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ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」82

その夜、剛は夫人に連絡する。 「Yes, I'll locate the article,,,そうです。近々作品の場所が判るでしょう。状況が固まってきました。私の父を殺したのが誰なのか、恐らく、店の誰か、、。そして、作品を隠したのは、その人物かあるいは周防夫人本人」 「そう、、」 そう、やはり店の人間が、、。まだ日本にあるはずだとは思っていた。持ち出された形跡はなかった。後は万一破壊されたりしていなければそれでよかった。「例のあの作品」とは、それなのだ、、。 剛の報告を受けて、夫人は急遽来日する。店の立ち入り捜査が始まるだろう。日本の捜査官や上層部には内密に状況を報告しておいた。周防美術商ということで最初は渋っていた彼等は、しかし殺人事件となれば動かざるを得なかった。ただ「あの作品」のことは彼等には伏せられたままだった。 そうして剛は来日してから初めて調査員として店の閉店間際に入った。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」81

沈黙の後、彼女は続ける。 「私には、いわゆるトラウマはないの。 あまりに小さかったから。でも、得体の知れない恐怖だけがずっと残っているの。だから、その、壁があるの、壁が」 「いいよ、もうそれ以上言わなくても」 「あなたにも」 「そうだ。俺にも、それがある」 「意識できない「トラウマ」があるでしょう?そう説明してよければ」 赤子の時の体験。まだ認識さえもなかった。言葉さえもなかった頃の恐怖。言葉さえも無意味な、トラウマにさえなることのない恐怖。ただその恐怖反応は消えることはない。 「親のことは、恨んでいないのか?」 「もう恨んでないよ」 「どうしてそんなに寛容になれる?」 「愛しているから、親のことは。どうにもならないし、仕方ない。理屈では説明できない。ある日、突然、こう天から降ってきたような」 不思議なジェスチャーをしながら彼女は空を仰ぐ。 「愛されていなくても、関係ない。どうしようもないんだよ。どうしようも」 彼女は一旦口を閉じ、再び開く。 「それに、誰もいなくて誰も助けてくれないと思った時、天の声を聞いたと思ったことがあったから、だから、それでいいの、それで」 理沙から何か温かいものが流れてきたように感じ、剛はそれを確かに受け取った。光。そう言って良ければ、、。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」80

剛が理沙を避けるようになって、一緒に住む話も立ち消えになり、理沙は別の場所へと引っ越していった。 でも彼は自身の出生の真相へと近づき、無性に彼女に会いたくなる。結局、相変わらず美術商に勤め続けている彼女の現住所を、翻訳の仕事を頼みたいからと口実を作って管理職から聞き出す。 彼女に会えば何かが変わるかもしれない。 「久しぶり、、」 そう言う剛に理沙は何も怒ったりはしなかった。彼が何かに苦しんでいるのははっきりとわかっていた。 「君の言っていた見えない心の意味が何となくわかったよ、、。見えないものを見ようとしても無駄だって言うことが」 それから彼は実の父と母のことを彼女に話し始める。聞き終わった彼女はまた自身の過去を話し出す。 「私は、、、階段からどうも落とされたらしいの、、。ほら」 言いながら彼女は前髪を生え際までかき上げる。そこには確かに小さな傷が、はっきりと残っていた。 「頭が、ボールみたいに腫れたんだって、、、さ」 彼女の瞳から雫が溢れる。 「今でもわからない。どうして、その、母がそうしたのかは。彼女はもうとっくに死んだから、、、遠くで」 何を見ているのかわからない透明な視線が彷徨う。 彼女は黙り込む。