ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」89
豪奢なその白い邸宅の前に黒いベンツが横付けされる。長い黒のドレスに身を包んだ夫人が静かに降りてくる。助手席からは案内を任されていた剛が降りてくる。やっとここまで辿り着いた。第二次世界大戦の、ある家庭での終着点がここにあった。家に代々伝わるもの。オークションで高値がつくはずもない、ただ歴史と犠牲になった者の血だけがまとわりついている宝。
白い邸宅を背景にすると夫人と剛は黒づくめの判決を言い渡すために来訪した使者の様でもあった。
「Finally...」
一言それだけを告げると夫人は静かに歩き出す。彼女の胸の中では様々な残像が去来していた。戦火の赤い色が見え隠れするような気がしていた。
彼も彼女に続き静かに歩き出す。銃は警察に返却したとしても、もちろん丸腰ではなかった。周防夫人の狡猾さと残忍さを考えるとアメリカからきた夫人が最後まで安全に作品を受け取れるよう配慮しなければならなかった。
玄関のブザーを押す。ドアは直ぐに開かれた。中からは濃紺の制服を纏った執事らしき人間が表情もなく出てきて、剛と夫人を出迎えた。
「どうぞこちらへ」
蝋人形のような姿をした執事はひらりと身を翻すと二人を屋敷の奥へ奥へと案内する。薄暗い廊下は何かの終焉を著しているようだった。
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