ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」45
興味の方向が調査からずれたことに剛は焦りを感じつつも分析を続ける。理沙の周辺からは重要な情報は全く拾うことができない。つまり彼女は「あの」事件とは無関係なのだ。それはもちろん彼女の入社年月日からも容易にうかがう事ができるし、会社での彼女の位置からすると、周防家の秘密を知るような立場にはいない。日常の彼女の仕事内容は翻訳等が主なもので、売買には殆ど関わっていはいないようだ。そんなわけで彼女の周辺からは彼女のプライベートなことしか分からない。
例えば剛の家に来た時、テレビで巨大クラゲを見ていたりして「ゲローイ」とかそういう言い方をしている。あるいは大抵は漫才やコントを見ていたり、流行りの貧乏番組を見ていたりしてゲラゲラ笑っていたりする。彼女は一見ちょっとばかっぽい女なのだった。そんな彼女の一番のお気に入りは、あのミスタービーンらしかった。
それでも時々彼女が同僚や会社を非難することがある。彼女が特にイライライしていたのは、ある部分アメリカを模倣してドライなビジネスを展開しながら、その一方で古くからある湿った日本的な仕事の運び方から抜け出すことができないことだった。グローバル化を目指しながらもそれとは全く反対の人間達で、海外の作家の作品を扱いながらも外国人の対応からは逃げ回っていることだった。
従業員は寝ずに働いている者もいるが、周防家の連中は年がら年中バカンスに出かけている。彼等の浪費は留まるところを知らず、社長は身だしなみとヘルシーになることだけに精進している。
その間、会社は不況の波の中で溺れそうになっている。
調査は相変わらず、何の手がかりも得られず、千々として進まなかったが、観察を続けていくうちに、二、三人の古い営業マンがある意味で組織を動かしていることに剛は気付く。その中には社長に対して指図する者がいた。その人物は他の多くの従業員がいないところで、そういう態度をとっているらしかった。それをはっきりとわかっているのは、社長一族と立ち聞きしていた剛くらいなものだった。
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