ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」58
「一度、精神科医に診てもらった方が」
促されて剛ははっきり答える。
「俺には何もない。トラウマもない。第一日本語での鑑定なんて俺には必要ない。俺には特別引っかかるような記憶もない」
「どうしてそうはっきりと分かるのかな」
「もう、実は、診てもらったことがある。とっくの昔に。まだ、思春期の頃に。退行催眠も行った。何も、全く何も出てはこない。何かの、記憶の欠片でも出てくれば話は別だけど」
「そう。それじゃ、コーヒーの取り過ぎは?この間も言ったけど、問題があるとすぐに分量が増えるとか何とか、、」
「かもしれない」
「いつも言うけどカフェインは中毒性があるから」
「分かっている」
「滞在状況はどうなの?」
「大丈夫だが、ただ」
「ただ?」
「この事件は思っていたよりも根が深い。それに」
「それに?」
「いや、大したことじゃない。その、プライベートなことだから」
「女?あなたの身分を打ち明けた相手のこと?」
「まあ、そうだ」
「本気になった?」
「かもしれない。俺自身よくわからない」
「それは仕方ないわ。私もそうだったから」
「そうだな」
「彼女は日本国籍ね」
「ああ」
「どうするの?」
「まだ、決めてない」
「私は、アメリカに連れて帰ってきたけど」
「アメリカに、、、か」
「そうすればいいんじゃない?相手がよければ」
「そうだな」
「ま、あなたが、自分で決めることよ」
「まあな」
「私達だって人間だから」
「愛することもあるってわけか」
「当たり前のことよ」
その当たり前のことが剛には今までできなかったのかもしれない。そのことを同僚には言えなかったものの、問題の一部を同僚が理解していることに多少ほっとする。
「ありがとう、色々」
「ヌッセンバウムに言伝は?」
「いや、今日はない。メールした報告書を渡しておいてくれ。進展無し、さ」
「了解」
切れたツーツーという通信音がどこか二国間の距離を思い知らせていた。
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