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11月, 2023の投稿を表示しています

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」79

「あなたの母親はあなたを守って隠すためにあなたを公園に捨てたの。引き取りの段取りをした後で。彼女の遺書に、もしあなたがいつか帰国した時に、それを説明して欲しいと書いてあったわ。店は、あの時、息子だけでなく、店の秘密を知っている者、もちろん彼女のことも付け狙っていたから。彼女は店の人間があなたのことも手にかけると思っていた。だから」 それが本当のことだったってわけだ。剛の母から資金を得て、亜由美はアメリカ留学を果たした。それから彼女は彼をアメリカに置き去りにし、いつの間にか店に所属する「先生」になっていた。剛は亜由美を母親だと思い、しばらくの間でも、本当の母親のことを、彼を捨てた人間として憎んでいた、、。 そして、ずっと、捨てられたことから彼は、永遠に消し去ることのできない、取り除くことのできない、認識することのできない「トラウマ」を抱えていた。 それが、真実へとつながる扉に鳴った、、。 理沙の言っていた、「見えない心」の意味がうっすらと解り始める。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」78

周防美術商は店の将来を考え、そのために夫人の作品の存在のもみ消しを図ろうと、秘密を嗅ぎつけ探っていた剛の父を殺したのだろうと日記のページに綴られていた。作品の存在を知っていたもう一人の人物が藤木だった。彼に剛の父親殺害の罪を被せるために、店の誰かが藤木を現場に呼び出したのだろうと記載されていた。 そして、藤木は濡れ衣を着せられ、さらにパリで殺された。 それから剛が生まれる前に父親は死亡したのだろう。母は何かの理由があって生まれたばかりの剛を捨てたのだろうか。何故そうしたのか?求めても得られない父と母に関する疑問の答え、、。 深い物思いに沈んでいた時、電話のベルが鳴る。 「Hello? What? OK. Thanks!!」 手元のメモに素早く名前と住所を書き留める。同僚からの電話だった。彼女は剛の父の母、剛の祖母にあたる人の住所と電話番号を伝えてきた。もう夜も遅いと知りながら、剛は急いで「祖母」に電話をかける。 「はい、、、ええ、篠田ですが、、、?え?あなたが、、」 絶句した後、剛の祖母は電話口で涙を流しているようだった。 少しして落ち着いた後、彼女は静かに語り出す。剛の父のこと、そして彼女が反対した父母の結婚のこと、、、それから、剛の母親が店の追跡と追及を逃れるために「自殺」したこと、、。強いショックを受け目眩を覚えながらも剛は聞かずにはいられなかった。 「どうして、彼女は俺を捨てたんだ?」 暗い暗い深淵の底から真実が浮かび上がる気配がする。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」77

「何なの、これは!?」 瑠璃は秘書の前で週刊誌をデスクに投げつけた。 彼女と滝沢との関係が詳細に掲載され、彼女に作品を買わされたと名門美術商のスキャンダルがぶちまけられていた。それには彼女が短いスカートで彼を誘惑する仕草をしている写真が丁寧にも添えられていた。もちろんふたりがホテルの部屋に入る写真も。 瑠璃の赤い爪の指先は怒りと屈辱で細かく震えていた。 作戦がうまくいったこととは別に、思い悩んだ末、剛は夫人へ電話をかける。遠い国のコール音が確かな物ではないように響く。七回程鳴ったところで夫人が答える。彼の深刻で、沈鬱な声を聞き、何か聞く前に静かに語り出す。 「You have to find the truth, like I have to find my truth. The truth for you and me. By mean, you are my son and I am your mother」 夫人は二人が真実の探求で強く結ばれた親子であると語る。 「You already know about it?」 この事を知っていたんだろう?と剛は夫人を責める。 夫人は静かに続ける。 「あなたの父親は、私の父が調査を頼んだせいで恐らく死亡した。父は大戦中に奪われたあの作品を探していた」 剛の父は、その作品を探し出し、夫人の父へと渡す予定だった。それに伴い新たに店を開くだけの資金援助を受ける予定でもあったと藤木の日記に記載されていた。剛は夢中でページをめくった。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」76

 瑠璃はブランド物のピンクのスーツに身を包み、宝石の散りばめられた作品を数点滝沢のオフィスに持参した。 「本日はご足労いただきありがとうございます。本来ならお店におうかがいするのですが」 「いえ、大切な滝沢様のお目にとまったと言うことなので、特別に」 言いながら彼女は流し目を送る。口調は滑らかで声は艶やかだった。こんな感じで顧客を手玉に取ることには慣れっこになっているといったところだろうか。 「コーヒーでもいかがですか?」 「ええ」 身体が沈み込むようなソファに腰掛けながら、瑠璃は作品をガラス張りのテーブルの上に丁寧に置き、包みを解く。コーヒーが運ばれてきて、事務員が応接室を立ち去ると、滝沢はドアを閉める。 「さて」 瑠璃は作品にかかっている覆いをそっと外しながら、同時にテーブルの下で足を組み替える。滝沢は瑠璃の向かいではなく隣に腰掛ける。彼女の身体が一瞬はねる。彼は彼女に身体をピッタリと寄せ、短いスカートから剥き出しになったその太ももを撫で始める。本来ならそこで何らかのリアクションがあるはずだった。彼は指先をスカートの中にわずかに差し込み、それ以上の関係をそれとなく彼女に示唆した。婚約者を亡くしたばかりの滝沢はどことなく崩れて何か残忍な影を持ち合わせ、作品を売ることとは別に、瑠璃のめがねに敵わないと言うわけでもなかった。 「作品はお気に召しまして?」 「ええ。それとここもなぜか気に入りそうで」 滝沢は瑠璃の下着に触れる。そして彼が作品を買うことを暗黙の条件として取引は成立した。 「部屋は押さえてありますよ」 彼は彼女の手を強く握る。 その日の内に彼は作品の代金を入金した。 夜には彼は彼女の肉体を入手した。 滝沢は高価な作品を購入して、十日後、デート商法の記事を週刊誌に掲載させた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」75

父親の死の真相と母親から捨てられたということが剛の精神にも混乱を招き、バー通いをして、酔っ払うようになる。酒に浸ることで頭上のぐちゃぐちゃを追い払う。ひりつく精神の中、「俺に一定以上近づかないでくれ」と理沙を遠ざけ始める。 しかし調査は予定通り進められた。彼は夫人と協力して、飛行機の中で滝沢と瑠璃が出会うように工作する。滝沢は瑠璃と同じファーストクラスに乗り、彼女に接触する。予定通り名刺を交換する。滝沢の名刺に刷られていた身分があまりに高いものだったので、もちろんまずそれが瑠璃の気を引くには十分だった。おまけに飛行機の中で通販主流の高級品ばかりを特集した雑誌を広げているところを彼はわざと瑠璃に見せる。あとは全く計画通りだった。ありきたりの差し障りのない会話を二人は機中で交わし、連絡先を交換してから別れた。 帰国後、瑠璃は早速その名刺から滝沢を例のごとく調査し、しばらくしてから彼のところへ店からパーティーの招待状が届いた。名門の店とあればそのパーティーは誰もが入れるというものでもなかった。入れる人物は限られていて、概ねはプライベートで招待状を持たずにはその門は狭くてくぐれなかった。 滝沢は瑠璃と再会し、徐々に親しくなっていった。次の段階へと進むにはそう難しくはなかった。それから彼女に作品を持ってこさせるように画策した。 「じゃあ、明日の午後二時にオフィスに作品を見せに来てください。お話ししましょう」 「承知いたしました」 彼女は少しずつ蜘蛛の巣に近づいていく。