ろまんくらぶ「仮面の天使」49

 真二は診療用の鞄を持ってくる。

「お酒、すごいんでしょ。もしかしたらアルコール依存の症状があるかもしれない」

「症状って」

「もし、多少でも中毒になっていたら、禁断症状が出るかもしれないから、覚悟しておいて」

緊張した面持ちで健は説明を聞いている。

「状態を見たくないならあっちへ行ってたら?」

真二はまるで茉莉が泣くところを見られたくなかった時のように、健に書斎の方向を目で指し示す。

「いや、ここにいるよ」

「そう。わかった」

茉莉は眠っている。汗が少しずつ出てくる。

「あまり良くなさそうだ」

「う、、、ん、、、苦しい。水、、、水ちょうだい」

彼女はまるで寒気を感じているかのように鳥肌を立てる。吐き気を感じ青白い顔をしている。

「もしかして吐くかも。ベッドだとまずいでしょ」

「洗面所へ連れて行くよ」

「気付かれるよ」

2人がごちゃごちゃ言っている間も彼女は胃の辺りをさすっている。彼女ははっきりと目を覚ますと苦しそうにもがき始める。健はサングラスを外すと彼女の視線にまともにぶつかる。彼女は目をカッと見開くと明らかに険しい目で健と真二を睨みつける。

「なんでいるのよ!」

2人を罵倒しベッドの上で暴れ始める。

「ばかー、なんでいるのよ!」

興奮した彼女はあちこちに体をぶつける。怪我をすると危ないと真二は鎮静剤を彼女に処方しようとする。

「ちょっとおさえてて」

真二は健に指示する。健は恐る恐る茉莉に近づくと彼女の体をおさえる。彼女は抵抗して激しく動く。真二は鎮静剤を注射する。彼女は気分が少し冷静になってきた代わりに、健に食ってかかり、乱暴な口をきく。

「ばかー!出ていってよ!むかつく!」

健は彼女の乱暴な言葉に驚くと同時にそれがナイフのように刺さってくる。それでも彼は彼女が何を言っても彼女の体を動かさないようにする。彼女は足で彼の足を蹴り始める。彼女はまた興奮してきて泣き喚く。その内に喉が痛くなったのかだんだんと声が小さくなる。抵抗する力も弱くなる。それでも健が少し力を緩めた途端に、彼を蹴飛ばすと居間へ逃げる。居間のガラスの花瓶をひっくり返す。居間は結構めちゃくちゃになる。物を投げると

「ばかー」

を繰り返す。健が触ろうとすると、両手を振り回して、

「触んないで」

を連発する。真二はこんな様子の姉を見たことがなかったので、ねーちゃんスゲーと思った。

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