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8月, 2022の投稿を表示しています

こんにちは

今日はまた不安定なお天気ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 ここで多少言い訳です。 私の英語は独学の面も多いため、Brokenですので悪しからず。 ただし、今後も学習を続けていこうと思っておりますので よろしくご理解のほどお願い申し上げます。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」15

「先生も本日はお越し下さいまして、いつもいつもありがとうございます」 「いやなに、今日も盛況だね」 「おかげさまで、彼の作品は人気なんですよ」 「確かに、、、どこか繊細で硬質な、フィルムでしっかりと覆っているようにかっちりとしている。そして色ガラスのような色彩」 「そこまで、おっしゃっていただけますと」 華やかというには言葉が足りない、どこかギラギラとした抑えられた情念の織り込まれた、繊細というより神経がひりつくようなその世界の中に、剛は滑り込んでいった。 「Hello! How are you?」 「Oh! Hello, Mr. Break, I'm fine, and you?」 「I'm fine...It's great success!」 「And, how about your business?」 「Don't talk about it now, but...Hey, Eriko, I'd like to introduce to you Mr.Takeshi Nogami. He's son of the president of Harris Corporation. He comes to Japan for research of Japanese economy.」 剛は夫人から紹介されたブレイク氏を探して近づき、挨拶を交わし、それから聖域の住人に向き合う。 「初めまして野上です。現在ハリス・コーポレーションの重役をしております」 「初めまして、周防恵里子です。それは素晴らしいですわね。日本は初めてですか?」 「いえ、何回か」 「失礼ですが、こちらでお生まれですか?」 「いえ、アメリカで生まれ育っております。父は日系二世ですから」 父は存在するのだろうか、、。 「でも、ハリス社なんて素晴らしいですね」 「少々、日本の状況を見にきたんですよ。支店を出そうかどうか検討中です」 「それは、また、要するにお仕事ですね」 「そうです。遊んでもいられませんよ」 「ブレイク氏とは長いお知り合いで?」 「ええ、ハリス社の代表が祖父母の代から付き合いがあって、とても懇意にしてまして、今回色々とお世話になりそうで」 そう聞くと、周防の目がはっきりと相手を値踏みするように鋭く光る。 「美術品は、お好きですか?」 「...

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」14

 夫人は剛が日本で不自由しないように、あらゆる手配をしてあった。特に、調査対象となっている美術商の周辺には容易に近づけるように計らってあった。かつて第二次大戦の時、まだ貧しさの中にいた幼子であった夫人には不可能なことだった。あの時の屈辱をはらそうと躍起になっているわけではなかった。ただ、歴史的な現実を認めることのない高慢な人々に、それを認めさせたかっただけだった。そして何よりも夫人の父にとって最愛の先祖が必死で守ってきた、その作品を返して欲しいだけだった。 夫人はアメリカ政府高官にも裏から手を回しておいた。その高官でさえ剛の本当の身分は知らされていなかった。高官は、剛のことを夫人の身内で、日本には夫人の経営する会社の支社を作ろうかどうかを検討する目的で来日したと思い込んでいた。つまり富豪の子息であるという仮の身分の下に、調査会社の職員であるという本当の身分が隠されていた。 さらに、その仮面の奥のもっと深いところでは、特定できないある欲求に動かされている別の「自分」が隠れていた。人格は、めくってもめくっても芯が見えない、まるで玉葱のようになっているものだった。剛は、もしかしてめくりそびれて崩れてしまう領域に踏み込んでいるのを、まだこの時は知らなかった。ただ、いい知れない恐怖が徐々に内心に広がってきていた。恐怖は、まるで水滴のように、少しずつ剛の魂を侵していく。 その週の金曜日、調査はすでに始まっていた。美術商は古美術だけでなく、現代作家の作品も展示していた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」13

入り組んでせせこましい東京の街中のどこにこんなものを作る余裕があったのかと。家賃のことを運転手に尋ねると、この位で70万円でしょうかと、平然と答える。 「Fuck, It's crazy!」 それと聞いて思わずそう叫んでしまった。以前にパリで同様なところを借りた時には12〜13万円だった。アメリカで、まだ住宅を買う前に借りていたマンションも狭くはなかったが、そんな値段はしなかった。 「信じられない!なんで、そんなに払えるんだ!」 そう繰り返す剛に、運転手は苦笑する。 「ニューヨークの最高級マンションだって家賃は100万円は下らないでしょう?」 「まあ、最高のやつは」 「日本も、、、そういう国ですから」 剛が突っ込む。 「貧富の差が激しいんだろう?ガキを育てる金がなくてトイレで出産して、へそのおが着いたまま置き去りにする女がいるかと思えば、プロダクションとの契約金に5億を要求する女もいる」 運転手は頷く。 「見かけはそうは見えませんが、実際には何もかも許され、何をしても咎められず、有り余る程の金品を持った一握りの人々と、明日食べるものもない人々と、誤魔化しのように存在する家一軒持てない「中流」と呼ばれている貧しい人々と、そして、貧しくはないのですが、欧米人の10倍もの労働を強いられている才能のある人々、、。それに、一握りの大金持ちは、ほとんど仕事はしていません。どうやってズルをするかが彼等の課題ですから。それにシェルターも持っていますから戦争も平気です」 「そうだな。そういうのは何処にでもいる」 「あなたが調べるのは、そういう一握りですよ、、。つまり聖域の住人」 告げられて、剛は夫人の一言一言を思い返す。 「極秘ですよ。犯罪組織を相手にするわけではないのです。でも、通常の方法で彼等の動向を理解することはなかなか出来ない。でも、私は通常の方法から始めたい」 「地道な調査ですか?」 「そうです」 運転手が去り、そのだだっ広いマンションにひとりきりになった時、言いようのない疲れが襲ってきた。前に数回日本に来た時には感じたことのなかった特種なもので、一体それが何を意味するのかわからなかった。同時に心の何処かで、まるで長い呪縛から解き放たれたかのように、ほっとする自分がいる。 「あなたの探しているものがきっと見つかる」 そう言っていた夫人の声が微かに響いたように思われた...

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」12

 同様に、日本の喫茶店に入ることができずに、アメリカンカフェを探し求めるアメリカ人もいる。関係のある人物が誰もいない国で、現地の家族が集う現地のレストランで、たったひとりで酒を飲まなければならないこと程、辛いことはないだろう。それよりも、長い滞在からくる疲労から逃れるために、一瞬でも自国にいるような錯覚を味わわせてくれる場所が居心地がいい時がある。 その日、自分と同じでありながら、自分と違う言葉を話す人だけに取り囲まれ、アメリカとはしかしながら違う印象のチェーン店に入りながら、剛はただひとりだけで、その場にいた。同じ文法、違う発音。剛の日本語は、どこかで他者とは違っていた。それは「ポテト」を発音する時に際立った。 出てきたチーズバーガーの包みを見た時、ここは日本だとさらにはっきりと思い知らされた。 「肉が薄くて小さい」 それだけのことだった。そんな些細なことにも苛つく自分に彼は苦笑した。 「コーヒーも分量が少ない」 くだらないことのように思われた。 レストランから剛が出てきた時、その表情は決して明るくはなかった。この先の調査を考えると多少緊張はあったし、さらに食事に対する不安が急に頭をもたげてきた。そう感じながら、どこかで、仕方ないと突き放していた。 「車がもう一台はいる」 「というと?」 「ベンツは目立つから」 「それは、、、アメリカでは何にお乗りで?」 「トヨタ」 「スポーツカーというわけではないのですか?」 「トヨタは音がしないから、調査には便利だ。目立つ車はそういう目的がある時にしか使わない。音が大きい車もだ。ベンツは、もちろん夜の豪奢な街では目立たないが」 「よくご存知で」 「まあ、情報は仕入れた」 「トヨタをご準備いたしましょう」 「そうしてくれると助かる。俺専用に。美術商に出入りしたりする時は、ベンツを使うので、その時は頼む」 「かしこまりました」 そして、指定されたマンションに着いた時、剛は驚いた。