ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」57

理沙が警察に行かなかったのは多少調査の助けにはなった。これで問題の一つはなんとか解決することができた。しかしそれが剛の精神状態を改善させるのには全く役立たなかった。何かがヒタヒタと彼の魂に近づいてきていた。

その影から逃れるように彼は度々あまり人気のないひっそりとした古いバーで深酒をするようになる。いつも決まってボンベイをオーダーしていた。酔い潰れながら事件の真相に近づきつつあることをどこかで意識していた。

そして店から出ると繁華街の夜が待っていた。しかしそこは徐々に空洞になっていった。ある場所はリニューアルされ活況を取り戻したが、ある種の盛場は人気も無くなっていった。かってバーには銀行家がたくさん来たものだとある店の主人はこぼしていた。バブルが崩壊した後は彼等は殆ど寄り付かなくなった。住むところすらない人々が増え、毎年厳冬に耐えかねて息を引き取っても小さなニュースになるだけだった。煌びやかな表の裏の、崩れていく世界、これが日本の現実だった。階段を下りたところにあるバーのマスターもこう語った。

「平日はさっぱり人が来なくなりましてね、、。昔は良かったんですけどね。多くの人々が来てくれて、、。そんな時代も終わったんですかね。今は金曜日位でしょうか。まあ、土日は会社がお休みなので、夜は皆さんさっさとお帰りになって店には来ないんですよ。ホラ、宅飲みってんですか、それですよ」


目に見えない「真実」に近づくほどに剛の体調は何故だか悪くなっていき、アメリカの同僚の調査官にも指摘される。

「剛、あなたも何かあるんじゃないのかしら?この間からどうもやっぱり調子がおかしいようだわ」

「何故わかる?」

「眠れないようなことを言っていたし、通信文には大きな感情の乱れがあるからよ。文章が時々長くて冗長で歯切れが悪いわ」

そう言われて、この頃、髭を剃るのも億劫になってきているのが分かる。鏡を見ても眉間にしわが寄っている。今まで過去にこんなことは一度もなかった。いつもは、真実の匂いが清々しささえ 感じさせてくれた。

それが何故、今回に限って、、。

コメント

このブログの人気の投稿

ろまんくらぶ「仮面の天使」81

ろまんくらぶ「仮面の天使」78

ろまんくらぶ「仮面の天使」83