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ろまんくらぶ「仮面の天使」98

マンションは冷え切っていたので健は暖房のスイッチを入れる。コートを脱ぎ、居間の灯りを点ける。今夜は寝室で眠れる気がしない。茉莉が帰ってくるまで、不安と心配でどうにもならないだろう。居間の床に客用の布団を敷くと、テーブルを端に片付け、テレビが見えるようにする。少しぼんやりと布団の上に座っていたが、気を取り直し、シャワーを浴びにバスルームへ向かう。薄いブルーのタオルとブルーのパジャマを準備するとバスルームへ入る。 「どうしたらいいんだろう」 シャンプーを泡立てながら、ついつい手が留守になる。ボディーソープをスポンジで泡立て、強めのシャワーを浴びれば気分がさっぱりするのではないか という期待は裏切られる。不安と苛立ちが神経をピリピリとさせる。キュッと蛇口を閉め、大きなため息を吐くと彼はバスルームを出る。タオルで体を素早く拭き、トランクスをはき、パジャマを身につけると台所へ向かう。 神経を緩ませようとナイトキャップを準備してトレイに乗せ、居間へ運ぶ。どうも眠れる気はしないけれど、少しでも休まないと体にひびいてくる。 部屋の灯りを落とし、彼は独りテレビの前で寝酒を口にする。目の前に流れる画像をただぼんやりと眺めていた。

ろまんくらぶ「仮面の天使」97

台所にずっと座っているのもだるくなってきたため、健は居間のソファに横になる。うとうとしているうちに、いつの間にか眠ってしまう。青い天使が彼を見守るように頬杖をついている。 「あっ」 何だか奇妙な夢を見て、健は目を覚ます。時計を見るともう11時をとっくに過ぎている。恐る恐るスマートフォンの画面を見るが連絡さえ入っていない。 「ほんとに、どうしたんだろう」 ふと嫌な感じが胸をよぎり、茉莉を夜毎探していた時の感覚が蘇ってきて不安になってくる。うきうきしていた気分はとっくに消え去り、部屋の空気が1人であることを強く思わせる。 台所へ行き、テーブルを片付けると、いてもたってもいられずに外へ出る。また茉莉を探し回らなければならないのだろうか。そう思うと焦りの色が見えてくる。コートを羽織っていても外は肌寒く、彼はあてもなくブラブラと歩き回る。遠くには駅の灯りが見える。茉莉が戻ってくるまでここで待っていようかと改札口に佇む。人の波が来るたびにその中に彼女の姿を探す。せっかく元に戻ったと思ったのも束の間、彼女の心は寄り添ってはくれない。 そうして小1時間もそこに彼は立っていた。空気の冷たさが彼の頭を冷やし、終電の人波が過ぎるとマンションへ戻る。