのだろうか、、。 でも 「野上さんはご両親もご兄弟も居なかったはずだから」 亜由美はそう言っていた。 「俺の母は天涯孤独だったのだろうか、、」 だから彼を捨てたのか、、?

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」71

 剛は書棚から急いでその作品集を手に取りレジへ向かう。すぐにくだんの営業マンへ連絡する。亜由美は長期の出張に出ていると告げられる。モデルになる件で彼女と何とか連絡を取れないかと持ちかけると、営業マンは快く応じ彼女の旅先を調べてくれるという。 そして剛は、彼女を店で見かけた時に、何か逃げるようなそぶりをしていたのを思い出す。営業マンには、彼女を驚かせたいから行くことを内緒にしておいてくれと頼む。 亜由美とは思ったより早くに連絡が取れ、驚いたことに剛の来訪に逃げ出そうとはしなかった。何か覚悟を決めていたようで、いつかこうなると思っていたと彼女は静かに話し出した。亜由美はそして剛をアメリカに置き去りにしたことから説明を始める。 それから剛の母親は亜由美ではなく、野上幸恵という女性だと告げる。 「彼女はあなたを公園で産み落とした後、私にあなたをアメリカへ渡らせるように指示した。それと引き換えに、彼女は私に留学資金を援助してくれた、、」 「それが、俺の母親だと、、」 「そう。それがあなたの実の母親。私は、あなたを一時的に引き受けただけ」 「何故、俺の母は俺を産み捨てたんだ?何故、一緒に連れて行ってくれなかったんだ」 「それは、私にはわからない。何も聞かない約束だった。私は、ただお金が欲しかっただけ。それだけ」 「、、、こんなことを今聞いても、、、俺はどうにもできない」 言いながら剛は肩を震わせる。 「あなたの、名前はだから私の姓ではない、野上、とアメリカで届けられたの。あなたの母親の名字よ」 それ以上、剛は何も聞くことがなかった。亜由美と別れ、彼はひとり反芻する。 世界の全てが崩れていくような感覚が襲ってくる。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」70

準備が整い、後は仕掛けるだけとなった頃、滝沢は婚約者だった娘の父である藤木から預かったという日記の写しを情報として剛に提供する。日記には、剛の父らしき人物のことが書かれていた。野上という女性と当時付き合っていたらしい篠田という人物に関して書かれていた。藤木の日記には、篠田が殺された時の事が記載されていて、藤木が現場に着いた時には篠田はすでに死亡。藤木は誰かにそこへ呼び出されたとある。罠だと気づいた藤木はそこから足速に逃げ出した事が書かれてある。そうして日記には「あの作品」という言葉が出てくる。篠田という人物の死は、きっと「あの作品」に絡んだものだろうという、、。そして、そこに、あの「あゆみ」の名前が出てくる。「野上という女性とどうやら親しく、、」 「親しく、、?何だって?親しくって、どういうことなんだ」 剛の母親は野上あゆみではないのか?うっすらと覚えている母の名前は「あゆみ」だとばかり彼は思っていた。じゃあ、あの「あゆみ」は誰なんだ?俺の母ではないのか? 疑問を持つとそれが彼の脳髄から離れずにぐるぐると渦を巻き始める。 震える手で日記をやっと閉じ、少し冷静になろうと日本に来てから時々行っていた丸の内の大きな書店に向かう。アメリカの雑誌を数冊見たところで気持ちを鎮め、美術書籍が並んでいる場所へ向かう。様々な作家の作品集が並んでいる棚を丁寧に調べ、先日、何か引っかかる視線を彼にむけていた作家の作品集を見つける。 「山野、、、亜由美、、」 衝撃とともに彼の中で何かが弾ける。細い糸が見え始める。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」69

剛のその変化を理沙は敏感に感じ取っていたが、理由は全く検討がつかなかった。捜査のことなのかどうかも不明なままだった。彼女は彼を冷静な視線でじっと見ているしかなかった。出会った当初の頃、彼と間近で初めて接した時に感じたある種の「暴力性」が、徐々にはっきりした形を取り始めていた。彼の瞳の中に、何か残酷で、野蛮なものがちらつく。そこから言い知れないゾッとするような、まるで回避しても仕切れないというような哀しみと孤独の影が染み出してきていた。今までの彼の表面からは想像もつかない精神の何か別の場所から生じているかのような、あるいは本人の意識の最も深い場所から生じているかのような孤独だった。 入手した資料を剛は豊に提示しながら説明する。 「写真はこれだ。すぐわかる顔だ。憎んでいる周防社長の娘だ。知っているか?」 「少しだけ知っている」 「よく覚えておいた方がいい。服装はブランド物を身につけていて派手な女だから」 「分かった」 「不自然ではない方法で近づけ。飛行機は狭いし、接触のチャンスは多い。アメリカの知人に頼んでファーストクラスの彼女のすぐ側の通路を隔てた席を予約してある。会話のきっかけは、、、これだ」 「ファイブワールド。世界を股にかけて仕事をする富裕層向けの雑誌だ。アディクタム、セブンマネーなどの様な」 「書店では見かけない」 「通販が主流だから」 「これをどう使えば?」 「例えば、この雑誌で見た周防さんですか?とか」 「なるほど、、」 「そうすれば、相手はあなたのこともこういう雑誌を読む階層の人間だと認識する。後は俺の指示した様な服装や所作を心がけていれば相手はあなたに興味を持つだろう。それで後はいかに裕福なのかを印象づければいいだけだ。要するに高額な美術品、宝石を購入する意思があるというように」 「古美術や宝飾品の趣味があるとか」 「そうだ。仕事柄、あなたはその手の知識は豊富だろうから」 「そうだけれど、宝石はあまり詳しくはない」 彼は死んだ婚約者のことを思い出す。彼女は希少な石に詳しかった。 「とにかく、チャンスは掴まないと」 「そうだな、、」 「相手は何はともあれ作品を売りたがっているから、あなたはいいカモに見えるだろう。場合によっては積極的に近づいてくるだろうから。それから名刺交換でもその場でしておけばいい」 「それだけか?」 「そうだ。後はこちらから積極的に出...

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」68

 翌朝、その若い男性、瀬田豊に、剛は復讐の計画を練るために電話をする。最初に、瀬田が自由に動けるように店に何らかの方法で出入りさせなければならない。名前も変えざるを得ないだろう。万一知っている人間が店の中にいると困るからだ。まるで悪魔がその時の剛の耳元に囁いている様だった。そして、悪魔が、その若い男を自由に泳がせ、目的を遂行させるためにあらゆる物質的な手段を与えなければならないと告げる。剛は、その時、周防社長のあの言葉を考える。 「ちょっと、この方の身分と身辺を調べてちょうだい。お金があるのか、身元がしっかりしているのかどうか。良ければ、今度のプライベートパーティーに招待したいから」 そうか。それが一番簡単だ。 瀬田にはある一定のステータスを与えれば事はすんなりいく。例えば、アメリカの会社の支店の社長とか、、、剛自身がそうであるように。 その晩、剛は早速アメリカの夫人にその件を依頼する。 「分かったわ。明日の朝までに、全ての必要書類をファックスで流します。でも、その瀬田さんが英語を話せないとどうにもならないのですが」 「了解です。それは私が何とかします」 夫人はそれから非常に素早く物事を運んだ。その晩、日本時間の翌朝までに、剛は全ての必要書類をファックスで受け取った。 「私の会社の本当の役職です。場所は」とか「男性は、日本をかなり以前に出国し、私の会社で仕事をしている管理職の本物の身分を彼に提供します。その為には写真などが必要です、、」等と記載してあった。「いずれにしても、英語を鍛錬してください」と明記してあった。 その「本物」の書類のコピーには、復讐の為に嘘のステータスを確立させるために必要なものが全て含まれていた。瀬田の名前は「滝沢」に変わった。 その日から、昼夜問わず英語の訓練が始まった。幸いにも「滝沢」はアメリカに留学したこともあり、美術品の輸出入に関わる仕事の為に、英語をある程度までは習得していた。 剛は、彼自身の中の黒い欲望を抑えることが不可能になっていった。一体何を自分が行おうというのかが分からなくなっていった。どろどろとした闇が染み出すようにまとわりつき始めた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」67

その瞬間、剛はある種の執念に取り憑かれた、ただの孤独なひとりの男になった。 「彼等を憎んでいるだろう?」 彼はそう繰り返す。青年は、それには応えずに沈黙し、しばらくして冷たい声でつぶやく。 「復讐したい、、」 「もし、私を信用するのなら、連絡先を教えてくれないか」 言われて男は決心したように電話番号と名刺を差し出す。 「瀬田豊、、、本名か」 「嘘を吐いても仕方ない」 「戻らないとならない。店の人間に怪しまれるとまずいので。今後どうするかは後で連絡する」 「車を降りてもいいですか?」 「戻らないのか?」 「戻っても意味無いですから」 「わかった」 青年は静かに車を降りると、地下鉄の駅に向かって歩き出す。自分自身の運命が何か大きく変わったことを剛は感じていた。街のイルミネーションに囲まれた車体の中で、そうしてしばらくじっとしていた。 もう長い間吸っていなかったタバコを無駄だと知りながら探す。それから車を発進させ、ゆっくりと店に向かって走って行った。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」66

そのまましばらく車を走らせると、二人は新聞社の入っているビルの横の細い道に進んだ。普段は二、三台の車が駐車している場所だった。今夜は他の車も人目もなかったため、剛はそこに停める。 「ここなら誰も我々の話を聞いたりできない。まあ防犯カメラで録音機能がついているものもあるが、この車両は特別製だから安全だ。窓はスモークだから外からは見えない。さて話を聞こうか」 連れてこられた男は、事情を話すのを躊躇しているのか先に質問してきた。 「あんたは、誰なんだ?」 問いかけに剛は沈黙したまま答えなかった。男は、その質問をしてはならなかったと悟る。 「わかるだろう?そのことは今は話せない、悪いけど。いずれ機会を見て説明しよう」 一旦、そこで言葉を切ると、剛は続ける。 「ただ、君を多分助けることができるかもしれない。もし、良ければの話だけれど」 そう告げた時、剛は入ってはいけない領域に踏み込んでしまった。まるで彼は彼の父を殺した犯人がもう店の人間であると知っているかの様だった。調査員という身分を、その瞬間に逸脱し、彼自身の抱く、隠れていた憎しみと復讐の誘惑に負けた。彼の魂を飲み込んでいく炎は苛烈だった。 「今はまだ私のことを話すわけにはいかない。君には全く関係のないことだから。承知してもらいたい」 考えた末に男は答える。 「わかりました。しかし、何故私を助けたいと思ったのですか?その理由ぐらいは教えてもらっても」 「簡単なことだ。君は彼等を嫌っている。もしかして憎んでいる。そうだろう?」 「ええ」 「私もだ。彼等を嫌っている。憎んでいる」 言いながら剛は、何故だか自分の代わりに誰かが話しているような感じがしていた。その声は母親に捨てられた少年の声であり、憎しみと孤独に満ちていた。憎しみの世界に一歩足を踏み入れた途端、以前の様に自分を抑えることが彼にはできなくなっていった。 その時から、彼は調査員ではなくなった。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」65

新たに判った出生の秘密に加え、遅々として進まない調査の最中、剛は二十代後半位のまだ若い青年の憎しみに満ちた視線にある時ぶつかった。男は店のいつものパーティー会場で、女主人と娘を見ない振りをしつつも時々こっそりと凝視していた。ちょうどその彼の衝動的な動きの直前に、剛は耳元で囁きながら男の腕を引っ張った。 「ここでそんなことはやめろ」 「なんだって?」 剛は腕を掴み、男を会場の隅に連れて行った。 「こっちへ」 「あんたは誰なんだ」 「しっ。周囲に聞こえる。静かに」 「わかった。でも」 「あなたの味方だ、心配するな」 若い男は剛について行き、二人とも店の裏の出口へとやってきた。ドアの横にはいつもの様に、警備員代わりの従業員が貪欲で濁った目で剛達をじっと見つめていた。 「お帰りですか?」 言いながら、男は剛の連れている、今日初めて見かけるその若い男性をじろっと見た。それに気づいた剛は、手短に説明する。 「彼は私の友人でして、今夜初めてここに来たんですよ。人いきれしてしまって、ちょっと外の空気を吸って、また戻ってきます」 「かしこまりました」 それから、興味を失った看守は、二人のためにドアを開けた。 「こちらへ」 言われるままに男は黙って剛の後をついてきたが、用心深い様子を保っていた。 「何処へ?」 「私の車に入ってください」 「でも運転手が」 男はチラッと心配そうな目線を向ける。 手短に、何か英語で剛が説明すると、運転手はすぐに車を降りて何処かへ歩いて行った。代わりに剛は運転席に座る。 「これでいいだろう?我々だけだから」 「はい。これなら」 「ちょっと周囲をぐるっと回ろう」 「というと何処へ?」 「何処にも。ただ車の中で話せば誰にも聞こえない。そうした方が良さそうだし、あなたにもいいだろう」 男は黙って頷く。 「さて、と。街を一回りするか」 剛はゆっくりと車を発進させる。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」64

 帰る途中、車内で剛は真剣な口調で話し出す。 「あの会社は辞めた方がいい」 「どうして?」 「あの中に、殺人の」 「犯人がいるってこと?」 「そういうこと」 「でも、、、仕事」 「とにかく、しばらく休めよ、仕事は」 「でも家賃とか生活費とか」 理沙は心細そうにつぶやく。 「俺のところに引っ越してくればいい。安心して暮らせる」 「え?だって、安心って、問題持ち込んだのそっち」 「それは違うよ。元々あの店には問題が山積みだよ」 「それは、、、そうだけど」 「俺の家は広いし、部屋は余ってるし、いつでもオーケーだよ」 「でも、いつも冷蔵庫は空だし、食べるもの何もないし。作ってないでしょ」 「適当に買えばいいよ。生活費は当面、俺が持つから」 「でも、仕事したい」 「翻訳はできるんだろう?」 「それは、まあ」 「頼みたい仕事はあるから、、。とにかくあの会社はいずれおかしくなるから、今のうちに逃げたほうがいいんじゃないかな」 「何もかもお見通し、ってわけかな」 「ずっと調査してるからね、それは」 「人事のことも知ってるよね。色々と」 「まあね。日本的な嫌がらせとか、背面監視とか」 言われて理沙は黙り込む。 「隣の席のやつも同じだろう?連中は一蓮托生だな」 「えっと、いい人だと思うけど」 「いい人間なんて、あの会社にはもういないと思ったほうがいい」 「でも、きちんとしてる人だと」 「上に忠実なことと、人間としてのモラルを持っていることは別物だ」 「それは、そうだけど」 「君はナイーブだよ。簡単に人を信用するな」 言ってから剛は自身も彼女のそういうところを利用したことを思い出す。彼女の彼を見つめる目には何か非難の色が感じられた。理沙はひどく疲れてきていた。 そしてベンツが店の正面に横付けされることはもうないのだろうか。夕日に輝いていた、銀色のあの車体。優雅なドレスに身を包んでいた華々が今まさに闇に沈んで消え去ろうとしていた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」63

 一方の理沙は剛に愛情を抱いていることを感じ、何故だかそれが徐々に恐ろしくなってくる。まさか米国所属の機密情報調査会社の職員と、この先どうやって将来を共にできると言うのだろうか。彼女はそれを強く不安に思い、彼に会うことを極力避けるようになり、行方をくらませるようになる。スマホも繋がらなくなり、彼が彼女の家へ行っても普通の時間に人のいる気配がない。そのまま近所に車を停めて、朝まで待っていても彼女は戻って来ない。翌日も戻って来ない。会社にはどうやら行っているらしかったが他の従業員や瑠璃の手前、理沙にプライベートな用事があるとは言いづらく、また瑠璃がいれば理沙は電話には決して出なかった。 業を煮やした剛は理沙の行方を調査する羽目になる。行きそうな場所をしらみつぶしに当たるが、彼女の姿を見つけることがなかなか出来ない。そうこうしているうちに彼女が言っていたある言葉を思い出す。 「カフェがあるけど、硝子の猫がいるからいつも行ってる」 言葉を手がかりにカフェを探すがもちろんなかなか見つからない。猫を手がかりにネットで検索するとだいぶ絞られる。そこからやっと該当と思しきカフェを見つける。名前は「黒猫」でそこには確かに硝子の猫のレリーフがある。そういえば彼女の前職はカフェの付近の別の職場だったと言っていた。 どうにか特定できたらしい店で日長一日見張っていた。やっと彼は彼女が店に入ってくるところを見つけた。素早く席を移動して、彼女を捕まえる。 「こういうことは勘弁してくれないか」 「仕方ないでしょ。私、探偵じゃないから、調査とか面倒くさい」 「頼むよ。協力してくれと言っても何もしなくていいから」 「疲れた。気分があまり良くないの」 「逃げないで欲しいんだ。ただ、普通にしていてくれれば。その、俺のことが嫌いになったのか」 「調査会社とか、それも機密の調査とか、なんだかトラブルの匂い」 「もうトラブルの中だよ、君も。でも調査会社の職員だって、ただの人間だから」 「わかってる。でも」 「でも?」 「何で、私に近づいたのかなって」 「それは、、」 「調査のためだよね。フィクションでよくあるでしょ」 剛が口を開こうとすると理沙は遮る。 「言い訳は聞きたくないけど」 言われて彼は返す言葉もない。 「とにかく、、、帰ろう」 それだけしか彼は言うことができなかった。

FGOのクラススコアは

コツコツとレベルを上げておいた方がいいです。手持ちのサーヴァントたちが驚くはど強くなっていきます。 あと、石ももらえます。(^^)ぜひぜひ。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」62

そしてフランスから届いた藤木の検死報告書では、死体は頭を撃ち抜かれていたとあった。彼は半年前に渡航した直後に失踪しており、家族が受け取っていたメールなどは何者かが細工したものだった。実際の死亡時期と発見から推察された死亡時期には大きな開きがあることが判明した。その二つの間に距離があれば犯行時期は不明となり、犯人の特定が難しくなる。パリのマイナス十度の冷気が死体の腐敗をより遅らせ、実際の死亡推定時期を割り出すのは困難を極めた。 彼は篠田の死に絡んで、篠田と親しかったために、藤木を退けようとしていた派閥に、罠にかけられ、陥れられたようだった。篠田の死に藤木が関わっているのではないかという噂をばら撒かれた。当時は店の名誉を保つために藤木が犯罪に関わっているかもしれないということは不問に付され、もみ消され、封印された。 その時、周防夫人と店の幹部は、藤木がまさか「あの作品」の秘密を知っているとは思っていなかった。藤木はそしてどうやら篠田の死の真相も知っているようだった。 それからというもの、藤木は店に「捏造された弱み」を握られ、彼の業績はことごとく周防家の跡取り娘、瑠璃の支持する派閥のものとして計上された。 長年の内部対立の重圧に耐えかねた藤木は、自身が全ての秘密を知っているということを利用して、それをネタに周防夫人に内密に働きかけ、独立資金を得ようとしてついに一族の餌食となった。藤木正一の死後、妻、静恵は病死し、娘、真由子はノイローゼ自殺を図った。 藤木の死亡は店周辺で密かなスキャンダルとなり、業績にも徐々に影を落とし始めていた。何度ものバブル崩壊後、経費を削り続けなければならなかった華麗なるその店に、今度は殺人の風評がまとわり着いた。 そして店の跡取り娘瑠璃は、より大胆で危険な商法である、俗に言う「デート商法」に手を染め始めた。そこには思いがけない罠が潜んでいた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」61

藤木には歌舞伎町で篠田という男が殺された事件に関与した疑いがどうやらかけられていたらしい。店では、藤木はその男を殺したという罪に苛まれ自殺したということで処理されていた。話は瑠璃を通じて注意を傾けていた剛の耳にも当然入った。美術商は突然きな臭い雰囲気に包まれ始めた。あるいは古くから従業員の間で燻っていたものが出てきたとでもいうのか。 母親の姓を継いでいる剛が、その篠田の息子であるということは周囲ももちろんのこと、当の剛さえまだ知らなかった。 「Shinoda? OK. I'll check it, as soon as possible」 剛は篠田という名前の人物のことを同僚に報告し、調べてもらうように依頼した。答えはヌッセンバウムからの通信で返ってきた。 「Mr.Shinoda is the man who was waiting for arrival of Madame's farther to find the article...then, he was killed by someone before he communicated the information about the article to Madame's father...at Shinjuku...then...Madame demanded to me to tell you Mr.Shinoda is probably your father...but we don't know exactly...we」 そこまで読むと剛の指は震え出す。 「篠田」が俺の父、、。何故、今そんなことを知らせてくる、、。夫人は知っていたのか?このことをずっと?だから俺にこの件を担当するようにヌッセンバウムに依頼したっていうのか!? 半分怒り混じりに剛は夫人へ電話する。電話口に出た夫人の声は極めて冷静だった。 「かかってくると思っていたわ」 「どういうことなんだ。俺の父が篠田というその人物だなんて」 「私も本当ははっきりとはわからない。ただその可能性があると伝えたかっただけ」 「どうして調査の始まる前にそれを言ってくれなかった?」 「告げれば調査に支障が出るからよ」 「なんで、、、いまさら」 「やっと、その名前にあなたがたどり着いたから」 「なんで、俺の父は、、。じゃ...

FGOのイベントもひと段落

 毎日クラススコアを上げています。(^^) これが結構強化として有効なようです。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」60

しばらくして剛はハワイにある隠れ家に理沙を案内する。別荘はソーラーシステムで稼働していて、不在の時にはシステムをオフにしてある。ラニカイビーチのすぐそばにあり、夜はロマンチックな雰囲気がする。ハーブの入ったアイスティーを飲みながら、一緒に夕日を眺め、こんな過ごし方をしたかったと告げる彼に、彼女は初めてほっとした。彼の表情は自然なもので、日本でのどこか緊張した面持ちとは別の穏やかさがあった。アメリカ育ちの彼の魂はアメリカのものだった。 だが、日本へ戻ると落ち着く間も無く、店の現代作品を中心に取り扱っていた、一見陽気だった人物、藤木正一の死をまず知らされる。 藤木の死は不審死とされた。出張したまま半年経過しても連絡が取れなくなり、家族からは失踪届が出されていた。藤木はパリの森深くで頭を撃ち抜かれ横たわっていた。目撃者は出ず、犯人はすぐには見つかりそうもなかった。そしてそのすぐ後、藤木の妻は衰弱して病に倒れ、程なくして亡くなった。彼等の娘は父母を同時に亡くしたことにショックを受け、吸い込まれるように死を選んだ。その日、同線の別の車両に乗車していた理沙は、しばらく列車の中で足止めをされた。駅員に聞いたところ、亡くなっている場合は検死に一時間はかかるだろうとのことだった。去年から多数の事故に遭遇していた理沙は深いため息を吐いた。 一体、誰がこの国を救えるのだろう、、。 藤木の通話記録を警察が調べたところ、違法な通信機器が使用されていた。藤木は何者かに言葉巧みフランスに呼び出されていた。おおかた取引の誘いか何かだろう。買い付けのための海外出張は日常よくあることのため、誰も不審には思わなかった。違法な機器であっても元の持ち主の契約自体が生きて継続している場合、繰り返された転売の足跡を辿ることは容易ではなかった。最後に誰の手に渡り、どこで使われたのか、海外の通信網が関わっているとなると捜査は困難を極めた。 藤木はそしてパリに呼び出され、ホテルに一泊した翌日、忽然といなくなった。彼は一体誰に呼び出されたのか、、。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」59

剛は調査の進展がないことに対する苛立ちが募り、それを誤魔化すように六本木の派手なクラブに足を運んだりしていた。夜の豪奢な街を象徴する、鱗粉で飾り立てたような店や、肉の欲望で艶光りしているレストランにも通った。淫猥な内装のフレンチレストランでは、毎夜爛れた関係の男女が高価なワインに溺れていた。行き着く先は崩れかけた高層ホテルのスイートあたりだろう。そこでどんな夜を過ごすのか、そんなことは剛の知ったことではなかった。バブルの崩れたこの国で、消えた泡をもう一度その手に掴もうと、よじれた夢の欠片を拾い集める男と女が蠢いていた。 そんな光景を目の当たりにしていると、なんだか飲まずにはいられなかった。酔い潰れ理沙の家に転がり込むことも増えていった。 彼女の仕事が翌日ない場合は、昼近くにベッドから這い出て、二人で近所のスーパーまで買い物にいった。それがまるで普通のカップルのようだったので、彼はよく苦笑いをしていた。その態度にはどこか皮肉っぽいところがチラチラと見え隠れしていた。 「Oh shit!」 「Quoi?」 「何だ、その鶏の鳴き声みたいな言葉は」 「えー、だから、くそっとか言ったじゃん。だから、何?とかって意味だけど。What?みたいな。で、何?」 「肉が小さい、薄い、美味しくなさそう」 肉が並べてあるスーパーの陳列棚を見ながら、彼はいつものようにぶつくさ文句を並べる。 「うーん、小さいのも、薄いのも認めるけど、別に不味くはないし」 「えー?どうなのかな」 「違うよ。肉好きのフランス人が、美味い!という肉だってあるんだから」 「奴らは、また考えが違うから。どうせ、霜降りだろ?」 「それは、そうだけど」 「俺の食いたいのはそういう肉じゃない。赤身の目の詰まった分厚い肉だ」 「あー、うーん、、、そう」 言われても理沙は大抵相手にしていない。郷に入ったら郷に従えとでも言わんばかりだった。彼女自身、帰国してから色々あったせいで、どこか諦めムードだった。日本ではワインもコーヒーもパンも確かに違う味がする。それは海外で入手できる「日本米」と称するものが違う味がするのと一緒だった。日本とは水の種類も違うから、現地の水で炊いたらたまにより奇妙な味になる。 時間があれば、彼女は巨大なアメリカンマーケットやヨーロッパから出店してきているマーケットに彼を連れて行く。そういった場所には彼の好きそ...

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」58

 「一度、精神科医に診てもらった方が」 促されて剛ははっきり答える。 「俺には何もない。トラウマもない。第一日本語での鑑定なんて俺には必要ない。俺には特別引っかかるような記憶もない」 「どうしてそうはっきりと分かるのかな」 「もう、実は、診てもらったことがある。とっくの昔に。まだ、思春期の頃に。退行催眠も行った。何も、全く何も出てはこない。何かの、記憶の欠片でも出てくれば話は別だけど」 「そう。それじゃ、コーヒーの取り過ぎは?この間も言ったけど、問題があるとすぐに分量が増えるとか何とか、、」 「かもしれない」 「いつも言うけどカフェインは中毒性があるから」 「分かっている」 「滞在状況はどうなの?」 「大丈夫だが、ただ」 「ただ?」 「この事件は思っていたよりも根が深い。それに」 「それに?」 「いや、大したことじゃない。その、プライベートなことだから」 「女?あなたの身分を打ち明けた相手のこと?」 「まあ、そうだ」 「本気になった?」 「かもしれない。俺自身よくわからない」 「それは仕方ないわ。私もそうだったから」 「そうだな」 「彼女は日本国籍ね」 「ああ」 「どうするの?」 「まだ、決めてない」 「私は、アメリカに連れて帰ってきたけど」 「アメリカに、、、か」 「そうすればいいんじゃない?相手がよければ」 「そうだな」 「ま、あなたが、自分で決めることよ」 「まあな」 「私達だって人間だから」 「愛することもあるってわけか」 「当たり前のことよ」 その当たり前のことが剛には今までできなかったのかもしれない。そのことを同僚には言えなかったものの、問題の一部を同僚が理解していることに多少ほっとする。 「ありがとう、色々」 「ヌッセンバウムに言伝は?」 「いや、今日はない。メールした報告書を渡しておいてくれ。進展無し、さ」 「了解」 切れたツーツーという通信音がどこか二国間の距離を思い知らせていた。

FGO オーディールコール導入とペーパームーン

終わりました。特に難しいこともなく、なんとなくのんびりと。 クラススコアは少しずつ上げていってます。 ペーパームーンは出撃制限がかなりあるので手持ちのサーヴァントが 殆ど活躍できなかったのは残念です。  

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」57

理沙が警察に行かなかったのは多少調査の助けにはなった。これで問題の一つはなんとか解決することができた。しかしそれが剛の精神状態を改善させるのには全く役立たなかった。何かがヒタヒタと彼の魂に近づいてきていた。 その影から逃れるように彼は度々あまり人気のないひっそりとした古いバーで深酒をするようになる。いつも決まってボンベイをオーダーしていた。酔い潰れながら事件の真相に近づきつつあることをどこかで意識していた。 そして店から出ると繁華街の夜が待っていた。しかしそこは徐々に空洞になっていった。ある場所はリニューアルされ活況を取り戻したが、ある種の盛場は人気も無くなっていった。かってバーには銀行家がたくさん来たものだとある店の主人はこぼしていた。バブルが崩壊した後は彼等は殆ど寄り付かなくなった。住むところすらない人々が増え、毎年厳冬に耐えかねて息を引き取っても小さなニュースになるだけだった。煌びやかな表の裏の、崩れていく世界、これが日本の現実だった。階段を下りたところにあるバーのマスターもこう語った。 「平日はさっぱり人が来なくなりましてね、、。昔は良かったんですけどね。多くの人々が来てくれて、、。そんな時代も終わったんですかね。今は金曜日位でしょうか。まあ、土日は会社がお休みなので、夜は皆さんさっさとお帰りになって店には来ないんですよ。ホラ、宅飲みってんですか、それですよ」 目に見えない「真実」に近づくほどに剛の体調は何故だか悪くなっていき、アメリカの同僚の調査官にも指摘される。 「剛、あなたも何かあるんじゃないのかしら?この間からどうもやっぱり調子がおかしいようだわ」 「何故わかる?」 「眠れないようなことを言っていたし、通信文には大きな感情の乱れがあるからよ。文章が時々長くて冗長で歯切れが悪いわ」 そう言われて、この頃、髭を剃るのも億劫になってきているのが分かる。鏡を見ても眉間にしわが寄っている。今まで過去にこんなことは一度もなかった。いつもは、真実の匂いが清々しささえ 感じさせてくれた。 それが何故、今回に限って、、。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」56

 翌週の雨の晩に、公園のトイレの青白いランプの下で、赤ん坊の引きつるような鳴き声を耳にした途端に、剛は激しい嘔吐とめまいを感じ、身体を引き裂くような恐怖に襲われた。急いでその場を立ち去るが、何故そうなったのか理由は分からない。 「一体、何が起こったのか」 あるいは何が起こり始めているのか、分からなかった。日本に来てから、衣食住、肉体生活、全てにおいてアメリカとは違っている影響から、軽い身体的、精神的衰弱が時折感じられるようになり、それがやがて継続するようになっていた。その症状はなんだか徐々にひどくなっていくようだった。世界の端からバランスが崩れていくようだった。 調査はそして難航していた。 彼の体調が芳しくないことはアメリカの同僚にもやがて伝わっていった。 「I think you feel bad」 「Yeh, I can't sleep... 」 「コーヒーとか飲んでいる?」 「そうだな、結構」 「カフェイン中毒かもね」 「そんなもんなのか?」 「とりすぎは良くないかな」 「問題があるんだ、色々とね」 「調査の上での?」 「まあね」 「進んでいない?」 「ああ。もうそろそろまずい状況かもしれない」 「周囲にあなたの身分が露呈しそうとか」 「それも、心配している」 「滞在が長引いているから?」 「そうだ。それに、彼女に気づかれた」 「頭の良さそうな女性だから」 「最初はそうは思えなかったが、そういう部分を隠していたのかもしれない」 「どうするの?」 「実は、もう説明した」 「あなたが調査会社の人間だってこと!?」 「そうだ。仕方なかった」 「それでどうしたの?」 「彼女をとりあえず説得した。というか彼女は警察には行かなかった、最初から」 「そう、そうなの」 同僚は電話の向こうで考え込んでいるようだった。

お詫びです

このたび身体的な疲労にて本日の連載はお休みいたします。 お詫びいたします。よろしくお願い申し上げます。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」55

 理沙をリビングのソファに座らせると剛はキッチンから水割りを持ってくる。 「飲むと気分が落ち着くよ」 それを受け取り彼女は黙って口をつける。しばらく見ていた彼は彼女の手からグラスを受け取ると落ち着かせるように肩を撫でる。彼女を引きずり込むことになっていながら、何故か彼女に引きずられるような感じがする。彼女のどこに「俺を引っ張りこむ力があるのか」とだんだん彼は自制心が効かなくなってくる。彼女の中に存在するある種の波長との一致が原因で、彼自身を奥底から目覚めさせ、調査にも影響を及ぼしている。同時にそこから全てが崩れていくような感じがしていた。 そして、その夜、生まれて初めて剛はごくごく当たり前の想いが彼を動かしていることを感じた。生まれて初めて「愛している」と口にした。その言葉と彼女への接し方が何か深刻な色を帯びていたため、彼のその言葉を疑うことは難しかった。彼の愛の言葉には何かせっぱ詰まったものがあった。 その夜、多分、出会ってから初めて、二人は深く結びついた。二人の結びつきの中には、しかし理屈では説明できそうもない深い闇が横たわっていた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」54

 「あなたは、誰なの?」 震える声を理沙は喉から絞り出す。 「俺は調査会社の職員。いわゆる探偵とも少し違う。政府関係の仕事もあるからより深刻かもしれない」 「どうして?」 「思い当たらない?何か」 「さあ、私には」 「協力して欲しい、君には」 「私、私は」 「あの会社では浮いているみたいだし」 「、、、わかっていたんだ、、」 「だからというわけではない。これは個人的な頼みだ」 「個人的って?」 「俺個人の頼みだ」 「協力って何を」 「捜すのを手伝って欲しいだけだ」 「捜すって、、?」 「君の会社が隠しているもの」 「まさか、何かの作品とか」 剛は頷く。 「でも、私」 「何もしなくていい。ただ、俺の秘密を黙っていて欲しい。気づいたことを上司に話さなかったように、、。今はそれだけ頼みたい」 「でも、あなたがただ何かを捜しているだけだって、どうやって信じればいいの?」 「それも、そうだな」 「私、どうすれば」 彼が調査会社の人間だと考えると確かに辻褄が合う。どこが財源だか分からない大金。人気がないマンション。厳密なセキュリティ。家事をする人間さえいない。床にはいつも自動で動く掃除機。料理はほぼしている気配はない。だいたいこの資産家の男性が何故近づいてきたのかが彼女には全く理解出来なかった。確かに密偵だと考えると捜しているものが何らかの作品であれば、納得がいく。 「君はとにかく俺達のいわばテストに合格した」 「俺達って?テストって何のこと?」 「俺達、調査会社のことだけど、それと調査を依頼してきた人物。テストは、単に、君が未来を見られる人間かどうか。それとも真実を暗闇に隠蔽し続ける人間かどうか」 そこで剛は一旦話を止める。理沙の緊張がほぐれたのを感じた彼は、彼女を連れて事務室から出る。出る時はもちろん厳重に施錠した。

お詫びです

 今週は体調不良のため連載をお休みいたします。読者の皆様にはご迷惑をお掛け致しますが よろしくお願いいたします。

ろまんくらぶ「Thirteen 12ー再生ー」53

用心のため、彼女は自分の家に置き手紙をしてきた。自分に何かがあった場合、帰宅が長期に渡ってできなかった場合、管理人が読むことができるようにしてあった。剛が指定した時刻が夕方だったことが彼女に不安を起こさせた。 いつものように、彼の家へ呼ばれた時によくあるのだが、ピザとコーラやビールで軽く食事を済ませた。二人は映画を見たりしてよく過ごしていた。その晩もいつものようにアメリカ映画を見ていた。DVDの一本目が終わり、剛が飲み物をとりにキッチンへ行く。軽く一杯やってから洗面台へ彼が立った隙に、理沙は家の中をぐるりと見回す。そして彼女は家の奥にある、いつもはピッタリと閉じられている部屋の扉が、少し開いているのを目に留める。前にその扉のノブを回した時は、鍵がかかっていた。彼がまだ戻ってこないのを確かめると、彼女は恐る恐るそこへ忍び込む。そして大きなデスクの周辺を見回す。机の右側の書棚にある「店に関する報告書」と書かれた黒くて分厚いファイルに気づいた時、彼女の真後ろには彼が立っていた。 「気づいた?」 言いながら彼はその指を彼女の首筋に後ろから回す。いつの間にか背後に来ていた彼の声に彼女はびっくりして振り向く。 「君の分のファイルもあるよ」 「どうして、、」 怯えた声の彼女。 「別に君の私生活を記録しているわけじゃないんだ。事件に関係ないものは割愛してある」 理沙は剛のその言葉を信じてはいなかった。彼女の視線から彼女がもう彼を信じていはいないのが剛にはわかる。さらに彼女の身体の硬直からその恐怖が伝わってくる。 「君のことを調べているわけじゃない」 真顔でそう言う、彼の腕の中で彼女は震えている。それから少し身体を離すと、彼は彼女を静かに椅子に座らせる。抵抗しないのは、「俺の事がよほど怖いからなのだろうか」と思うと剛の態度は穏やかなものになる。そしてゆっくりと重々しい声で話し出す。 「協力して欲しいんだ」 「協力?」 「そう」 深い闇のような沈黙が二人を取り囲む。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」52

 剛という人物がどうも普通ではないことに気づいた理沙は、何かがおかしいと周囲に敏感になってきていた。彼女の疑惑は彼自身の一言で明白になった。それはいつものパーティーで何気なく彼が発した一言だった。 「どうせここは人種偏見があって、古くさいところがあるんだろう?」 「え?」 「いや、他の社員がこぼしてたよ、その」 まずった。失言だ。 「他の?」 って誰?人種偏見なんて言うわけないし。それ、私が研修で来ていたあの学生に説明したことかも。 「それっていつどこで聞いたのかな。誰がそんなことを」 「いや、この間のパーティーだったかな。えっと誰だったかちょっと覚えてないな」 そんなこと誰も言わないと思う、、。何故彼はそれを知っているのか、、。そう理沙が思い始めたある日、偶然にも潜入捜査のことを描いた海外のドラマをテレビで見てしまう。まさかと思いながら、今までの剛との会話や、あの学生と交わした会話を詳しく検討してみる。そう言えば、剛は店の台帳のこともどうやら知っている。何故、台帳のことを知っているのか。知っているのはあの学生だけのはず、、。 もしかして、、。 理沙は直感的に剛がどうやら何かを探っているらしいと気が付く。 そして彼はもしかして彼女に何か気づかれたのではないかと感じる。いよいよ時間がないことを彼ははっきりと意識した。その眼差しは冷静沈着な調査会社の職員のそれになっていた。 でも何を彼は探っているのか、、。こういう時、理沙は無駄に騒いだりする人間ではなかった。 その晩、剛から連絡があり、理沙は週末の土曜日に彼のマンションへ行くことを決心する。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」51

剛には、自身の中で眠っている何かを、それを覆い隠しているものをこじ開けて表出させる必要があったからだった。それが唯一、夫人の求める真実へと辿り着く道であり、彼自身の真実へと到達する道でもあった。 機会はやってきた。剛は瑠璃と食事をする約束をし、それよりかなり早めにオフィスにやってきた。瑠璃は不在で約束の時間まで戻らないと受付で言われた。受付の人物は何ら不審に思わず瑠璃の部屋まで剛を案内し、ソファに腰掛けて待つようにとお茶を出して退出した。部屋に入ると誰もおらず、彼は自由に金庫の中を見ることができた。該当する年に集中しながら丹念に資料を見たが「作品」の手がかりは全く出てこなかった。何も出てこないことがますます作品の出どころを怪しいものにした。 剛は、そして彼だけでなく夫人も徐々に焦燥感に包まれていった。「何も出てこないはずはない」「何かあるはずだ」と今まで以上に何かを掴もうと入手した情報の詳細に執着して調べ続けた。今までの調査資料に不眠不休で目を通し続けた。 もう、これ以上は待てなかった。滞在が長引くと剛の身分についても、ボロが出やすくなってくる。 そして、やっと、その週末に彼は「ある言葉」を従業員の口から聞くことができた。 「その、例のあの作品のことなんですが。ホラ、ずうっと昔に、その」 「あ、ああ。あれ?もしかして、あの」 「なんとかして、その、売ることはできませんかねえ、、。その、こう不景気だと、、。ひとつでも売れるものがあれば。あれはかなり古い感じの作品ですし」 「あれは、、、無理だわ。いくらなんでも。私達、生きていけなくなるかもしれないし」 言われて古くからいる従業員は舌打ちをした。そして彼女は続ける。 「偉いさんが、そういうことには関わるなと、知らぬ存ぜぬで通せと」 「じゃあ、隠したままで」 「そう。そうしてちょうだい。どうせ物がどこにあるかは周囲には分からないんだから」 それを聞いてから、剛は周防夫人と話していた人物を尾行し始める。その「作品」は例の作品の可能性がある。周防夫人は戦前からの古美術の流れにも詳しかった。 しかし、依然、その作品の場所はわからずに、無為の時間だけが流れ、剛が銀座のワインバーで夜を過ごしている間に、彼の足下に火がつき始めていた。

FGOのイベントが始まりました(^^)

 ついについにビースト実装です!!それになんとなく可愛いのがいいです! ユーザー待望の実装です。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」50

そうして娘が気を許し、目を離した隙に解錠された金庫の中を見るために、今度は娘が不在の時にオフィスを訪れればいいだけだった。それは簡単なことだった。足繁く通ううちに、娘が不在の時があることに気づき、その時間帯を狙って訪問し、彼女を待つふりをしながらオフィスで作業をすれば良かった。幸い受付係のいる席とオフィスは少し離れた場所にあった。間には応接室もあった。 金庫の問題がほぼ解決したと同時に理沙との関係はますますこじれていく。電話をしても繋がらないし、剛自身メッセージを残すもの気がひけた。今はこのまま放っておくしかないとはいえ、瑠璃とのキスシーンを見られたかもしれないのに、何で理沙は全く反応を示さないのだろうか。反応のなさが彼にとっては冷たさとして突き刺さってきていた。そして、 「彼女は俺に本当に気持ちがないのか」 という当たり前の感情が彼の中に起こり、それが起こったことに彼自身が戸惑っていた。今まで自身を冷たいと思っていた彼は、それ以上に「冷たい」と思われる、理沙の反応に驚いていた。彼女は表面は柔らかく優しげだが、内側には何処か違う何かを隠していた。 ただ、今はそんなことは言ってはいられない。それにかまってはいられなかった。 剛の恐怖や動揺はアメリカの同僚を通して夫人にすでに伝わっていた。夫人はそして、それでいいと考えていた。 事件の答えは彼の動揺の中に、動揺の奥底に眠っていた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」49

 もちろん瑠璃とてひとりの女なのだから、剛に全く興味がないわけでもなかったが、彼女の動物的な勘がその男が別に本気なのではないと告げていた。生まれながらに財宝に囲まれて育った娘の、男に関する嗅覚はその点では優れていた。相手が財産に興味があるのかないのかということも分かっていた。ただ、彼女は、自身の心のことは恐らくあまり分かってはいなかったのかもしれない。 彼女が作品の説明を終えて、化粧室へ行ったその一瞬の隙をついて、剛は金庫の場所を探した。そして娘が机の上に置いたこのオフィスの鍵束のの中から金庫の鍵を捜し出し、金庫を解錠して置いた。金庫にある古い台帳が目的だった。金庫は誰の関心も引いていないようで、少し錆び付いていて、鍵がなかなか入らなかった。これで別の機会にいつでも中身を見ることができる。 その晩、剛は理沙からの電話を待った。さすがに普通なら、何か言ってくるだろうと思った。でも夜中の二時を過ぎても彼女からの連絡はなかった。彼はさすがに痺れを切らして自分から電話を手に取る。 「もしもし、俺だけど、寝てた?」 「起きてたけど、もう、寝ようかと」 「さっきのことだけど」 言われて理沙は口を閉ざす。沈黙の中に彼女の痛みが見え隠れしていたが 「別に、どうでもいいって、言ったよね」 という言葉が、すぐに真実を覆い隠す。 「寝るから、じゃ」 そう告げると彼女は彼に一瞬の隙も与えずに電話を切る。切られた電話の通信音を聞きながら、剛には、彼女のその硬さが自分のことのように感じられて、言いようのない激しい痛みを覚える。その硬さは、まるで何かを遮断するかのように彼女の表面に時々姿を現す。 そしてそれは彼の中にもあったために、彼はそれを感じ取ることができた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」48

 そうしてその何かに動かされるように剛は瑠璃に接近していく。理沙はそれを見て見ぬふりをしているのか、それに対して一言も何も言わない。言い訳する気もなかったし、言い訳する余地もなかった彼は、理沙から連絡がないのを口実に、自分からも意図的に連絡しなかった。店に近づかなければ彼女と特別顔を会わせることもなかった。それに瑠璃は主に知人の経営する他の店のオフィスにいたから、彼はただそこへ足繁く通えばよかった。彼はそれに「演技」が上手だったから、瑠璃に信用されるようになるのに、そう時間はかからなかった。 彼女は彼女で自身の「女」を使って彼に高い商品を買わせようとしていた。二人の関係はまるで狐と狸の化かし合いだった。 雨がひとしきり降る週末、瑠璃のいるオフィスへ秘書からわざわざ使いを頼まれた理沙は、剛が娘に口づけしようとしているのを目撃する。理沙は見たことを二人に気づかれたくなくて、一度外へ出ると、今度はわざと大きな音を立ててドアから入ってくると「瑠璃さんいますかあ」と大声で娘を呼ぶ。理沙のその声にさすがに剛は彼女の顔を正面から見ることができず、背中を向けて作品を見ているふりをしなければならなかった。娘は書類を受け取ると目配せをして、理沙を追い払う。邪魔者だとわかると、理沙は何かを感じているのかいないのか、わからないような表情を一瞬浮かべる。それはまるで虐待の痛みのひどさに耐え続けて、いつかそれを感じなくなる子供のそれに似ていた。剛は、その、彼女のその一瞬の表情と、彼女の心の動きの、何ものも映し出さない瞳の空虚さと冷たさを見逃さなかった。 彼は、理沙の中にある、深い寒々とした淵と、どんなに手を尽くしても決して癒すことの出来そうにないひりつくような傷跡を感じた。それと同じものを彼自身の内側に感じた。感じると同時に理沙を強く抱きしめたい衝動が起こり、手が痙攣していた。 「失礼します」 感情を込めずに一言。理沙はその場を立ち去った。 瑠璃はせいせいしたというそぶりを見せ、また先程の作品の説明に戻る。剛はもう娘の体に触れる気もなかったし、娘は娘で彼を客としてしか見ていなかったため、先程の出来事はただのちょっとしたサービスにすぎなかった。後は作品が売れさえすれば今度のパーティーでまた彼女は花形になれるのだった。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」47

確かに瑠璃は真紅のイヴニングを身に纏っていて、華やかで非常に人目を引いていたため、多くの男達が芳醇な蜜に群がる蝶のごとく吸い寄せられていた。その中に剛が混ざっていたとしても何ら不思議ではなかった。そのため彼の演技はカモフラージュされ、ごくごく自然なものとして周囲には見えていた。 彼のその様子を理沙は見逃さなかった。彼女の視線を彼は背中で痛いほど感じていた。それでも「情報」を得るためには手段を選んではいられないと彼は演技を続け、ひたすら自分の本心を隠そうとする。その必死さが逆に瑠璃に気に入られようと躍起になっている男のそれとして、周囲の目には映った。 剛と瑠璃の僅かな接近にすでに嫌気が差していた理沙は深く傷つき、赤いワインの入ったグラスを持つ指先が微かに震えていた。震えていたがそれをひたすら押し隠して、押し殺して、パーティーが終わり客が帰ってしまうまでぎこちない笑顔を保っていた。 彼女は、剛が瑠璃と早く二人きりになりたがっているそぶりを敏感に感じ取り、まるで隠れるように身支度を整えると、彼が理沙を気にし始めた時にはもう会場にはいなかった。彼女がいなくなり、彼女に誤解されたことを感じると、彼は彼女に特別な感情を抱いていることをはっきりと意識し始める。意識し始めるが、こじれるのは分かっているが、それでも調査をやめることは出来ない。彼にはもちろん義務もあったが、何があっても調査をやめさせない何かが彼の中で蠢いていた。蠢くものは、彼の中で、知りたいという強烈な欲望に突き動かされると同時に、途轍もない恐怖と戦っていた。 彼には分からなかった。何故、恐怖なのか。 夫人の言葉を思い出す。 「あなたにしか出来ない。真実にたどり着くことが出来るのはあなただけ、、」 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」46

そうして様々な話の中には理沙に対して客とつきあっているのかという上司の小言が聞こえる。彼女はそれを否定するが、何かを感じ取っているのか、上司は相手の希望があれば、全て上に報告しろと命じている。 それを小耳にはさんだ剛はもうぐずぐずしてはいられないと感じる。理沙にもいずれ、色々と知られてしまうと思うと、アメリカの夫人に頼んで研修目的で店に張り付く人物を寄越してもらう。日本語が片言の学生を装った人物で、実際は日本語が完璧だった。できないふりを演じながら店の資料を研修目的で見せてもらう。短い時間で事務所の資料を調査する。剛とは電話やメールでの連絡はせず、美術商や外での面会も無し。宅配業者をその人物が装い、特別な場合を除き、週1〜2回、文書で経過を連絡。アジア人とのハーフで元々は薄いブラウンの髪に緑色の瞳だが、帽子、カラーコンタクト、ウィッグで変装して報告書を剛の家のポストへ直接届ける。 彼、モディアノは研修の一環として印刷された顧客台帳をもとに、パーティーの招待客への招待状を送る作業を手伝いながら、顧客の名前を頭に入れる。管理業務を習得するため、管理台帳の記録方法を学習する。必要なのは古い台帳だったから、現在の台帳はあまり見せられないと言われた事が幸いした。 モディアノから送られてきた台帳のコピーを剛は念入りに調べたが、問題の作品らしきものは見当たらない。加えてコピーには1960年代から1970年代に購入、販売したものしかないことに気付く。店が戦前からあったことを考えれば、それは奇妙なことだったが、疑問はすぐに解決された。よくよく見るといくつかの作品の移動年月日の前に1950等の年の記録がある。つまりこの台帳よりもさらに古いものがあるようだった。そう思ううちに剛はふと耳にした従業員同士のある会話を思い出す。 「ねえ、この作品の資料はどこにある?」 「ああ。それは古いから倉庫にあるよ。確か一番古い台帳と一緒だったかと」 「一番古い台帳って?」 「ああ、確か、、、えーっと」 そこで古参の社員が口を挟む。 「その台帳は金庫に入っているはずだよ、鍵付きの」 「じゃあ、鍵は社長が?」 「それと、、、確かお嬢さんも持っていたかと」 「じゃ、お嬢様に借りればいいのかな?」 「多分」 そうか、その、一番古い台帳、、。 会話を思い出した剛は瑠璃にもっと近づく決心をする。理沙の手前、、、何か...

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」45

興味の方向が調査からずれたことに剛は焦りを感じつつも分析を続ける。理沙の周辺からは重要な情報は全く拾うことができない。つまり彼女は「あの」事件とは無関係なのだ。それはもちろん彼女の入社年月日からも容易にうかがう事ができるし、会社での彼女の位置からすると、周防家の秘密を知るような立場にはいない。日常の彼女の仕事内容は翻訳等が主なもので、売買には殆ど関わっていはいないようだ。そんなわけで彼女の周辺からは彼女のプライベートなことしか分からない。 例えば剛の家に来た時、テレビで巨大クラゲを見ていたりして「ゲローイ」とかそういう言い方をしている。あるいは大抵は漫才やコントを見ていたり、流行りの貧乏番組を見ていたりしてゲラゲラ笑っていたりする。彼女は一見ちょっとばかっぽい女なのだった。そんな彼女の一番のお気に入りは、あのミスタービーンらしかった。 それでも時々彼女が同僚や会社を非難することがある。彼女が特にイライライしていたのは、ある部分アメリカを模倣してドライなビジネスを展開しながら、その一方で古くからある湿った日本的な仕事の運び方から抜け出すことができないことだった。グローバル化を目指しながらもそれとは全く反対の人間達で、海外の作家の作品を扱いながらも外国人の対応からは逃げ回っていることだった。 従業員は寝ずに働いている者もいるが、周防家の連中は年がら年中バカンスに出かけている。彼等の浪費は留まるところを知らず、社長は身だしなみとヘルシーになることだけに精進している。 その間、会社は不況の波の中で溺れそうになっている。 調査は相変わらず、何の手がかりも得られず、千々として進まなかったが、観察を続けていくうちに、二、三人の古い営業マンがある意味で組織を動かしていることに剛は気付く。その中には社長に対して指図する者がいた。その人物は他の多くの従業員がいないところで、そういう態度をとっているらしかった。それをはっきりとわかっているのは、社長一族と立ち聞きしていた剛くらいなものだった。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」44

 「どうして、そうやって逃げる?」 問い詰められて、理沙は一瞬、剛を見つめる。 「あなたは、嘘で塗り固められた世界に生きているような気がする、、。何となくそう思う。あるところ以上には近づいて欲しくないでしょう?」 言いにくいことを彼女ははっきりと告げる。 「どうして、そんな事がわかる?」 言い返す彼の声のトーンが少し上がる。 「勘、、、かな」 彼女は冷静に答える。 「それだけなのか?」 「あと、、、心理学にはちょっと詳しい」 「分析には慣れてるってわけか」 「まあね」 「俺が嘘をついているって、でも、断定できるのか?」 「さあ、、、まあ、決めつけるのも、ね」 「じゃあ、興味があるってわけ?」 言われて、理沙は瑠璃のことを思い出し、話をはぐらかす。 「うーんと、どうでもいいかな。興味ない。本当のことなんて」 「どうでもいい、ね」 彼は苦笑する。 「相手の見えない心を見ようとしてもどうしようもない、、」 理沙は呪文のように呟く。その言葉は何か重要な意味を持っているかのような響きがある。女から「どうでもいい」などと言われたことのないある意味での自信家の彼は、彼の中に眠っている、何かを覆い隠すようにしているもの、そこをこじ開けようとする彼女の言葉にかすかに動揺する。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」43

話を聞いた社員がいずれ何か企むに違いなかった。それなりに評判がいいにもかかわらず、滅多に人物を元にした造形は行わない亜由美の、そのめがねにかなったとあれば、価値が上がるだろうことは予測された。だから彼女に作品を作らせて、野上剛に購入させるという腹づもりになる。 亜由美がその場を離れる時、しかし、彼女は野上剛が彼女を見ているのに気付いた。その視線を避けるように彼女は足早にその場を立ち去る。何かを感じ取ったのか、剛はその男へゆっくりと近づいて行く。 「野上様、いつもおいでいただいてありがとうございます」 「こんばんは。盛況ですね」 「ええ。今、ちょうどあなたのお話をしていたところですよ」 「私の?」 剛の目が鋭く光る。 「ええ、あちらの先生ですが」 男はすでに店の戸口に手を掛けている女性の背中を指差す。体調が思わしくないのを口実に彼女は逃げるように去って行く。 「彼女、山野先生が、あなたをモデルになさりたいとおっしゃってまして」 「私を?」 「ええ、非常に珍しいことなのですが、気に入られたようで」 「それは、また、どうしてですか?」 「さあ、私も、そこまではお聞きできなくて。でも、いい機会ですから、ぜひ」 社員はそこでセールストークに入り、剛にしきりとモデルになることを勧める。剛はそんなことには全く興味がなかったので、適当に相槌をうちながら、その時は話を上の空で聞いていた。 一方、剛が瑠璃に近づく様子を店で見せてから、理沙と彼の関係は表面上は何の変化もなかったが、その裏でお互いに相手に対する苛立ちが募っていった。彼女からよくよく見ると彼はいつも何かから逃げているような気がしてきていた。だからそういう相手とはもしかして多少距離を保つ事がいいように彼女には思われた。 そんな彼女の距離の取り方に彼はイライラしてきた。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」42

 たとえ商売上の理由からであっても、幸い相手もまんざらではなさそうである。理沙がその場にいても、彼女にも他に男がいるかもしれないと勘違いしている剛は、それを言い訳にしながら彼女に対して後ろめたさを感じずにいられた。剛が資産家であると思い込んでいる理沙は、所詮縁の無い人間かも知れないと、瑠璃と剛の接近に、どこかで冷めた目を向けていた。ただ、自分の目の前でそれをやられると流石に腹が立ってきた。理沙は二人を見ないようにとなるべく背を向けていた。 そんな剛と瑠璃から少し離れた場所で、なんとなく欧米の色に染まった年配の女性が社員と話していた。 「これはこれは亜由美先生、お加減はいかがですか?先週はおいでいただけなかったので」 「ちょっと体の調子がすぐれなかったの」 「そうお聞きしています」 「それはそうと、あそこにいる、、、あの、瑠璃さんの隣の方は?」 「先生は、お目が利きますねえ、、」 「いえ、瑠璃さんがあんなに親しそうなので、また、新しい恋人かと」 「いえいえ、、、彼は、ブレイク氏の紹介で、出入りするようになったんですよ、、。野上さんといって」 「野上、、?」 亜由美の顔は緊張した面持ちになった。 「えっと、あの、どうかされましたか?」 亜由美の表情は相手にそれとわかるほど強張っている。急に、過去の、惨めで陰惨な生活の現実と秘密が重くのしかかってくる。 「、、、先生?先生、、」 「あ、ええ、すみません。ちょっと、気分が」 「まだ、本調子じゃないのでしょう、、、あちらでお休みになられますか?」 「ええ、、」 亜由美の視線は剛に釘付けになっているので、それに気付いた社員は付け加える。 「あの、よろしかったらご紹介しましょうか?瑠璃さんもいることですし」 「いえ、今はやめとくわ。ちょっと、作品のインスピレーションモデルにでもと考えたの」 「ああ、人物を元にした造形ですか?これは、これは、おめずらしい。先生のおめがねにかなったんですね?彼は」 「まだ、そこまでは、、、でも、今日はいいわ。疲れてるから」 亜由美は慌ててはぐらかす。 「かしこまりました」 モデルのことを話してから、亜由美はしまった、と思った。まさか、自分の事が、相手にバレるのではないかと思うと、早々にその場を離れる。

FGOナウイ・ミクトランが終わって今はイベントのヨハンナさんで遊んでいます

ヨハンナさんがまた純真で綺麗なのでキャラとして気に入っています。 ちょっとお茶目なところもいいかなと思います。 イベントの聖杯をいただき、お話は完了いたしました。 皆様も楽しまれていると思います。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」41

 変化の種は、もうずっと以前から剛の中に確かにあったものだったのかもしれない。変化の予兆は彼が日本に入国して、あのでこぼこのビルの音響を聞き、この国が自分の生まれた場所だと意識した時すでにあった。 理沙に身分の大嘘をついているのを棚に上げ、彼女が他に親しい男性がいると、まるで調査とは関係ないことに剛は気を取られ始める。彼女を乱すように抱きながら、熱が収まると我に返り、なんとなく気分を害している様子の彼女の髪を撫で続ける。そうしながら、何を俺は考えているのかと自分を責め始める。 そんな彼の様子がアメリカにいる夫人への通信文に微かに表れ、理沙に対する剛の気持ちの奇妙さに、彼よりも夫人が先に気づく。 一方の理沙から見ると、セックスをスポーツと言い切って肉体をメカニズムとして操作しようとする表向きのドライさとは別に、剛は何か得体のしれない影を隠していた。その影は炎天下の光の中で、目が眩んで影ひとつないように思われる真っ白い石の下に確かに張り付いている。その影に、最初に彼女は剛と会ったばかりの時には気付かなかった。ただ日が経つにつれて、違和感ははっきりしてくる。剛本人は無意識の内に、見せまいとしているかのように理沙には感じられた。 その週末も店ではパーティーが開かれていた。剛はもっと深く潜入するために、周防家令嬢の瑠璃に意図的に近づくことにした。

FGO ナウイ・ミクトラン後編 公開されて時間が経ちましたので戦略を公開

 挑まれた殆どのマスターはすでに完遂していると思いますので、ここに多少戦略を書いておきます。 キングプロテア戦は前回書いた通りです。ククルカンがプロテアを抑制してくれるため、ククルカンにスターを与え続けて攻撃を繰り返しました。 オルト総力戦は、要するにサーヴァント1騎から3騎で編成して主力とサポートを混在させ、概念礼装はカレイドスコープをつけました。1ターン目のオルトの攻撃によりNPゲージが満タンになるため、2ターン目で宝具を放ってオルトのHPを削るということを繰り返しました。 最終戦、テスカトリポカデビッド戦では、前衛2騎はバーサーカー、クリームヒルトにカレイドスコープをつけ、同じくバーサーカー、ヴラド3世には黒聖杯をつけ、両者とも相手チャージを減少させるスキルがあるため、それを使い、後陣3騎はアヴェンジャー、ジャンヌ、信長、スペースイシュタルで応戦しました。ジャンヌにはカレイドスコープをつけましたが、信長とスペースイシュタルには礼装はつけませんでした。前衛がやられて、後陣が出揃ったところで一旦相手の攻撃に晒され、NPゲージが満タンになったところで宝具3連発で戦闘終了です。 ということでナウイ・ミクトランは終わりました。でも、最後にソロモン・ロマニが出てきた時はなんかビビりました。これからも戦いは続く、のでしょうか、、。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」40

パーティー会場で集められた名刺の類は社長や重役クラスのものは全て量りにかけられる。会社の 優秀な人物がその名刺に記載されている情報を丁寧に調べていく。資産あると判ればその後はプライベートな場所に招待し、豪華な料理と高級な酒で対象の舌と腹を幻惑する。それでも効果がなければ、甘ったるい南国の花のような娘を出向かせ、社長自らも強い香水で相手を引き寄せる。剛もそれを仕掛けられた。そして彼らの罠にかかる羊を演じるため、アメリカにいる夫人の好みの作品を一億円で入手する。この一億の有効期限は長くて一年だろうかと、剛は思う。周防家は相手がステーキだとわかるとすぐにくらいついてくる。標的になった人物は自身が「選ばれた」と勘違いする。「選ばれた」のは彼らの金なのだ。そして周防の人々は対象となった人物の「資産」に嫉妬する。 人間は平凡な言い方で言えば「嫉妬する生き物」である。男の嫉妬、女の嫉妬、それよりも強い生物としての嫉妬。生存がかかっているだけに、それは強烈なものである。「理」の存在が希薄な人間は、それをあからさまに表現し行動に移す。抑えようとしてもそのような人間には、それを抑えることが不可能である。それは意識とは関係ない、闇からの力で、そのような人間は力の出現に意識を持っていかれる。そして操られる。闇の力の存在が主体となる。 理沙にはどうやら他に親しい男性がいると分かった時、剛の内側に発生したのは「男」としての嫉妬ではなかった。「それ」を意識できなかった瞬間、彼の中で何かが変化を始めた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」39

 そんな風に理沙に入れ込み始めていた剛の日常には、かと言ってたいした変化は起こらなかった。作品の片鱗でも拾えればと思っていはいたものの、どうやらそれは甘かったようだ。会社の人間、社長とその娘、重役達の日常業務の会話からは何も得ることが出来ない。状況に対し分析に分析を重ねても今のところ何も耳に入れることは出来ない。 それよりも会社の性質とか、やり方、組織の情報が手に入ってくる。会社は労務的な部分で大きな問題があり、内部に優秀な人材を抱えていて、労働のことで苦情があってもその人物が適当に手を回して、問題を処理している。残業代は全くつかず、サービス残業が普通だ。仕事の自宅への持ち帰りも当たり前で、夜中まで仕事をするのが通例だ。 社長とその娘は社員を殆ど奴隷として扱う。彼らは「身内と敵と召使」という戦前からある古くさい経営理念に支配されている。伝統という堅い城壁に守られていて、内部が崩壊していくことには気づかない。 そんな中、従業員は会社を去っていく。剛が通うようになってから、すでに四人がいなくなった。不況の影響で給料の減給は当たり前だった。そんな会社に留まろうとする理沙に、剛は苛立ちを覚えていた。倒産の二文字が社長や役員の頭の中にちらついているのか、彼らの商売は時に乱暴だった。

FGOナウイ・ミクトラン後編 攻略のヒントだけ 若干のネタバレあり

 本日昼頃後編終了いたしました。戦闘に臨まれたマスターの皆様お疲れ様でした。 現在挑んでいる方々も多いと思うので、ここではヒントだけ載せようと思います。 若干のネタバレになる可能性もあるのでご注意下さいませ。 物語は悲喜こもごもで、楽しくもあり、悲しくもあり、うるうるとなることも。 戦闘の大きな山場は三つでしょうか。 ククルカンの出てくるキングプロテア戦、ORT総力戦、最終戦かなと思いました。 まずキングプロテア戦ですが、ククルカンが助けてくれるので、大丈夫です。 ククルカンにスターを提供し続けてスキルを発動させれば、プロテアの増殖を防いで切り抜けることができます。 スターを獲得できる概念礼装の役割はとても大きいです。 次にORT総力戦。 ここはフレンドさんのサポートも使えないので、なかなか大変な戦いでした。 ヒントはサーヴァント同士の相性とやはり概念礼装。概念礼装はプレイヤーの皆様がご存じのNPがチャージされるアレです。 サーヴァントが星5であるか4であるか3であるかよりも、レベル上げがどの程度できているのかが鍵になりました。 あとは宝具をすぐ打てるようにしておくことが大切だと感じました。 手持ちのサーヴァントを6人ずつ召喚するのではなく、3人ずつ組ませて戦いました。 ORTの攻撃が強烈なため、手持ちのサーヴァントの減少をなるべく防ぐためと、宝具3連発でORTのゲージを削るためです。 最終戦は概念礼装よりもサーヴァントの性質や相性かなと思いました。 アタッカーと守備のバランス、それから、アタッカーのスキルに相手のチャージを削るものがあるのかどうかが鍵かなと思いました。 以上短いですが、ここまでにしておこうと思います。 今回はサーヴァントのレベルと相性、それに概念礼装の種類が重要と感じたクエストでした。 引き続きFGOユーザーとして今後のストーリーにとても期待しています。 クエストの最後に今後の展開を期待させる物語が出てきます。。。ドキドキドキ。 (^^) 余談ですが「藤丸立香はわからない」とても面白いです!!!

FGOナウイ・ミクトラン後編開始

 1月31日に「ナウイ・ミクトラン」の後編が開始となりました。FGOユーザー待望のクエストです。 すでに終わった凄腕さん達もいますが、私はゆっくりぼちぼちと進めています。 周回は日課なのでアイテム集めに欠かさず行っています。 ネタバレになるといけないので、ちょこっとだけ感想を。 後編はなんとなくテクニカルな印象を受けています。 サーヴァントや礼装の火力だけではどうにもならない難しいクエストもあります。 恐竜が出てくるのでストーリーが楽しいです(^^)

ろまんくらぶ「仮面の天使」引き継ぎ再開の予定

ウェブリブログは終了いたしました。そのため現在「仮面の天使」は休止していますが、近々こちらで再開の予定です。 皆様、引き続きよろしくお願い申し上げます。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」38

 液体の中をゆっくりと滑るように動く大きな氷の塊を見つめながら、剛の心の中に理沙との関係が染み出してくる。彼女の中の何かが、彼の中で朧げだったものを、徐々に意識の表へ引き摺り出してくる。何かそれは目の詰まったビーズ細工のビーズがひとつ、またひとつと深すぎる闇の中から現れては、嵌め込まれていくようだった。嵌め込まれた粒は鮮明に輝き、その硬さが皮膚に埋め込まれるような痛みを与えていた。そしてその目の詰まったビーズ細工の全容はあまりにも大きく、彼は自分の中で何が起こっているのか、あるいは出現しつつあるイメージが何であるのか、それを掴むことが全くできない。そして、彼女から触発されて形作られていくイメージの影は、剛にいい知れない恐怖を感じさせる。それを避けようとして理沙との関係を欲望の方へ押しやろうとする。 「セックスは食事と同じ。習慣的なものだ。生活に必要なものだ」 「そんなこと」 彼のあまりにストレートで、時に毒々しくもある態度に彼女は面食らう。 「性欲なんて大したものじゃない。人間は動物だ」 「なんか生々しい」 「本当のことさ」 時には高圧さを感じさせる彼の強引さに押し切られ続けるうちに、彼女の中にある、見えないが、何時からかはっきりと意識されている、薄いが決して破られることのなかった殻が、所々相手の何かと癒着していった。癒着しながらその箇所が、徐々にふやけて溶け出す感じがしていた。 一方の剛はその箇所が自分の中で何かとピッタリと溶け合うたびに、彼女の中にある他人とのある種の距離をはっきりと意識するようになる。彼女はそして何故か、その距離を積極的に縮めようとはしない。その距離の取り方が彼を刺激し、疑問を起こさせ、次第に当初とは別の方向へと引っ張り始めた。彼女の謎を解き明かそうと、つい本来の任務から逸脱する。

FGOユーザー必読の書「オカルティズム」ー非理性のヨーロッパー大野英士先生著作

 FGOをプレイしていて魔術やオカルトにより詳しくなりたいユーザーにおすすめ。 大野英士博士の傑出した著作「オカルティズム」ー非理性のヨーロッパー。異世界に関心が高い方々にもぜひ読んでもらいたい書籍です。内容は簡単ではないのですがとても面白くて、魔術やオカルトに関して全体的に網羅していて、知識を深めたい時にとても有益な書籍です。 出版は講談社の選書メチエからで1900円プラス税の価格です。ちなみに電子版も販売しています。大野先生の書籍には詳しい注もついているので、そこからさらなる知識を得ることができます。 あの、高名な占星術師、魔術師である鏡リュウジ先生も推奨する書籍です。ぜひぜひお読みくださいませ。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」37

 口をもぐもぐと動かしながら理沙は何気なく質問する。 「朝とか、何を食べてるの?」 「目玉焼きとトースト」 本当の生活圏の部屋には大きなオーブントースターと電気調理器やコーヒーメーカーがあるから、それで簡単なものは大体できるとは言わない。 「そんだけ?家で料理はしないじゃなかったっけ」 彼女のその問いに、心の中でしまったと思う。相手の顔がまた変だなあという表情に変わる。彼女のこういうところは注意しないと色々と厄介なことになりそうだった。 「まあね」 「変なの。まるでお金のない人の普通の朝食」 「そういうわけでもないよ」 「え〜?なんだか変だよ。もっと食べたら?カフェで食べてるの?誰か人雇って作ってもらったら。お金持ちなら普通はそうしてる。うちの社長もそうしてる。よくケータリングとかも頼んでるみたいだし」 「いや、、、めんどくさいんだ。そういうの」 余計な他人を家には入れられないとはまさか話せない。 「ええー?あんな立派なキッチンと冷蔵庫があるのに?」 「めんどくさい。殆ど家では食べないから」 「仕事のせい?」 「それも、、、ある」 「まあ、疲れそうだし、その、仕事」 「君はどうしてるの?」 「うーん、、、サラダ、トースト、バター、ジャム、チーズ、ベーコン、スクランブルエッグ、カフェオレ、ヨーグルト」 「朝から、すごいね」 「時々サボるけど、仕事忙しいから、ね」 それから結局、その晩は理沙は剛の家へ泊まる羽目になり、朝を迎えた。 彼女が帰った翌日の夕方、ぶらりと家を出た時に、剛は偶然にもひっそりとしたバーを近くに見つける。客が少なく、バーテンが二人で静かに仕事をしていた。薄暗く、しかし磨かれた床が、どこかヨーロッパ風でありながら、日本風の空気も作り出していた。カウンターの奥に座り、ボンベイの水割りを口にする。青白い瓶から透明な液体が、大きな氷の塊を抱き込むようにグラスに満たされる。 一体、何時頃から、何故この酒を飲むようになったのか、それを思い出すことができない。アメリカでごく若い時にそれを頼むようになって、彼はバーテンダーに時折、なんでボンベイなんだという顔をされたのを覚えているばかりだった。

FGOのマーリンが悪いわけではないけど

文春で報道された内容が事実なら非常に残念です。 マーリンは好きなキャラクターなのでがっかり。  ここでは深くは触れませんが内容は皆様ご存知のことと思います。 この先どうするのかなあって。 リアルインキュバスは推奨出来ないかな。 告発した女性の立場を考えると非常に悲しく思います。 彼女の心の傷はなかなか癒ることはないと思います。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」36

 二人は剛のトヨタで出かける。新宿のイタリア料理店でワインを飲みながら、まるでごく普通の仲の良い恋人同士のようにおしゃべりをする。 「イタリアワイン、どうかな。同じ値段ならチリワインとかもあるかな」 「そんなこと言って。いいイタリアワイン飲んだことないだろう?」 「まあね」 「いいのはとびきり美味い」 「いいなあ」 「いいなあって、フランス帰りのくせに」 「学生だったからそんな余裕なかったもんね。サンセール、サンテミリオン、プイイフュッセとかかな」 「いいの飲んでるじゃないか」 「そう?」 「まあまあだよ」 「へえ、詳しいんだ」 「趣味だからね」 こんな調子で会話をしていると、理沙にはそれも奇妙に感じられる。相手がまるで普段イタリアのスーツを身につけているようなクラスの人間とも思えなくなってくる。部屋の様子、店に来る時の様子、それに今の目の前のこの、まるでごく普通の青年のような様子には、なんだかちぐはぐな違いがあるようだった。まるでうまくはまらないジグソーパズル。ピースを組み合わせても何も見えてこないどころか、相手が霧の中に沈んでいくようだった。 「この店はピザが美味しいよ。生地がサクッとしていて」 彼女の不思議そうな視線をかわすかのように彼は少し声を大きくする。 「そうだね。おっきいのを頼む?」 「もちろん。一番でかいのを数枚」 「は?」 「数枚だよ。俺は一枚じゃ足りないから」 「あ、そっか、あなたでかいから」 「そうだよ。それに」 俺は特種な仕事をしているから体力がいるんだ、と思わず付け加えそうになり、言葉を飲み込んだ。 「それに?」 「いや、まあ、仕事がハードだから」 「そんなに?偉いさんなのに?」 「まあね。アメリカでは偉いと仕事が多いんだよ、日本と違って」 「あ、そっか。日本は逆だからね。上の人達サボってばかりだから」 「奇妙だよ、まったく。サボった方が勝ち組なのか?」 だからアメリカにもヨーロッパにもなかなか勝ることは出来にくいのだ。思想にも信条にもパースペクティブが存在しづらい。国をどうしたいのかビジョンが持ちづらいし、方向性も見えづらい。見えないから行き当たりばったりになりがちなのか。そんなものなのかもしれないと剛は感じる。

FGOのナウイ・ミクトラン

 後編が公開まじかです。さらに今年の夏には「 Fate strenge fake」が公開予定となっていて、今から楽しみです。アニメはあの「デュラララ!!!」製作者とのコラボもあるらしく仕上がりが今からとても楽しみです! 今はイベもなく、アニメを観ながらレベル上げの毎日です。(^^)

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」35

 家に誘われたその日、部屋をひととおり見たその後、ピカピカで空っぽの冷蔵庫を開けながら、理沙はがっかりしたようにふてくされる。 「で?今日は何があるの?お腹空いた」 「えーっと」 「だって呼んだんでしょ?来て欲しいって」 扉を閉めながら彼女は呆れ顔で振り向く。 「あ、まあ」 「何もないの?」 彼女は両手をぶらぶらさせながら剛を睨む。 「外で食べようかと」 「つまんないよー。何か作ってよ。ね」 どうやら彼女は彼の見かけ上の身分も空腹から忘れてしまったようで、駄々っ子のようにぶうぶう言い始める。 「無理だよ、俺」 「え?料理できないの?」 「多少はできるけど、、」 「何ができる?」 「カレーとか、ハンバーグとか、サラダとか、あとソテーしたりとか」 彼にはそれなりにレパートリーがあるので彼女は笑顔になる。 「結構できるじゃん。で、今日は?」 「実は予約しておいたから」 「なーんだ」 そういう彼女の反応に多少変わった相手だと彼は困惑する。大抵は高いフランス料理店へ連れていけと言われることが多かったためだ。 「いいでしょ?イタリア料理」 「まあ、美味しいなら。で、場所は?」 「新宿」 「あ、もしかして」 「知ってるのかな?」 「ピザの美味しいとこ」 どうやら彼女の機嫌は直りそうだった。 「入り口でイタリア語で挨拶する店員のいるところかな」 「まあね」 彼女の表情はそこであからさまに明るくなる。 「あそこよく行くの?」 「たまにね」 「じゃ、行こう!で、帰りにちょっと買い物もしようよ。冷蔵庫一杯にしないと」 「わかったよ」 答えながら場合によっては食材が無駄になるかも知れないと彼は想像する。 「じゃ、出かけよう」 店がわかると彼女はいそいそと支度を始める。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」34

「変だなあ。この家」 「どこが?」 「まるで人が生活しているように思えない。物があるんだかないんだかよくわからないけど、なんだか」 「なんだか?」 「まるで、ここで、どちらかというと仕事しているみたいな」 「ハズレ。俺はここで暮らしているよ」 「そう?でも、、」 「ただ、殆ど食事は作らないから」 「みたいだね。だって、キッチン、ピカピカだし、道具もないし」 理沙が剛から見せられたマンションの各部はまるでショールームのように磨かれ、食器棚も使ったことがないかのようにきっちりと整えられていた。大理石の洗面所もバスも、水垢、湯垢がまるでついていない。カーペットもシミ一つない。ベッドのシーツもまるでホテルのそれのように体一つがやっと入るかのようにきっちりとセットされている。部屋の片付けが結構適当な彼女はそれらを見ていると、相手が異様な清潔好きで、自分とは余計関係ない世界の人間のように見えた。だから相手と関係を持つ時に、さらに躊躇した。なんだか特別な趣味でもあるのではないかと抵抗を感じていた。 それらの部屋の影に、マンションの奥まったところに、彼の本当の生活圏が隠れていた。床にはビール瓶とピザ、ポテトの紙箱などが散らばっていた。もちろん別のバスルームがあり、そこでいつもシャワーを浴び、身繕いをしていた。