ろまんくらぶ「仮面の天使」96
「は〜、どうしたんだろう」 ついついため息が漏れてしまう健。 「さむっ」 台所はガス火が消えるとすぐに冷えてくる。彼はエアコンを少し強めにする。 熱々だったトンカツも冷えてしまって、何だか心も凍えてくる。 ココアをいれようと彼はカップに粉末を入れ、お湯を沸かす。お腹のぐうっという音がする。どうしようか、何か食べようかと彼は冷蔵庫を開ける。生ハムとナッツ、カマンベールが目に入る。少し何か摘んで待っていようか。そう思うとガスの火を止め、半分残っていた赤ワインを取り出す。おつまみをお皿に盛ると、ワインをグラスに注ぐ。茉莉と飲もうと買ってあったビールを冷やすのを忘れていたため、冷蔵庫に入れる。 「カンパイしたいな」 1人でワインに口をつけると彼はつぶやく。 「カンパイ。ふたりの再出発のために」 独り言を言う。空きっ腹にアルコールが効いたのか、彼は割とすぐいい気分になる。半分空いたワインはそう言えば彼女に飲ませたいと彼女に謝りたいと、少し前に買ってあったとっておきのものだった。滑らかで繊細な舌触り、深くて重くない。きっと茉莉がもっと年齢を重ねたら、そんな感じになるだろうと思わせるような、、。 時計の音は遠のき、健は少しうっとりと夢想に浸る。