ろまんくらぶ「仮面の天使」54
茉莉の父は健に近づく。 「とにかく1週間くらい入院させるから」 「わかりました」 「君には随分迷惑をかけたね。もう婚約は解消したんだし、娘を連れて帰ります。これ以上、君には迷惑をかけたくないから」 「やめて下さいよ、そういう言い方、おじさんらしくもない」 「でも」 「俺、彼女の意思を確認してないから何とも言えないけれど、本当はやはり結婚しようと思うから」 「え?でも婚約解消したいって」 「あれは少し気持ちを落ち着かせたかっただけ。自分でしっかり決めたかったから」 「でも娘のこんな状態では」 「俺が悪いんです」 「悪いって君は何も」 真二は今は何も父には告げるなと健に向かって目配せをする。 「もっと彼女を見てればよかった」 健は真二の目線に気づいて話の方向を少し変える。 「それは何も君のせいじゃ」 「でも、俺の婚約者なのに」 「でも君のご両親のこともあるし」 「だからそういうの、もう嫌なんですよ。結婚するのは俺と彼女だからふたりで決めたい」 一方、真二は姉の今の状況を整理するために、明日教授に直談判に行くつもりだった。 茉莉の父は初めて安心する。母はやれやれとどっと疲れが出てくる。真二は何食わぬ顔で口笛を吹いている。 朝ももう5時近くになっていた。