ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」81
沈黙の後、彼女は続ける。
「私には、いわゆるトラウマはないの。 あまりに小さかったから。でも、得体の知れない恐怖だけがずっと残っているの。だから、その、壁があるの、壁が」
「いいよ、もうそれ以上言わなくても」
「あなたにも」
「そうだ。俺にも、それがある」
「意識できない「トラウマ」があるでしょう?そう説明してよければ」
赤子の時の体験。まだ認識さえもなかった。言葉さえもなかった頃の恐怖。言葉さえも無意味な、トラウマにさえなることのない恐怖。ただその恐怖反応は消えることはない。
「親のことは、恨んでいないのか?」
「もう恨んでないよ」
「どうしてそんなに寛容になれる?」
「愛しているから、親のことは。どうにもならないし、仕方ない。理屈では説明できない。ある日、突然、こう天から降ってきたような」
不思議なジェスチャーをしながら彼女は空を仰ぐ。
「愛されていなくても、関係ない。どうしようもないんだよ。どうしようも」
彼女は一旦口を閉じ、再び開く。
「それに、誰もいなくて誰も助けてくれないと思った時、天の声を聞いたと思ったことがあったから、だから、それでいいの、それで」
理沙から何か温かいものが流れてきたように感じ、剛はそれを確かに受け取った。光。そう言って良ければ、、。
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