ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」43
話を聞いた社員がいずれ何か企むに違いなかった。それなりに評判がいいにもかかわらず、滅多に人物を元にした造形は行わない亜由美の、そのめがねにかなったとあれば、価値が上がるだろうことは予測された。だから彼女に作品を作らせて、野上剛に購入させるという腹づもりになる。
亜由美がその場を離れる時、しかし、彼女は野上剛が彼女を見ているのに気付いた。その視線を避けるように彼女は足早にその場を立ち去る。何かを感じ取ったのか、剛はその男へゆっくりと近づいて行く。
「野上様、いつもおいでいただいてありがとうございます」
「こんばんは。盛況ですね」
「ええ。今、ちょうどあなたのお話をしていたところですよ」
「私の?」
剛の目が鋭く光る。
「ええ、あちらの先生ですが」
男はすでに店の戸口に手を掛けている女性の背中を指差す。体調が思わしくないのを口実に彼女は逃げるように去って行く。
「彼女、山野先生が、あなたをモデルになさりたいとおっしゃってまして」
「私を?」
「ええ、非常に珍しいことなのですが、気に入られたようで」
「それは、また、どうしてですか?」
「さあ、私も、そこまではお聞きできなくて。でも、いい機会ですから、ぜひ」
社員はそこでセールストークに入り、剛にしきりとモデルになることを勧める。剛はそんなことには全く興味がなかったので、適当に相槌をうちながら、その時は話を上の空で聞いていた。
一方、剛が瑠璃に近づく様子を店で見せてから、理沙と彼の関係は表面上は何の変化もなかったが、その裏でお互いに相手に対する苛立ちが募っていった。彼女からよくよく見ると彼はいつも何かから逃げているような気がしてきていた。だからそういう相手とはもしかして多少距離を保つ事がいいように彼女には思われた。
そんな彼女の距離の取り方に彼はイライラしてきた。
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