ろまんくらぶ「仮面の天使」93
それでも京子と智子はその彼のことを詮索する。
「わりとカッコイイ」
「ね」
「茉莉ったらじっと見てたじゃん」
「あー、うーん」
周りがけしかけそうになると逆に引き気味になる茉莉。何だか今は恋愛に積極的になる気になれない。友人2人はそんな茉莉の気分に気づいてはいないようで、興味津々で彼を観察している。
「あれ?茉莉は?」
「ほんと、えーっと」
茉莉は2人の側を離れ、フロアーから出るとバーへ向かう。
「何にします?」
「うーんと、ボンベイ、ソーダ割り。強くして」
「いんですか、そんなに飲んで」
「いいのいいの。こう見えて」
「わりと強い」
「そ。わかる?強くなったの」
ベビーフェイスの彼女は頬がほんのり色づく程度にしか酔ってはいない。
「お待ちどうさま」
「ありがと。あと、何か軽く食べるものある?」
「ミックスナッツ、クラッカーチーズ、、」
「あ、それ、クラッカーチーズ。ちょっと小腹が空いてきたの」
「かしこまり」
バーテンダーは手早くチーズをスライスするとナチュラルクラッカーを添えて茉莉の前に出す。
「席にお持ちしましょうか?」
「いい。ここで食べる」
彼女は席に戻ると京子や智子と男の話をする羽目になりそうで、バーのカウンターでクラッカーをつまみ始める。そこにさっきの物憂げな彼がやってくる。
「お客さん、テキーラもう飲んじゃったんですか?」
「まあね。俺強いんだ。っていうか相手がすごい飲んじゃって。水くれる?」
「かしこまりました」
「それと、、、あ、俺もコレ、クラッカーとチーズの」
「トルティーヤもありますよ?」
「いんや、このクラッカーとチーズの」
「かしこまりました」
そこで男は茉莉に話しかけてくる」
「さっき踊ってたよね」
「まあね」
茉莉は少し面倒くさそうに答える。バーテンダーは2人の距離を縮めようとわざとチーズをゆっくりと切る。こういう男女の出会いは側で見ていて悪くはないと勝手に思っていた。男は突然、名刺を差し出す。
「ミュージシャン?」
「ちょっと違う。コンポーザー。作曲してる」
「そうなんだ」
「よかったら今度聴きに来ない?」
彼はチラシを差し出す。なーんだ宣伝か、と茉莉が言い出す前に、彼は招待券を3枚渡そうとする。
「3人で来てよ」
「え?見てたの?」
「まあね。なんかちょっと目立ってるよ、君たち」
「あ、そっか、ありがとう。コレいいのかな」
「いいんだ。よかったら来てよ」
「ありがとう、、」
茉莉はチケットを受け取る。
「じゃ」
彼はクラッカーチーズの皿と水を手に持つとスマートに立ち去る。茉莉は彼に少し興味を持ち始める。
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