「先生も本日はお越し下さいまして、いつもいつもありがとうございます」 「いやなに、今日も盛況だね」 「おかげさまで、彼の作品は人気なんですよ」 「確かに、、、どこか繊細で硬質な、フィルムでしっかりと覆っているようにかっちりとしている。そして色ガラスのような色彩」 「そこまで、おっしゃっていただけますと」 華やかというには言葉が足りない、どこかギラギラとした抑えられた情念の織り込まれた、繊細というより神経がひりつくようなその世界の中に、剛は滑り込んでいった。 「Hello! How are you?」 「Oh! Hello, Mr. Break, I'm fine, and you?」 「I'm fine...It's great success!」 「And, how about your business?」 「Don't talk about it now, but...Hey, Eriko, I'd like to introduce to you Mr.Takeshi Nogami. He's son of the president of Harris Corporation. He comes to Japan for research of Japanese economy.」 剛は夫人から紹介されたブレイク氏を探して近づき、挨拶を交わし、それから聖域の住人に向き合う。 「初めまして野上です。現在ハリス・コーポレーションの重役をしております」 「初めまして、周防恵里子です。それは素晴らしいですわね。日本は初めてですか?」 「いえ、何回か」 「失礼ですが、こちらでお生まれですか?」 「いえ、アメリカで生まれ育っております。父は日系二世ですから」 父は存在するのだろうか、、。 「でも、ハリス社なんて素晴らしいですね」 「少々、日本の状況を見にきたんですよ。支店を出そうかどうか検討中です」 「それは、また、要するにお仕事ですね」 「そうです。遊んでもいられませんよ」 「ブレイク氏とは長いお知り合いで?」 「ええ、ハリス社の代表が祖父母の代から付き合いがあって、とても懇意にしてまして、今回色々とお世話になりそうで」 そう聞くと、周防の目がはっきりと相手を値踏みするように鋭く光る。 「美術品は、お好きですか?」 「...