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ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」54

 「あなたは、誰なの?」 震える声を理沙は喉から絞り出す。 「俺は調査会社の職員。いわゆる探偵とも少し違う。政府関係の仕事もあるからより深刻かもしれない」 「どうして?」 「思い当たらない?何か」 「さあ、私には」 「協力して欲しい、君には」 「私、私は」 「あの会社では浮いているみたいだし」 「、、、わかっていたんだ、、」 「だからというわけではない。これは個人的な頼みだ」 「個人的って?」 「俺個人の頼みだ」 「協力って何を」 「捜すのを手伝って欲しいだけだ」 「捜すって、、?」 「君の会社が隠しているもの」 「まさか、何かの作品とか」 剛は頷く。 「でも、私」 「何もしなくていい。ただ、俺の秘密を黙っていて欲しい。気づいたことを上司に話さなかったように、、。今はそれだけ頼みたい」 「でも、あなたがただ何かを捜しているだけだって、どうやって信じればいいの?」 「それも、そうだな」 「私、どうすれば」 彼が調査会社の人間だと考えると確かに辻褄が合う。どこが財源だか分からない大金。人気がないマンション。厳密なセキュリティ。家事をする人間さえいない。床にはいつも自動で動く掃除機。料理はほぼしている気配はない。だいたいこの資産家の男性が何故近づいてきたのかが彼女には全く理解出来なかった。確かに密偵だと考えると捜しているものが何らかの作品であれば、納得がいく。 「君はとにかく俺達のいわばテストに合格した」 「俺達って?テストって何のこと?」 「俺達、調査会社のことだけど、それと調査を依頼してきた人物。テストは、単に、君が未来を見られる人間かどうか。それとも真実を暗闇に隠蔽し続ける人間かどうか」 そこで剛は一旦話を止める。理沙の緊張がほぐれたのを感じた彼は、彼女を連れて事務室から出る。出る時はもちろん厳重に施錠した。

お詫びです

 今週は体調不良のため連載をお休みいたします。読者の皆様にはご迷惑をお掛け致しますが よろしくお願いいたします。

ろまんくらぶ「Thirteen 12ー再生ー」53

用心のため、彼女は自分の家に置き手紙をしてきた。自分に何かがあった場合、帰宅が長期に渡ってできなかった場合、管理人が読むことができるようにしてあった。剛が指定した時刻が夕方だったことが彼女に不安を起こさせた。 いつものように、彼の家へ呼ばれた時によくあるのだが、ピザとコーラやビールで軽く食事を済ませた。二人は映画を見たりしてよく過ごしていた。その晩もいつものようにアメリカ映画を見ていた。DVDの一本目が終わり、剛が飲み物をとりにキッチンへ行く。軽く一杯やってから洗面台へ彼が立った隙に、理沙は家の中をぐるりと見回す。そして彼女は家の奥にある、いつもはピッタリと閉じられている部屋の扉が、少し開いているのを目に留める。前にその扉のノブを回した時は、鍵がかかっていた。彼がまだ戻ってこないのを確かめると、彼女は恐る恐るそこへ忍び込む。そして大きなデスクの周辺を見回す。机の右側の書棚にある「店に関する報告書」と書かれた黒くて分厚いファイルに気づいた時、彼女の真後ろには彼が立っていた。 「気づいた?」 言いながら彼はその指を彼女の首筋に後ろから回す。いつの間にか背後に来ていた彼の声に彼女はびっくりして振り向く。 「君の分のファイルもあるよ」 「どうして、、」 怯えた声の彼女。 「別に君の私生活を記録しているわけじゃないんだ。事件に関係ないものは割愛してある」 理沙は剛のその言葉を信じてはいなかった。彼女の視線から彼女がもう彼を信じていはいないのが剛にはわかる。さらに彼女の身体の硬直からその恐怖が伝わってくる。 「君のことを調べているわけじゃない」 真顔でそう言う、彼の腕の中で彼女は震えている。それから少し身体を離すと、彼は彼女を静かに椅子に座らせる。抵抗しないのは、「俺の事がよほど怖いからなのだろうか」と思うと剛の態度は穏やかなものになる。そしてゆっくりと重々しい声で話し出す。 「協力して欲しいんだ」 「協力?」 「そう」 深い闇のような沈黙が二人を取り囲む。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」52

 剛という人物がどうも普通ではないことに気づいた理沙は、何かがおかしいと周囲に敏感になってきていた。彼女の疑惑は彼自身の一言で明白になった。それはいつものパーティーで何気なく彼が発した一言だった。 「どうせここは人種偏見があって、古くさいところがあるんだろう?」 「え?」 「いや、他の社員がこぼしてたよ、その」 まずった。失言だ。 「他の?」 って誰?人種偏見なんて言うわけないし。それ、私が研修で来ていたあの学生に説明したことかも。 「それっていつどこで聞いたのかな。誰がそんなことを」 「いや、この間のパーティーだったかな。えっと誰だったかちょっと覚えてないな」 そんなこと誰も言わないと思う、、。何故彼はそれを知っているのか、、。そう理沙が思い始めたある日、偶然にも潜入捜査のことを描いた海外のドラマをテレビで見てしまう。まさかと思いながら、今までの剛との会話や、あの学生と交わした会話を詳しく検討してみる。そう言えば、剛は店の台帳のこともどうやら知っている。何故、台帳のことを知っているのか。知っているのはあの学生だけのはず、、。 もしかして、、。 理沙は直感的に剛がどうやら何かを探っているらしいと気が付く。 そして彼はもしかして彼女に何か気づかれたのではないかと感じる。いよいよ時間がないことを彼ははっきりと意識した。その眼差しは冷静沈着な調査会社の職員のそれになっていた。 でも何を彼は探っているのか、、。こういう時、理沙は無駄に騒いだりする人間ではなかった。 その晩、剛から連絡があり、理沙は週末の土曜日に彼のマンションへ行くことを決心する。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」51

剛には、自身の中で眠っている何かを、それを覆い隠しているものをこじ開けて表出させる必要があったからだった。それが唯一、夫人の求める真実へと辿り着く道であり、彼自身の真実へと到達する道でもあった。 機会はやってきた。剛は瑠璃と食事をする約束をし、それよりかなり早めにオフィスにやってきた。瑠璃は不在で約束の時間まで戻らないと受付で言われた。受付の人物は何ら不審に思わず瑠璃の部屋まで剛を案内し、ソファに腰掛けて待つようにとお茶を出して退出した。部屋に入ると誰もおらず、彼は自由に金庫の中を見ることができた。該当する年に集中しながら丹念に資料を見たが「作品」の手がかりは全く出てこなかった。何も出てこないことがますます作品の出どころを怪しいものにした。 剛は、そして彼だけでなく夫人も徐々に焦燥感に包まれていった。「何も出てこないはずはない」「何かあるはずだ」と今まで以上に何かを掴もうと入手した情報の詳細に執着して調べ続けた。今までの調査資料に不眠不休で目を通し続けた。 もう、これ以上は待てなかった。滞在が長引くと剛の身分についても、ボロが出やすくなってくる。 そして、やっと、その週末に彼は「ある言葉」を従業員の口から聞くことができた。 「その、例のあの作品のことなんですが。ホラ、ずうっと昔に、その」 「あ、ああ。あれ?もしかして、あの」 「なんとかして、その、売ることはできませんかねえ、、。その、こう不景気だと、、。ひとつでも売れるものがあれば。あれはかなり古い感じの作品ですし」 「あれは、、、無理だわ。いくらなんでも。私達、生きていけなくなるかもしれないし」 言われて古くからいる従業員は舌打ちをした。そして彼女は続ける。 「偉いさんが、そういうことには関わるなと、知らぬ存ぜぬで通せと」 「じゃあ、隠したままで」 「そう。そうしてちょうだい。どうせ物がどこにあるかは周囲には分からないんだから」 それを聞いてから、剛は周防夫人と話していた人物を尾行し始める。その「作品」は例の作品の可能性がある。周防夫人は戦前からの古美術の流れにも詳しかった。 しかし、依然、その作品の場所はわからずに、無為の時間だけが流れ、剛が銀座のワインバーで夜を過ごしている間に、彼の足下に火がつき始めていた。