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ろまんくらぶ「仮面の天使」51

真二は健をジロジロと見る。 「なんだよ、その目は」 健は視線に気づく。 「あんたさ、何で、姉ちゃんがあんなにご飯も喉を通らないほど落ち込んだのか、分かってないんじゃないの?あんなに疑って」 「何なんだよ」 「ねーちゃんが大切なのは分かるけど、人形じゃないんだから。可愛いっぽいのは分かるけど」 「だから、何なんだよ」 「え?分かんないの?ほんとに?俺、あんたそんくらい知ってると思ったよ」 「だから、何なのか言えよ、さっさと」 「ねーちゃん、あんたと、その、キスとかしたかったんじゃないの?」 「え?」 「だから、あんたがねーちゃんとそうしないから、だから余計疑ったんだよ」 「え?」 「間違いないよ。俺、確信した。今、何でねーちゃんがご飯も食べられなくなったのか。悪いけど、あんたねーちゃんのこと、女と思ってなかったんじゃないの?」 「俺は、、、そんな」 「人形くらいにしか見てなかったんじゃないの?」 「別にそんな」 「だから、ねーちゃんが焼いたら、ちょっと嫌んなったとか」 「、、、」 「ほらね」 「違う。確かに彼女が焼いた時、正直がっかりしたよ。根も葉もないことで俺を疑っているようにしか見えなかったし。彼女が疑った相手は俺の目にはただの優秀なスタッフにしか見えなかったから。一体誰のためにこんなに働いているのかも、このマンションを買ったのかも、分かっていないように思えて。こんなにわがままで、仕事のことも全くわからない彼女を」 「煩わしいと思った?」 「そう、だね」 「それは、ねーちゃんのこと、分かってないよ。ねーちゃん、親の苦労もじっと見て育ったから、そんなはずないよ。ねーちゃんはただあんたがキスもろくにしないから愛されてないんじゃないかって、思ったんじゃ」 「、、、」 「んで、タイミングよく、その女が出て来て。。」 真二に指摘されて健は肩を落とす。

ろまんくらぶ「仮面の天使」50

真二は思い出す。以前姉が婚約を解消した時のことを。あの時でさえ、これほど荒れたりはしていなかった。彼は半分面白がって健と茉莉のこのひどい追っかけっこを眺めていた。両親に彼女の状況を連絡すると心配してこちらへ向かうと言い出す。 健は茉莉を捕まえると連れてくる。 「離して!離してよ!やだ。絶対会いたくないって言ったでしょ!」 彼は彼女を寝室まで連れ戻す。彼女は疲れてぐったりしている。 「やだ。やだよ。こんな姿、見られたくない」 彼女は泣きべそをかいている。それから少しずつ落ち着いてくる。真二は茉莉に安定剤を差し出すとコップに水を汲んで持ってくる。彼女はそれを素直に口にする。 マンションを見るとあちらこちらで物が壊れている。かなり乱れた状態になっている。仕方ないと健はため息を吐く。しばらくすると彼女は静かになり、ベッドでうとうとし始める。健はそっと毛布をかけると少しほっとする。 

ろまんくらぶ「仮面の天使」49

 真二は診療用の鞄を持ってくる。 「お酒、すごいんでしょ。もしかしたらアルコール依存の症状があるかもしれない」 「症状って」 「もし、多少でも中毒になっていたら、禁断症状が出るかもしれないから、覚悟しておいて」 緊張した面持ちで健は説明を聞いている。 「状態を見たくないならあっちへ行ってたら?」 真二はまるで茉莉が泣くところを見られたくなかった時のように、健に書斎の方向を目で指し示す。 「いや、ここにいるよ」 「そう。わかった」 茉莉は眠っている。汗が少しずつ出てくる。 「あまり良くなさそうだ」 「う、、、ん、、、苦しい。水、、、水ちょうだい」 彼女はまるで寒気を感じているかのように鳥肌を立てる。吐き気を感じ青白い顔をしている。 「もしかして吐くかも。ベッドだとまずいでしょ」 「洗面所へ連れて行くよ」 「気付かれるよ」 2人がごちゃごちゃ言っている間も彼女は胃の辺りをさすっている。彼女ははっきりと目を覚ますと苦しそうにもがき始める。健はサングラスを外すと彼女の視線にまともにぶつかる。彼女は目をカッと見開くと明らかに険しい目で健と真二を睨みつける。 「なんでいるのよ!」 2人を罵倒しベッドの上で暴れ始める。 「ばかー、なんでいるのよ!」 興奮した彼女はあちこちに体をぶつける。怪我をすると危ないと真二は鎮静剤を彼女に処方しようとする。 「ちょっとおさえてて」 真二は健に指示する。健は恐る恐る茉莉に近づくと彼女の体をおさえる。彼女は抵抗して激しく動く。真二は鎮静剤を注射する。彼女は気分が少し冷静になってきた代わりに、健に食ってかかり、乱暴な口をきく。 「ばかー!出ていってよ!むかつく!」 健は彼女の乱暴な言葉に驚くと同時にそれがナイフのように刺さってくる。それでも彼は彼女が何を言っても彼女の体を動かさないようにする。彼女は足で彼の足を蹴り始める。彼女はまた興奮してきて泣き喚く。その内に喉が痛くなったのかだんだんと声が小さくなる。抵抗する力も弱くなる。それでも健が少し力を緩めた途端に、彼を蹴飛ばすと居間へ逃げる。居間のガラスの花瓶をひっくり返す。居間は結構めちゃくちゃになる。物を投げると 「ばかー」 を繰り返す。健が触ろうとすると、両手を振り回して、 「触んないで」 を連発する。真二はこんな様子の姉を見たことがなかったので、ねーちゃんスゲーと思った。

ろまんくらぶ「仮面の天使」48

 家へ着くと健は茉莉を車から降ろす。彼女が目覚めないのでそっと車の外へ出すと鍵を閉める。彼女を抱き上げてマンションへ入る。エレベーターでそのまま彼女を運ぶ。 彼女は痩せてかなり軽くなっている。手首が以前よりも細くなっていて、抱えるのに苦労はなかった。彼は彼女の体が弱ってきていることを意識すると、一刻の猶予もないと感じる。下手をすると彼女は心身共に崩壊してしまうかもしれないという考えが彼の頭の中にチラつく。彼は彼女をベッドに寝かせると急いで下へ戻り、車を車庫に入れる。 急いでまた家まで戻ると、自分の弟と茉莉の弟の真二へ連絡する。彼女はずっと眠っている。真二は急いでやってくる。健は茉莉のジャケットを脱がせると、布団をかける。彼女は首のところも痩せている。健は自分自身に向かって腹を立てる。彼女を今はとにかく起こさないように気を付ける。青白い顔に、その真っ赤な口紅は痛々しくて本当は拭い去りたかった。以前、レストランで彼女がフランスへ出かける前にしていた、あの赤い口紅と、とても同じ色とも思えない。あの時の彼女は、うっすらとパウダーをはたき、肌はその下でピンク色に上気していて、そこへ赤い唇が柔らかな薔薇の花びらのように咲いていた。今は、、、まるで、亡霊の顔に赤い毒々しい花びらが張り付いているように見える。 茉莉は額に汗をかいている。健は真二をじっと待つ。30分ほどするとエレベーターが動く音が聞こえた気がした。玄関のベルが鳴る。健は急いでドアを開ける。