ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」69

剛のその変化を理沙は敏感に感じ取っていたが、理由は全く検討がつかなかった。捜査のことなのかどうかも不明なままだった。彼女は彼を冷静な視線でじっと見ているしかなかった。出会った当初の頃、彼と間近で初めて接した時に感じたある種の「暴力性」が、徐々にはっきりした形を取り始めていた。彼の瞳の中に、何か残酷で、野蛮なものがちらつく。そこから言い知れないゾッとするような、まるで回避しても仕切れないというような哀しみと孤独の影が染み出してきていた。今までの彼の表面からは想像もつかない精神の何か別の場所から生じているかのような、あるいは本人の意識の最も深い場所から生じているかのような孤独だった。


入手した資料を剛は豊に提示しながら説明する。

「写真はこれだ。すぐわかる顔だ。憎んでいる周防社長の娘だ。知っているか?」

「少しだけ知っている」

「よく覚えておいた方がいい。服装はブランド物を身につけていて派手な女だから」

「分かった」

「不自然ではない方法で近づけ。飛行機は狭いし、接触のチャンスは多い。アメリカの知人に頼んでファーストクラスの彼女のすぐ側の通路を隔てた席を予約してある。会話のきっかけは、、、これだ」

「ファイブワールド。世界を股にかけて仕事をする富裕層向けの雑誌だ。アディクタム、セブンマネーなどの様な」

「書店では見かけない」

「通販が主流だから」

「これをどう使えば?」

「例えば、この雑誌で見た周防さんですか?とか」

「なるほど、、」

「そうすれば、相手はあなたのこともこういう雑誌を読む階層の人間だと認識する。後は俺の指示した様な服装や所作を心がけていれば相手はあなたに興味を持つだろう。それで後はいかに裕福なのかを印象づければいいだけだ。要するに高額な美術品、宝石を購入する意思があるというように」

「古美術や宝飾品の趣味があるとか」

「そうだ。仕事柄、あなたはその手の知識は豊富だろうから」

「そうだけれど、宝石はあまり詳しくはない」

彼は死んだ婚約者のことを思い出す。彼女は希少な石に詳しかった。

「とにかく、チャンスは掴まないと」

「そうだな、、」

「相手は何はともあれ作品を売りたがっているから、あなたはいいカモに見えるだろう。場合によっては積極的に近づいてくるだろうから。それから名刺交換でもその場でしておけばいい」

「それだけか?」

「そうだ。後はこちらから積極的に出る必要は全くない。向こうがアプローチしてくる。特にあなたの会社を調べた後は」

「調べるのか?」

「調べるさ。名刺からあなたの資産や経済状態まで。ついでに結婚しているとかそういったこともな、、。今まで準備したことがここで役に立つ。相手は情報を確かめた後に食らいついてくる。向こうから仕掛けてくる」

「どうしてそう言い切れる?」

聞かれて剛は苦笑いする。

「私に対してそうだったから。しつこいくらいに」

そう話す剛の声は何か薄気味悪い物でも見たようなトーンを帯びていた。

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