ろまんくらぶ「仮面の天使」53

玄関のチャイムが鳴るので、近所に迷惑にならないように健は静かにドアを開ける。茉莉の両親が迎えに来た。

「娘は?」

「寝ています」

「申し訳ないホントに」

「いえ、それより見てあげて下さい」

両親は音を立てないように寝室に入る。健はお湯を沸かすとお茶を入れる。彼女の母はマンションがグチャグチャになっているので、びっくりすると言葉に詰まる。娘の様子を見て、状態がひどいのでたじろぐ。ただあまりぐずぐずしたくなかったため、手際良く娘の化粧を落とす。化粧の落ちた茉莉の顔は童顔で、子供みたいだった。

「どうなの?」

「今は大丈夫。落ち着いているから」

「そう」

「でもさっきは本当に大変だったよ」

息子の説明に母はオロオロする。

「どんな?」

「俺、ホント、ねえちゃん気が狂ったのかって思った。すごい暴言吐いてたし。何だか恥ずかしくて」

母は大きなため息を吐く。もし見ていたら卒倒していたかも知れなかった。父は真二から大体の説明を聞くと入院させることに決める。数日から一週間様子を見ることにする。

「看護師さん達にはどう説明する?」

「どうしようか。まあ、何とでもなるだろう」

「分かった」

真二と父は何やらぶつぶつと話し合っていた。健はお茶を持って戻ってくる。居間が大変なことになっているけれど、それは諦めるしかなかった。一通り話が済むと真二は健の側に来てさっきの続きを説明する。

「とにかく仕事ばかりじゃなくて、少しはねえちゃんのことかまわないと、誤解も生まれやすくなるよ」

「分かった。気をつける」

「でないと気分が不安定になりやすくなるから」

「オッケー。何だかお前が年上みたいだね」

ふと見ると、彼女の両親が居間を片付けている。こんな夜にふうふう言いながら体を動かしている。

「あ、もういいです。もう休んで下さい。あとは私が片付けますから」

健は両親と真二を休ませる。 

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