ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」38

 液体の中をゆっくりと滑るように動く大きな氷の塊を見つめながら、剛の心の中に理沙との関係が染み出してくる。彼女の中の何かが、彼の中で朧げだったものを、徐々に意識の表へ引き摺り出してくる。何かそれは目の詰まったビーズ細工のビーズがひとつ、またひとつと深すぎる闇の中から現れては、嵌め込まれていくようだった。嵌め込まれた粒は鮮明に輝き、その硬さが皮膚に埋め込まれるような痛みを与えていた。そしてその目の詰まったビーズ細工の全容はあまりにも大きく、彼は自分の中で何が起こっているのか、あるいは出現しつつあるイメージが何であるのか、それを掴むことが全くできない。そして、彼女から触発されて形作られていくイメージの影は、剛にいい知れない恐怖を感じさせる。それを避けようとして理沙との関係を欲望の方へ押しやろうとする。

「セックスは食事と同じ。習慣的なものだ。生活に必要なものだ」

「そんなこと」

彼のあまりにストレートで、時に毒々しくもある態度に彼女は面食らう。

「性欲なんて大したものじゃない。人間は動物だ」

「なんか生々しい」

「本当のことさ」

時には高圧さを感じさせる彼の強引さに押し切られ続けるうちに、彼女の中にある、見えないが、何時からかはっきりと意識されている、薄いが決して破られることのなかった殻が、所々相手の何かと癒着していった。癒着しながらその箇所が、徐々にふやけて溶け出す感じがしていた。

一方の剛はその箇所が自分の中で何かとピッタリと溶け合うたびに、彼女の中にある他人とのある種の距離をはっきりと意識するようになる。彼女はそして何故か、その距離を積極的に縮めようとはしない。その距離の取り方が彼を刺激し、疑問を起こさせ、次第に当初とは別の方向へと引っ張り始めた。彼女の謎を解き明かそうと、つい本来の任務から逸脱する。

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