ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」64

 帰る途中、車内で剛は真剣な口調で話し出す。

「あの会社は辞めた方がいい」

「どうして?」

「あの中に、殺人の」

「犯人がいるってこと?」

「そういうこと」

「でも、、、仕事」

「とにかく、しばらく休めよ、仕事は」

「でも家賃とか生活費とか」

理沙は心細そうにつぶやく。

「俺のところに引っ越してくればいい。安心して暮らせる」

「え?だって、安心って、問題持ち込んだのそっち」

「それは違うよ。元々あの店には問題が山積みだよ」

「それは、、、そうだけど」

「俺の家は広いし、部屋は余ってるし、いつでもオーケーだよ」

「でも、いつも冷蔵庫は空だし、食べるもの何もないし。作ってないでしょ」

「適当に買えばいいよ。生活費は当面、俺が持つから」

「でも、仕事したい」

「翻訳はできるんだろう?」

「それは、まあ」

「頼みたい仕事はあるから、、。とにかくあの会社はいずれおかしくなるから、今のうちに逃げたほうがいいんじゃないかな」

「何もかもお見通し、ってわけかな」

「ずっと調査してるからね、それは」

「人事のことも知ってるよね。色々と」

「まあね。日本的な嫌がらせとか、背面監視とか」

言われて理沙は黙り込む。

「隣の席のやつも同じだろう?連中は一蓮托生だな」

「えっと、いい人だと思うけど」

「いい人間なんて、あの会社にはもういないと思ったほうがいい」

「でも、きちんとしてる人だと」

「上に忠実なことと、人間としてのモラルを持っていることは別物だ」

「それは、そうだけど」

「君はナイーブだよ。簡単に人を信用するな」

言ってから剛は自身も彼女のそういうところを利用したことを思い出す。彼女の彼を見つめる目には何か非難の色が感じられた。理沙はひどく疲れてきていた。


そしてベンツが店の正面に横付けされることはもうないのだろうか。夕日に輝いていた、銀色のあの車体。優雅なドレスに身を包んでいた華々が今まさに闇に沈んで消え去ろうとしていた。

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