ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」51

剛には、自身の中で眠っている何かを、それを覆い隠しているものをこじ開けて表出させる必要があったからだった。それが唯一、夫人の求める真実へと辿り着く道であり、彼自身の真実へと到達する道でもあった。

機会はやってきた。剛は瑠璃と食事をする約束をし、それよりかなり早めにオフィスにやってきた。瑠璃は不在で約束の時間まで戻らないと受付で言われた。受付の人物は何ら不審に思わず瑠璃の部屋まで剛を案内し、ソファに腰掛けて待つようにとお茶を出して退出した。部屋に入ると誰もおらず、彼は自由に金庫の中を見ることができた。該当する年に集中しながら丹念に資料を見たが「作品」の手がかりは全く出てこなかった。何も出てこないことがますます作品の出どころを怪しいものにした。

剛は、そして彼だけでなく夫人も徐々に焦燥感に包まれていった。「何も出てこないはずはない」「何かあるはずだ」と今まで以上に何かを掴もうと入手した情報の詳細に執着して調べ続けた。今までの調査資料に不眠不休で目を通し続けた。

もう、これ以上は待てなかった。滞在が長引くと剛の身分についても、ボロが出やすくなってくる。

そして、やっと、その週末に彼は「ある言葉」を従業員の口から聞くことができた。

「その、例のあの作品のことなんですが。ホラ、ずうっと昔に、その」

「あ、ああ。あれ?もしかして、あの」

「なんとかして、その、売ることはできませんかねえ、、。その、こう不景気だと、、。ひとつでも売れるものがあれば。あれはかなり古い感じの作品ですし」

「あれは、、、無理だわ。いくらなんでも。私達、生きていけなくなるかもしれないし」

言われて古くからいる従業員は舌打ちをした。そして彼女は続ける。

「偉いさんが、そういうことには関わるなと、知らぬ存ぜぬで通せと」

「じゃあ、隠したままで」

「そう。そうしてちょうだい。どうせ物がどこにあるかは周囲には分からないんだから」

それを聞いてから、剛は周防夫人と話していた人物を尾行し始める。その「作品」は例の作品の可能性がある。周防夫人は戦前からの古美術の流れにも詳しかった。

しかし、依然、その作品の場所はわからずに、無為の時間だけが流れ、剛が銀座のワインバーで夜を過ごしている間に、彼の足下に火がつき始めていた。

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