ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」13
入り組んでせせこましい東京の街中のどこにこんなものを作る余裕があったのかと。家賃のことを運転手に尋ねると、この位で70万円でしょうかと、平然と答える。
「Fuck, It's crazy!」
それと聞いて思わずそう叫んでしまった。以前にパリで同様なところを借りた時には12〜13万円だった。アメリカで、まだ住宅を買う前に借りていたマンションも狭くはなかったが、そんな値段はしなかった。
「信じられない!なんで、そんなに払えるんだ!」
そう繰り返す剛に、運転手は苦笑する。
「ニューヨークの最高級マンションだって家賃は100万円は下らないでしょう?」
「まあ、最高のやつは」
「日本も、、、そういう国ですから」
剛が突っ込む。
「貧富の差が激しいんだろう?ガキを育てる金がなくてトイレで出産して、へそのおが着いたまま置き去りにする女がいるかと思えば、プロダクションとの契約金に5億を要求する女もいる」
運転手は頷く。
「見かけはそうは見えませんが、実際には何もかも許され、何をしても咎められず、有り余る程の金品を持った一握りの人々と、明日食べるものもない人々と、誤魔化しのように存在する家一軒持てない「中流」と呼ばれている貧しい人々と、そして、貧しくはないのですが、欧米人の10倍もの労働を強いられている才能のある人々、、。それに、一握りの大金持ちは、ほとんど仕事はしていません。どうやってズルをするかが彼等の課題ですから。それにシェルターも持っていますから戦争も平気です」
「そうだな。そういうのは何処にでもいる」
「あなたが調べるのは、そういう一握りですよ、、。つまり聖域の住人」
告げられて、剛は夫人の一言一言を思い返す。
「極秘ですよ。犯罪組織を相手にするわけではないのです。でも、通常の方法で彼等の動向を理解することはなかなか出来ない。でも、私は通常の方法から始めたい」
「地道な調査ですか?」
「そうです」
運転手が去り、そのだだっ広いマンションにひとりきりになった時、言いようのない疲れが襲ってきた。前に数回日本に来た時には感じたことのなかった特種なもので、一体それが何を意味するのかわからなかった。同時に心の何処かで、まるで長い呪縛から解き放たれたかのように、ほっとする自分がいる。
「あなたの探しているものがきっと見つかる」
そう言っていた夫人の声が微かに響いたように思われた。
「何を、俺は、、?」
もうとっくに何処かでわかっていたことを、改めて見つめ直そうとしているかのようだった。
「とにかく、今は眠ろう、、、疲れた」
深い闇が彼を覆いつくす。
コメント
コメントを投稿