そうして娘が気を許し、目を離した隙に解錠された金庫の中を見るために、今度は娘が不在の時にオフィスを訪れればいいだけだった。それは簡単なことだった。足繁く通ううちに、娘が不在の時があることに気づき、その時間帯を狙って訪問し、彼女を待つふりをしながらオフィスで作業をすれば良かった。幸い受付係のいる席とオフィスは少し離れた場所にあった。間には応接室もあった。 金庫の問題がほぼ解決したと同時に理沙との関係はますますこじれていく。電話をしても繋がらないし、剛自身メッセージを残すもの気がひけた。今はこのまま放っておくしかないとはいえ、瑠璃とのキスシーンを見られたかもしれないのに、何で理沙は全く反応を示さないのだろうか。反応のなさが彼にとっては冷たさとして突き刺さってきていた。そして、 「彼女は俺に本当に気持ちがないのか」 という当たり前の感情が彼の中に起こり、それが起こったことに彼自身が戸惑っていた。今まで自身を冷たいと思っていた彼は、それ以上に「冷たい」と思われる、理沙の反応に驚いていた。彼女は表面は柔らかく優しげだが、内側には何処か違う何かを隠していた。 ただ、今はそんなことは言ってはいられない。それにかまってはいられなかった。 剛の恐怖や動揺はアメリカの同僚を通して夫人にすでに伝わっていた。夫人はそして、それでいいと考えていた。 事件の答えは彼の動揺の中に、動揺の奥底に眠っていた。