ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」66
そのまましばらく車を走らせると、二人は新聞社の入っているビルの横の細い道に進んだ。普段は二、三台の車が駐車している場所だった。今夜は他の車も人目もなかったため、剛はそこに停める。 「ここなら誰も我々の話を聞いたりできない。まあ防犯カメラで録音機能がついているものもあるが、この車両は特別製だから安全だ。窓はスモークだから外からは見えない。さて話を聞こうか」 連れてこられた男は、事情を話すのを躊躇しているのか先に質問してきた。 「あんたは、誰なんだ?」 問いかけに剛は沈黙したまま答えなかった。男は、その質問をしてはならなかったと悟る。 「わかるだろう?そのことは今は話せない、悪いけど。いずれ機会を見て説明しよう」 一旦、そこで言葉を切ると、剛は続ける。 「ただ、君を多分助けることができるかもしれない。もし、良ければの話だけれど」 そう告げた時、剛は入ってはいけない領域に踏み込んでしまった。まるで彼は彼の父を殺した犯人がもう店の人間であると知っているかの様だった。調査員という身分を、その瞬間に逸脱し、彼自身の抱く、隠れていた憎しみと復讐の誘惑に負けた。彼の魂を飲み込んでいく炎は苛烈だった。 「今はまだ私のことを話すわけにはいかない。君には全く関係のないことだから。承知してもらいたい」 考えた末に男は答える。 「わかりました。しかし、何故私を助けたいと思ったのですか?その理由ぐらいは教えてもらっても」 「簡単なことだ。君は彼等を嫌っている。もしかして憎んでいる。そうだろう?」 「ええ」 「私もだ。彼等を嫌っている。憎んでいる」 言いながら剛は、何故だか自分の代わりに誰かが話しているような感じがしていた。その声は母親に捨てられた少年の声であり、憎しみと孤独に満ちていた。憎しみの世界に一歩足を踏み入れた途端、以前の様に自分を抑えることが彼にはできなくなっていった。 その時から、彼は調査員ではなくなった。