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ろまんくらぶ「仮面の天使」62

「これ、教授が姉ちゃんのために借りたマンションの鍵。引越しオッケーだって、どうぞ連れて帰ってくださいって」 「え?」 「ただの人だったよ。後悔の念で苦しんじゃって」 「、、、」 「姉ちゃんとはほとんど関係してないってさ」 「、、、」 「安心した?今そういう顔してた」 「じゃ、あの男は?」 「ああ、彼等はホント半分はボディガードみたい」 「でも1人馴れ馴れしいのがいた気がするけど」 「それもボディガードみたいだけどね」 「そうなんだ」 「安心した?」 「まあね。でもお酒がすごいから」 「その事は教授は知らないみたい。姉の自由にさせてたみたいだから」 「そっか」 「今日これからマンションへ行くから。教授が管理人に電話してくれた」 「何て?」 「管理人には姉は教授の姪っ子だって言ってあるみたい。で、友達ができて引っ越しの手伝いに来るとか何とか」 「なるほど」 「だからこれから行けば色々とわかるでしょ?」 「分かった」 「じゃあ、コーヒー飲んだら行こう」 「オッケー」 喫茶店で2人は一休みすると茉莉のマンションへ向かう。外観から見ると何だかスゴイ建物だった。

ろまんくらぶ「仮面の天使」61

病院を出ると真二は教授に直接会って事情を話すために大学へ向かう。毅は近所の喫茶店で待っていることにした。教授はといえば、茉莉と付き合い始めてから、彼女が人が変わってしまったようになったのに驚いていて、罪の意識でいっぱいだった。だから、色々と彼女の面倒をみたりしていた。教授は自分が彼女をだめにしたと後悔の念でいっぱいだった。 「じゃあ、別れてくれますか?」 真二の問いかけに、教授はあっさりと承知すると、茉莉のマンションの鍵を真二に渡す。真二はついでに姉の将来のことまで約束させる。教授は何でもするからと、真二の将来のことまで約束する。 「まあ、私は本当にすまないことをした。必ず、償いはするから」 教授はしょんぼりしている。 あっさりと話が終わったので、真二は狐につままれた感じになる。かなり年配の教授はそう悪い人間でもなかった。真二はそれを両親に話す。親たちは最初、どうやって教授を追い払おうか考えていたが、ことが丸く収まったので少し安心する。 真二は健の待っている喫茶店に向かう。 「待った?」 「で、どうだった?」 「まあまあ。あ、コーヒー」 「かしこまりました」 真二は健に鍵を差し出す。

ろまんくらぶ「仮面の天使」60

 茉莉が病室に入ると母親が待っていた。彼女は茉莉を黙って見つめる。 「ごめんなさい、わたし」 「もういいから休みなさい」 「ねえ、私の症状って大変なの?」 「大変って、、」 真二が嘘を吐いたのかと母は思う。看護師が入ってくると検査の日程表と薬を置いていく。続いて真二が入って来ると母親を病室の外へ呼ぶ。 「これから教授に会って、詳しく事情を聞いて来るから」 「お前、そんなことして大学で睨まれないの?」 「いんや。昨日教授に電話したら、話したいことがあるからぜひ来てくれって。いつこっちから連絡があるのか待っていたんだって」 「え?」 「だから行って来るから心配しないでよ」 「分かったわ」 真二は健の待っている車へと向かう。母親は真二の後ろ姿を見送って彼が随分しっかりしてきたと安心する。 それにつけても心配なのは娘の茉莉のことだった。

ろまんくらぶ「仮面の天使」59

 寝室では茉莉がごそごそと着替える音がして、しばらくすると彼女が出てくる。 「あの、化粧したいんだけど」 「しなくていい。病院着いたらすぐ検査だから。顔だけ洗って」 真二は姉に指示する。 「はい」 意外にも彼女は素直だった。とぼとぼと洗面所へ向かう。何だか大人しい。真二はまるで親のような口をきく。 「今の内に病院へすぐ連れてくから。途中まで一緒に着いてきて。何があるかわからないから」 健にも指示する。 「分かった」 支度をすると健は戸締りをする。日曜日だから仕事のことは考えなくてもよかった。しばらくすると茉莉はまたとぼとぼと洗面所から出てくる。 「あの、お腹空いた」 「まず検査するから。そしたらご飯出るので」 「はい」 茉莉は健を見ない。彼はしょんぼりするが、とにかくそれよりも彼女の容体が心配だった。真二は少しほっとする。姉が暴れないので安心する。健は後ろから2人について行く。真二は車を健に運転させ、後部座席に茉莉と2人で乗る。彼女の体をしっかりとおさえておく。彼女は終始静かで車は無事に病院へ着く。入口で看護師が待っている。 「早くこちらへ」 「ごめんなさい」 看護師に促されて茉莉もやっと事の重大さに気づく。茉莉を病院へ入れると、真二は健のところへ戻ってくる。 「少し待てる?俺これから教授のところへ行くから。できたら一緒に来て欲しい」 「いや、それは、、、車の中か近くの喫茶店で待っているよ。申し訳ない」 健は教授に会うのは少し怖かった。

ろまんくらぶ「仮面の天使」58

茉莉はくるりと窓へ顔を向ける。 「いいもん、私、もうどうなったって」 「いいの?周りのみんなはすごく苦しむよ?」 言われて彼女は悩み始める。そしてくるりと真二へ顔を向ける。 「よくない」 「でしょ?だから、病院で検査して」 「みんな怒ってるよ」 「怒ってないよ。入院させようと待ってるから」 「入院ってどのくらい?」 「1週間から10日位。検査して、もし何かあったら大学病院へ連れてくって」 「そんなに?」 茉莉は真二の話にびくつく。健は真二の誘い方が上手いと感心する。 「分かった?じゃ、病院行くから服着替えて」 彼女は渋々承知する。 「それからあの人、どっかやって」 彼女は健を指差す。 「どっかってここ彼の家。彼がいなきゃ、ねーちゃん大変なことになってたんだよ。知ってる?」 「そんな大袈裟」 「記憶ないんでしょ」 「うん」 「昨日ね、キレたの覚えてないでしょ」 「え?」 「記憶ないでしょ。だから、で、ねーちゃん奴に電話したんだよ」 「え?電話したって」 「そ。酔っ払って苦し紛れに、奴に電話したんだよ」 真二は真顔で嘘を吐く。 「ねーちゃん、まだ彼を好きなんでしょ?白状したら?」 「、、、」 「いいけど支度して」 真二は行こうとして振り向く。 「言っとくけどおかしな真似しないでよ」 「はい」 寝室と居間の間の扉を閉めると真二は健にも支度するように告げる。それから病院へ電話する。 「うん。今から出るから。30分もすれば着くと思う」

ろまんくらぶ「仮面の天使」57

 茉莉はじーっと天井を見ている。 「ね、アレ何してんの?天井じっと見て」 健は真二に心配そうに疑問を投げかける。 「あー、アレは、状況の把握。ホラ、ココは何処?私はダレ?ってやつ」 2人はじっと彼女を見守る。彼女は天井を見たまま、何かを思い出そうとしているように見える。 「えーっと、あれ?思い出せない。えーっと、えーっと、いいや、起きようっと。アレ?ここどこ?」 彼女は自分が何処にいるのか気づくと、くるりと居間を見る。真二と健はびくびくする。 「あ、いる。おまけに真二まで。何で?」 彼女はぶつぶつ言っている。またくるりと天井に向く。 「えーっと、ここからどうやって、逃げ出そうかな。スーツは、、、えーっとハンガーにかかってる。鞄は居間にある、、、えーっと」 「ちょっとアレ、何してんの、さっきっから、あっち向いたり、こっち向いたり」 「さあ」 茉莉は鞄をどうやってあの2人のところから取るか、まさか荷物を残したままここから帰れないし、と思案していた。真二は彼女に近づく。健は離れて見ている。 「目え覚めた?」 「、、、」 「これから病院連れてくから」 「、、、」 「ホント病気になるから」 「病気って自分で検査してるから大丈夫でっす」 「精密検査した?」 「え?精密検査って?」 「ほっとくと大変なことになるかも」 「え?え」 真二は姉を少し脅かしてみる。とにかくまず病院へ連れて行こうと画策する。

ろまんくらぶ「仮面の天使」56

 健もシャワーをさっと浴びる。 「さてっと、どこで寝よっか」 少し考えると彼は客用布団を出し、音を立てないように、ゆっくりとそれを寝室へ入れ、茉莉の横までくる。とにかく彼女を静かに寝かせようと気を遣う。こうして見ると以前の彼女と変わらない。彼は彼女の寝顔を見ている内に安心すると、ぐっすりと眠る。彼は寝入る前に心の中で、ごめんね、を繰り返していた。 翌日、真二は教授と会う約束を取り付ける。見ると健は茉莉の横で床で寄り添うように眠っている。これで姉ちゃんのことを守ったつもりかしらんと思うと、真二はため息を吐く。 一方、気難しいことで有名な教授は意外にすんなりと面会を承諾する。真二には驚きだった。健は上と下と、隣の住人に遅くに音を立てたことを詫びて回る。真二は姉が起きるのを待つ。11時過ぎに、健と真二は簡単に食事を済ませる。とにかく彼女が興奮しないように注意しながら、病院へ運ばないとならない。茉莉は昼過ぎにやっと目を覚ます。 「あれ?えーっと、私、お酒いっぱい飲んで、それからどうしたっけ?えーっと覚えてないなあ」 健と真二は少しドキドキしてじっと茉莉の様子を見ている。

ろまんくらぶ「仮面の天使」55

茉莉の両親がマンションを出るのを確認すると真二は健に注意する。 「今は何があったのか言ったらダメだよ。それにねーちゃんだって悪いんだから。最初はあんたとその女性が何もなかったのに、よく確認もせずにあんなに疑って、、。だからとにかく一緒になっちゃえばいいんだよ。その内に頃合いを見て俺から両親に話しておくから」  「分かった」 「とにかくさっき言ったこと忘れないでよ。変に遠慮しないでよ」 健は頷く。頷きながらも本当はどうしたらいいのか不安だった。 「で、俺、どこで寝んの?」 「あ、奥にもうひとつ部屋があるから、そこにベッドもある」 「えー、このマンション広いね」 「だって、茉莉と一緒になるためにここ買ったんだし」 「そっかー」 「風呂入る?もう遅いから」 「オッケー。じゃ、風呂借りる」 健はその間に寝室を準備する。茉莉はすやすやと眠っている。明日彼女が暴れなければいいなあと彼は思った。風呂から出てくると真二はゲスト用のパジャマを借りる。サイズは少しゆとりがある位だった。 「じゃ、俺寝る。明日大変だから」 「明日って入院だろ?彼女」 怪訝そうな健。その彼に真二はキッパリと告げる。 「違う。俺、教授に会ってくる、明日」 「会ってくるって?」 「このままじゃ困るし、、、あんたも来る?」 「俺は、、、どうしたらいいのか分からない。相手が会う気なら」 「分かった。おやすみ。あ、ねーちゃん昼まで起きないから大丈夫。俺が先に起きて、あんたを起こしに行くから。8時に起きて教授に面会の約束とるから。で、11時位にはここを出て、病院へ運ぶから」 「分かった。おやすみ」 その夜、茉莉がやっと見つかったからなのか健はほっとしていた。

ろまんくらぶ「仮面の天使」54

茉莉の父は健に近づく。 「とにかく1週間くらい入院させるから」 「わかりました」 「君には随分迷惑をかけたね。もう婚約は解消したんだし、娘を連れて帰ります。これ以上、君には迷惑をかけたくないから」 「やめて下さいよ、そういう言い方、おじさんらしくもない」 「でも」 「俺、彼女の意思を確認してないから何とも言えないけれど、本当はやはり結婚しようと思うから」 「え?でも婚約解消したいって」 「あれは少し気持ちを落ち着かせたかっただけ。自分でしっかり決めたかったから」 「でも娘のこんな状態では」 「俺が悪いんです」 「悪いって君は何も」 真二は今は何も父には告げるなと健に向かって目配せをする。 「もっと彼女を見てればよかった」 健は真二の目線に気づいて話の方向を少し変える。 「それは何も君のせいじゃ」 「でも、俺の婚約者なのに」 「でも君のご両親のこともあるし」 「だからそういうの、もう嫌なんですよ。結婚するのは俺と彼女だからふたりで決めたい」 一方、真二は姉の今の状況を整理するために、明日教授に直談判に行くつもりだった。 茉莉の父は初めて安心する。母はやれやれとどっと疲れが出てくる。真二は何食わぬ顔で口笛を吹いている。 朝ももう5時近くになっていた。

ろまんくらぶ「仮面の天使」53

玄関のチャイムが鳴るので、近所に迷惑にならないように健は静かにドアを開ける。茉莉の両親が迎えに来た。 「娘は?」 「寝ています」 「申し訳ないホントに」 「いえ、それより見てあげて下さい」 両親は音を立てないように寝室に入る。健はお湯を沸かすとお茶を入れる。彼女の母はマンションがグチャグチャになっているので、びっくりすると言葉に詰まる。娘の様子を見て、状態がひどいのでたじろぐ。ただあまりぐずぐずしたくなかったため、手際良く娘の化粧を落とす。化粧の落ちた茉莉の顔は童顔で、子供みたいだった。 「どうなの?」 「今は大丈夫。落ち着いているから」 「そう」 「でもさっきは本当に大変だったよ」 息子の説明に母はオロオロする。 「どんな?」 「俺、ホント、ねえちゃん気が狂ったのかって思った。すごい暴言吐いてたし。何だか恥ずかしくて」 母は大きなため息を吐く。もし見ていたら卒倒していたかも知れなかった。父は真二から大体の説明を聞くと入院させることに決める。数日から一週間様子を見ることにする。 「看護師さん達にはどう説明する?」 「どうしようか。まあ、何とでもなるだろう」 「分かった」 真二と父は何やらぶつぶつと話し合っていた。健はお茶を持って戻ってくる。居間が大変なことになっているけれど、それは諦めるしかなかった。一通り話が済むと真二は健の側に来てさっきの続きを説明する。 「とにかく仕事ばかりじゃなくて、少しはねえちゃんのことかまわないと、誤解も生まれやすくなるよ」 「分かった。気をつける」 「でないと気分が不安定になりやすくなるから」 「オッケー。何だかお前が年上みたいだね」 ふと見ると、彼女の両親が居間を片付けている。こんな夜にふうふう言いながら体を動かしている。 「あ、もういいです。もう休んで下さい。あとは私が片付けますから」 健は両親と真二を休ませる。