ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」59
剛は調査の進展がないことに対する苛立ちが募り、それを誤魔化すように六本木の派手なクラブに足を運んだりしていた。夜の豪奢な街を象徴する、鱗粉で飾り立てたような店や、肉の欲望で艶光りしているレストランにも通った。淫猥な内装のフレンチレストランでは、毎夜爛れた関係の男女が高価なワインに溺れていた。行き着く先は崩れかけた高層ホテルのスイートあたりだろう。そこでどんな夜を過ごすのか、そんなことは剛の知ったことではなかった。バブルの崩れたこの国で、消えた泡をもう一度その手に掴もうと、よじれた夢の欠片を拾い集める男と女が蠢いていた。
そんな光景を目の当たりにしていると、なんだか飲まずにはいられなかった。酔い潰れ理沙の家に転がり込むことも増えていった。
彼女の仕事が翌日ない場合は、昼近くにベッドから這い出て、二人で近所のスーパーまで買い物にいった。それがまるで普通のカップルのようだったので、彼はよく苦笑いをしていた。その態度にはどこか皮肉っぽいところがチラチラと見え隠れしていた。
「Oh shit!」
「Quoi?」
「何だ、その鶏の鳴き声みたいな言葉は」
「えー、だから、くそっとか言ったじゃん。だから、何?とかって意味だけど。What?みたいな。で、何?」
「肉が小さい、薄い、美味しくなさそう」
肉が並べてあるスーパーの陳列棚を見ながら、彼はいつものようにぶつくさ文句を並べる。
「うーん、小さいのも、薄いのも認めるけど、別に不味くはないし」
「えー?どうなのかな」
「違うよ。肉好きのフランス人が、美味い!という肉だってあるんだから」
「奴らは、また考えが違うから。どうせ、霜降りだろ?」
「それは、そうだけど」
「俺の食いたいのはそういう肉じゃない。赤身の目の詰まった分厚い肉だ」
「あー、うーん、、、そう」
言われても理沙は大抵相手にしていない。郷に入ったら郷に従えとでも言わんばかりだった。彼女自身、帰国してから色々あったせいで、どこか諦めムードだった。日本ではワインもコーヒーもパンも確かに違う味がする。それは海外で入手できる「日本米」と称するものが違う味がするのと一緒だった。日本とは水の種類も違うから、現地の水で炊いたらたまにより奇妙な味になる。
時間があれば、彼女は巨大なアメリカンマーケットやヨーロッパから出店してきているマーケットに彼を連れて行く。そういった場所には彼の好きそうな「分厚くて大きな赤い肉」もあった。
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