変化の種は、もうずっと以前から剛の中に確かにあったものだったのかもしれない。変化の予兆は彼が日本に入国して、あのでこぼこのビルの音響を聞き、この国が自分の生まれた場所だと意識した時すでにあった。 理沙に身分の大嘘をついているのを棚に上げ、彼女が他に親しい男性がいると、まるで調査とは関係ないことに剛は気を取られ始める。彼女を乱すように抱きながら、熱が収まると我に返り、なんとなく気分を害している様子の彼女の髪を撫で続ける。そうしながら、何を俺は考えているのかと自分を責め始める。 そんな彼の様子がアメリカにいる夫人への通信文に微かに表れ、理沙に対する剛の気持ちの奇妙さに、彼よりも夫人が先に気づく。 一方の理沙から見ると、セックスをスポーツと言い切って肉体をメカニズムとして操作しようとする表向きのドライさとは別に、剛は何か得体のしれない影を隠していた。その影は炎天下の光の中で、目が眩んで影ひとつないように思われる真っ白い石の下に確かに張り付いている。その影に、最初に彼女は剛と会ったばかりの時には気付かなかった。ただ日が経つにつれて、違和感ははっきりしてくる。剛本人は無意識の内に、見せまいとしているかのように理沙には感じられた。 その週末も店ではパーティーが開かれていた。剛はもっと深く潜入するために、周防家令嬢の瑠璃に意図的に近づくことにした。