ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」49

 もちろん瑠璃とてひとりの女なのだから、剛に全く興味がないわけでもなかったが、彼女の動物的な勘がその男が別に本気なのではないと告げていた。生まれながらに財宝に囲まれて育った娘の、男に関する嗅覚はその点では優れていた。相手が財産に興味があるのかないのかということも分かっていた。ただ、彼女は、自身の心のことは恐らくあまり分かってはいなかったのかもしれない。

彼女が作品の説明を終えて、化粧室へ行ったその一瞬の隙をついて、剛は金庫の場所を探した。そして娘が机の上に置いたこのオフィスの鍵束のの中から金庫の鍵を捜し出し、金庫を解錠して置いた。金庫にある古い台帳が目的だった。金庫は誰の関心も引いていないようで、少し錆び付いていて、鍵がなかなか入らなかった。これで別の機会にいつでも中身を見ることができる。

その晩、剛は理沙からの電話を待った。さすがに普通なら、何か言ってくるだろうと思った。でも夜中の二時を過ぎても彼女からの連絡はなかった。彼はさすがに痺れを切らして自分から電話を手に取る。

「もしもし、俺だけど、寝てた?」

「起きてたけど、もう、寝ようかと」

「さっきのことだけど」

言われて理沙は口を閉ざす。沈黙の中に彼女の痛みが見え隠れしていたが

「別に、どうでもいいって、言ったよね」

という言葉が、すぐに真実を覆い隠す。

「寝るから、じゃ」

そう告げると彼女は彼に一瞬の隙も与えずに電話を切る。切られた電話の通信音を聞きながら、剛には、彼女のその硬さが自分のことのように感じられて、言いようのない激しい痛みを覚える。その硬さは、まるで何かを遮断するかのように彼女の表面に時々姿を現す。

そしてそれは彼の中にもあったために、彼はそれを感じ取ることができた。

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