ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」37

 口をもぐもぐと動かしながら理沙は何気なく質問する。

「朝とか、何を食べてるの?」

「目玉焼きとトースト」

本当の生活圏の部屋には大きなオーブントースターと電気調理器やコーヒーメーカーがあるから、それで簡単なものは大体できるとは言わない。

「そんだけ?家で料理はしないじゃなかったっけ」

彼女のその問いに、心の中でしまったと思う。相手の顔がまた変だなあという表情に変わる。彼女のこういうところは注意しないと色々と厄介なことになりそうだった。

「まあね」

「変なの。まるでお金のない人の普通の朝食」

「そういうわけでもないよ」

「え〜?なんだか変だよ。もっと食べたら?カフェで食べてるの?誰か人雇って作ってもらったら。お金持ちなら普通はそうしてる。うちの社長もそうしてる。よくケータリングとかも頼んでるみたいだし」

「いや、、、めんどくさいんだ。そういうの」

余計な他人を家には入れられないとはまさか話せない。

「ええー?あんな立派なキッチンと冷蔵庫があるのに?」

「めんどくさい。殆ど家では食べないから」

「仕事のせい?」

「それも、、、ある」

「まあ、疲れそうだし、その、仕事」

「君はどうしてるの?」

「うーん、、、サラダ、トースト、バター、ジャム、チーズ、ベーコン、スクランブルエッグ、カフェオレ、ヨーグルト」

「朝から、すごいね」

「時々サボるけど、仕事忙しいから、ね」

それから結局、その晩は理沙は剛の家へ泊まる羽目になり、朝を迎えた。

彼女が帰った翌日の夕方、ぶらりと家を出た時に、剛は偶然にもひっそりとしたバーを近くに見つける。客が少なく、バーテンが二人で静かに仕事をしていた。薄暗く、しかし磨かれた床が、どこかヨーロッパ風でありながら、日本風の空気も作り出していた。カウンターの奥に座り、ボンベイの水割りを口にする。青白い瓶から透明な液体が、大きな氷の塊を抱き込むようにグラスに満たされる。

一体、何時頃から、何故この酒を飲むようになったのか、それを思い出すことができない。アメリカでごく若い時にそれを頼むようになって、彼はバーテンダーに時折、なんでボンベイなんだという顔をされたのを覚えているばかりだった。

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