ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」91
執事が扉の取手に手をかけ、ゆっくりと開く。ギギっという金属の音がして、その部屋は長いこと使われていなかったのではないかと思われる。 「どうぞ。中へ」 案内されたハリス夫人と剛は冷たい空気の流れる室内へと躊躇いながら入っていく。冷気で満たされた部屋は手入れはされているものの、人間らしさに欠けていて、確かに長いこと誰も足を踏み入れていなかった様だった。 二人は指し示されたゴブラン織りの布張りのソファに腰掛ける。周防夫人の姿はない。しばらくするとカチャカチャと執事がお茶を運んでくる音がしてくる。彼は二人の側までくると慣れた手つきで三人分の紅茶をいれる。 「どうぞ。少しお待ちください」 目の前に出された紅茶はそのまま冷えていく。剛もハリス夫人もただただ硬直したまま周防夫人が来るのを待っていた。すると部屋の奥の扉が開くと、重々しい動きで周防夫人が現れた。黒地に金色の刺繍が施されたドレスに身を包み、まるで夜の蝶さながら。眠っていないのか目の下にはくまができているが、瞳は鋭く光っていた。ただ視線はどこかを彷徨っているようで病に犯されているようでもあった。 二人を前に石のように硬くなっている周防夫人はそれでもソファにゆっくりと腰を下ろす。そして三人の視線が交差する。 沈黙が永遠に続くかのように流れる。