ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」36

 二人は剛のトヨタで出かける。新宿のイタリア料理店でワインを飲みながら、まるでごく普通の仲の良い恋人同士のようにおしゃべりをする。

「イタリアワイン、どうかな。同じ値段ならチリワインとかもあるかな」

「そんなこと言って。いいイタリアワイン飲んだことないだろう?」

「まあね」

「いいのはとびきり美味い」

「いいなあ」

「いいなあって、フランス帰りのくせに」

「学生だったからそんな余裕なかったもんね。サンセール、サンテミリオン、プイイフュッセとかかな」

「いいの飲んでるじゃないか」

「そう?」

「まあまあだよ」

「へえ、詳しいんだ」

「趣味だからね」

こんな調子で会話をしていると、理沙にはそれも奇妙に感じられる。相手がまるで普段イタリアのスーツを身につけているようなクラスの人間とも思えなくなってくる。部屋の様子、店に来る時の様子、それに今の目の前のこの、まるでごく普通の青年のような様子には、なんだかちぐはぐな違いがあるようだった。まるでうまくはまらないジグソーパズル。ピースを組み合わせても何も見えてこないどころか、相手が霧の中に沈んでいくようだった。

「この店はピザが美味しいよ。生地がサクッとしていて」

彼女の不思議そうな視線をかわすかのように彼は少し声を大きくする。

「そうだね。おっきいのを頼む?」

「もちろん。一番でかいのを数枚」

「は?」

「数枚だよ。俺は一枚じゃ足りないから」

「あ、そっか、あなたでかいから」

「そうだよ。それに」

俺は特種な仕事をしているから体力がいるんだ、と思わず付け加えそうになり、言葉を飲み込んだ。

「それに?」

「いや、まあ、仕事がハードだから」

「そんなに?偉いさんなのに?」

「まあね。アメリカでは偉いと仕事が多いんだよ、日本と違って」

「あ、そっか。日本は逆だからね。上の人達サボってばかりだから」

「奇妙だよ、まったく。サボった方が勝ち組なのか?」

だからアメリカにもヨーロッパにもなかなか勝ることは出来にくいのだ。思想にも信条にもパースペクティブが存在しづらい。国をどうしたいのかビジョンが持ちづらいし、方向性も見えづらい。見えないから行き当たりばったりになりがちなのか。そんなものなのかもしれないと剛は感じる。

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