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ろまんくらぶ「仮面の天使」28

「俺?俺は今ドラマってーか演技やってるけど、あとはバイトかなあ」 健は修二をそんなに嫌なやつではないと感じる。 「ちょっとさ、俺と来てくんない?」 「あ、でも俺、もしあんたと会ってこんな話してたこと亜紀にバレるとめっちゃやばいから」 「いいから。そうならない方法があるから」 健は修二をスタジオへ案内する。 「君さ、ドラマとか書ける?」 「俺?あ、まあ、基礎は習得してあるから少しなら」 「今どのくらい反響あるのかな。というか人気ある?」 「う〜んとまあぼちぼちかな。アングラだから。若い奴には結構気に入られているけど生々しくっていいって」 話を聞いて健は考え込む。 亜紀は健と修二が一緒にスタジオに入ってきたので仰天する。健は彼女に向かって冷たく強い口調で言い放つ。 「バレてるよ、全部」

ろまんくらぶ「仮面の天使」27

 修二は話を続ける。 「亜紀ってさ、そういう手管が上手いから。だいたいやつってちょっとボーイッシュで、さっぱりしてそうだから、俺も含めて男ってやつはすぐ彼女のこと信じてさ。だから大抵の彼氏って自分の付き合っている彼女のことやきもち焼きって勘違いする。実際には、亜紀が割り込んできて男取っちゃうんだけどね。でさ、割り込まれた女は大抵泣き寝入りでひどい目にあうんだよ」 「なんでそこまですんの?」 「ま、亜紀はすんげーエゴイストだから。そうやって彼氏乗り換えながら利用してのしあがってきたから」 健はそこでツッコミを入れる。 「で?君は?」 修二は知らず知らずの内に表情がちょっと真剣になる。 「俺は、、、俺は単なるチンピラ。だけど、その俺だけだよ、ずっと、その」 彼は少し頬を紅潮させる。 「その、、、ずっと愛してるからさ、俺は。何があってもやつがどんなにひどい人間でも、、、俺は側にいるから」 それを聞いて健は急に自分がこの目の前の男よりも下になった気がする。一見チンピラ風の修二は健よりもよっぽど女性の愛し方を知っているようだった。健は、茉莉をふって振り回し、婚約してたにも関わらず、またふって、、。彼は自分の愛がいかにも薄っぺらに感じてくる。 「で?君はどうしたいのこれから」 健は自分がこれからどう問題を解決するのかもはっきりしないまま、ただ修二が本当に望んでいることを探り出そうとする。

ろまんくらぶ「仮面の天使」26

そうこうしている内に、健は亜紀の周辺に以前見かけた、彼女の前の男、修二がうろついているのに気づく。一回は健と亜紀が帰ろうとしていた時にやってくる。亜紀は悪態をつき 「ほっといて行きましょ」 と冷たくあしらう。その修二を健は別の時に、スタジオの外で見かけると捕まえる。最初、修二は逃げようとしたが、どうやら健が自分を敵視しているわけではないことに気づき、健の目配せに応じる。2人はスタジオから少し離れたところにあるカフェに入る。飲み物を頼むと健は修二に尋ねる。 「あのさ、あんたなんでウロウロしてんの?亜紀と付き合っていたけれど別れたって聞いたけれど、ぶっちゃけどうなの?」 「え〜。そ〜だけどさ。亜紀のやつまた俺に電話してきたし、それに」 修二は亜紀に対して半分腹が立っていたので彼女の意思を無視して喋り始める。 「彼女、あんたと結婚したら、また俺とより戻すって言ってたからさ」 「え?より戻すって、、」 「だから、あんたは亜紀に利用されてんの。家持ってるし、経営者だし。ほら、俺とは遊び仲間だし」 「つまり?」 「騙されてんの最初から。だからその」 実際、修二は亜紀にかなり入れ込んでいたので健と彼女の関係を壊しにかかる。健にはだいぶ事情がわかってきていた。わかると同時にすぐ茉莉に合わないとと強く感じる。でないと彼女に完全に逃げられる。 「あんたのその茉莉っていう婚約者」 「彼女が何か?」 「だからさ、彼女、亜紀に挑発でもされたんじゃないの?わざと」 「一体、、、いつ?」 「え?あんた気づいてないんだ」 「、、、」 「だからさ、亜紀のいつもの手だよ。目的の男には友人っぽいフリをして近づき、その男に女がいたら、その女にだけわかるように嫌がらせしたり、見せつけたり、、、女の前でその男の体触ったり、意味ありげににやにやしたり、わざと一緒に仕事で遅くなったり 、、、もっと色々あるよ」 口を開き始めると修二は、我慢していたのか亜紀の手口をペラペラと喋り始める。彼の話を聞いていた健はそんなことがあっただろうかと記憶を必死になってたぐる。

ろまんくらぶ「仮面の天使」25

健は会話の一部始終を聞いていた。彼は自分の耳を疑い、飲み物の缶を思わず落としそうになる。 ただ亜紀の今の言葉がまだ信じられないので、わざとドアをノックしてスタジオに入る。普通なら押せば開くのだからノックはしていない。 亜紀は少しびくつくと、わざとらしくフレンドリーな感じで 「じゃあね〜」 と言って電話を切る。健は頭の中がぐらぐらしてきていたものの、なるべく何気なさを装う。亜紀は仕事に戻り、彼は彼女に気づかれないように外部へ繋がるマイクのスイッチを肘で切る。彼女はまさか彼に全部聞かれたとは思っていない。彼は冷静さを取り戻し状況を判断する。ホントなのなら、この女はきっと尻尾を出す。 健は茉莉に対していきなり後悔の念が噴き出してくる。そうなると茉莉が健と離れようとしていることが意識に強く昇ってきて動揺する。 それから彼はじっくりと亜紀を観察し始める。確かに彼女は表面的には彼にとても親切だった。彼は 「じゃあ、俺はこの女にまんまと騙されて、、」 それで茉莉を結局誤解から遠ざけたというわけかと理解する。茉莉からはこの頃電話も全くかかって来なくなった。もう少しすれば離れてから1年経つ。確か彼女は1年待ってくれと言っていた。茉莉は健から本当に離れる心づもりだと彼は深く受け止める。 一方の茉莉はだんだんと荒れてきていた。彼女の父親がなんとなく荒れていた時期と感じが重なってきた。

ろまんくらぶ「仮面の天使」24

「で?結婚できそう?」 「う〜ん。まあね。でもこの人いつも忙しくて、ちょっと退屈」 「え〜?暇な時に、元カレと遊んでいればいいんじゃない?ばれっこないよ」 「まあね。そうだけど」 「でもさ、その茉莉って女どうなったの?」 「アレ?あの女、私の作戦にまんまと引っかかっちゃって、ホント、見せたかった。やっぱ、おっとりした箱入り娘だから」 「へ〜。でさ、あんたのその男、あんたのこと信じてるの?マジで」 「私?うん。すんげ、信用されちゃってさ。私大人だってさ。んで、君は優しい、とか言うの。ばっかみたい」 「いいな〜、結構いい男なんでしょ?」 「まあねえ。あ、オトートいるよ。紹介しよっか?」 「え〜紹介してよ。そいつ、マスコミ?」 「それがさあ、テレビ局勤めだってさ、ばっちし」 「え?まじ?やったあ」 亜紀は、でも肘で思わず外部に繋がるマイクのスイッチを押したのには気づかなかい。健は飲み物などを買って外から戻ってきていた。亜紀の電話の声が外へ漏れていた。

ろまんくらぶ「仮面の天使」23

でも茉莉は家へ戻ると結構ワーワーと大声で泣く。強がっていても涙が勝手に出てくる。彼女はほとんど毎晩泣き続ける。夜の内に泣けるだけ泣いて、昼には大学の研究室に閉じこもっていた。 そのうちに彼女は、かなり年配の大学教授と付き合い始める。彼は以前から彼女をとても気に入っていた。教授と付き合うことになった翌日、彼女は腰まであった長く美しい髪を バッサリと切り落とす。やっと肩に届く位まで短くした。その頃くらいから彼女は感覚が徐々におかしくなっていく。 健は、茉莉に会うこともなくなったので、何も知らなかった。亜紀と上手くいっていると思い込んでいた。一方で、茉莉に対する気持ちが再び燻り始める。彼は自分自身で茉莉を2度も遠ざけたのに、彼女が彼から完全に離れようとしているのを意識すると今度は落ち着かなくなってくる。 彼はまた亜紀と仕事で遅くまでスタジオに残る。彼がちょっと外へ飲み物を買いに出た時、亜紀はスタジオの中から友人に電話する。 「え〜?上手くいったよ。ほんと、ばっかみたい」 亜紀は上機嫌だった。

ろまんくらぶ「仮面の天使」22

 帰りがけに彼女は 「もうしばらく1年くらい嘘を吐いてくれ」 と告げる。 健は躊躇いがちに尋ねる。 「ひとり暮らししてるの?」 「うん。先月から。家には顔を出しているけれど。ずっと一緒だと煩わしいから」 「あの、、」 「うん?あ、そのうちに、彼氏でも作るから。そしたら、いいんでしょ?それから私はっきり両親に言うから」 「え?」 茉莉のその言葉に健は自分の中で燻り出すものを感じる。彼氏作るって、、。 「じゃね」 彼女は行こうとする。彼は彼女の腕を思わず掴む。彼女はその腕を外すと、足早に行ってしまう。 その内に、茉莉は車の免許も取った。母親に似てのんびりしていたはずの娘が、だんだんと父親の性格も見せ始める。2度の婚約破棄。2度も振られたことで、彼女はなかばやけになってきていた。顔は相変わらず童顔で微笑んでいたものの、心の中では荒れ狂っていた。 健は彼女の腕を振り払われて、少し驚くと同時に、彼女の言葉が気になりだす。 「他の彼氏、、」 おまけに茉莉は家を出てしまっていた。これからは彼女を見ている人間は側に居なくなる。

ろまんくらぶ「仮面の天使」21

健はでもその内に、茉莉の両親から何も言ってこないため不思議に感じる。土曜日になるがまだ何も言ってこない。少し気になるので、茉莉の家へ電話をかける。彼女の母親は愛想がいいのでおかしいと思う。どうもまだ向こうの両親は何も知らないらしい。茉莉が電話に出る。元気なふりをしているのか、喫茶店へ来てくれと呼び出される。2人は新宿で会うことにする。 指定された店には彼女が先に待っていて、彼が席に座ると、開口一番に彼を驚かせる。 「しばらく黙っていて欲しいから」 そう彼女は言い出す。 「でも」 「私、大騒ぎしたくないし、口出しされるのはもう嫌だから」 運ばれてきたコーヒーに口をつけると、彼女は自分の分の代金をテーブルに置く。彼は以前とは違う彼女の様子に驚き、彼女がひどく大人びて見える。騒がないし、黙ってコーヒーを飲んでいる。目は少し腫れていて、泣いたのがわかる。 「しょうがないよ、私がいけないんだし」 コーヒーを飲み終わると彼女は続ける。 「じゃ、そんだけ。あともうしばらくフリしててよ。うちの両親心配するから。時々電話してよ、それらしく。そのうちに私から話すから。今はまだ知られたくないから」 彼女は一旦黙ってから続ける。 「 もう会わなくていいから、私、フリくらいできるから。じゃ」 そう告げると茉莉は健を残してさっと店を出る。 彼は思わず立ち上がる。彼女は振り向かないで人混みの中に消えていった。彼はおかしいと思い始める。茉莉はどうしようもない子供ではなかったのか。 茉莉はひとりで新宿をふらふらと歩く。早く帰ると両親に怪しまれる。法子に電話をかけると事情を知っているので、彼女は茉莉を家へ誘う。そこで茉莉は少しの慰めを見出す。友人は頼りになると茉莉は初めて両親を蚊帳の外へ置いて考え始める。 一方の亜紀は付き合っていた男と別れるとほのめかす。健は慰めながら、亜紀と付き合いたいと告白する。2人は付き合い始めるが、健は自分の家には彼女をまだ頻繁に連れてくるのは避けていた。 茉莉は全てを忘れようと学問にしゃかりきになる。そのうちに一人暮らしがしたいと言い始める。初め、父親は反対したが、母親は寛容だった。婚約しているのだから、自立心を養うためにも結婚前に1〜2年はいいのではないかと話す。父親はそれから渋々承諾する。健の両親に向かってぶつぶつと言うが、息子も家を出ているのだから、いいのではないかと...

ろまんくらぶ「仮面の天使」20

「わかった。あなたがそう言うのなら。でも、少しあっちの部屋へ行ってて。そこの扉、閉めておいて」 ひとりになると茉莉はあまり声を出さすに泣き始める。書斎にいながら、彼女が泣いているが健に聞こえる。彼女は堪えるように泣いている。彼は机に肘をついて、頭を抱えていた。 俺は2度も、彼女を、それも今度はひどいやり方で振ることになる。彼女はかなり長いこと居間に閉じこもり泣きながらじっとしていた。ひとしきり泣いて、涙が乾いてくると彼女は彼に 「帰るから」 一言告げ、そのままマンションを出て行こうとする。彼は書斎から出てくる。彼女は彼に背中を向けたまま弱々しく言う。 「あなたが別れたいなら、私」 彼は何も言えなくなる。 「じゃ」 彼女はそのまま帰って行く。彼は扉を閉める。扉の後ろで自分の取った行動に悩み始める。悩みながら今はこれでいいんだと思い始める。 茉莉は家へ戻る。とにかく騒いだり人前で泣いたりしたくなかった。また両親が色々と言ってくるに決まっているから、内緒にしておこうと思った。健は健で、どうせまた彼女の両親が何か言ってくるに違いないと思っていた。彼女が全部ぶちまけて、俺が悪者になるに決まっていると予測していた。 家へ帰ると茉莉は両親の前でにこにこする。食事をきちんととって、夜中みんなが寝静まると、ひとりで泣いていた。朝になると、一生懸命、蒸しタオルでまぶたの腫れをとった。とにかく家族に心配をかけたくないし、健を周りから責められるのは嫌だった。茉莉はもうかなり大人で、このことはひとりで処理しようと決めていた。健は、月曜日も、火曜日も、茉莉には電話しなかったし、話をしたくなかった。しばらくすれば、彼女の父親や母親が怒鳴り込んできて、自分の両親や弟も騒ぐと思っていた。 会社ではあんなことがあったにも関わらず、亜紀が親切で、何も気にしていないので、健は本当に亜紀に惹かれていった。彼は彼女と付き合いたいと思い始める。

ろまんくらぶ「仮面の天使」19

茉莉は今度は実際にあったことをまるでなかったことのように思おうとして苦しむ。玄関のベルが鳴り、彼女が来たことが健にわかる。ドアを開けると彼女が立っている。不安げな彼女の瞳の色に彼は気づかない。 「入ったら?」 黙って彼女は彼のマンションに入る。彼は少し意地悪い視線で彼女をまじまじと見て亜紀と比べる。身体も細いしよく見ると子供っぽい。おまけに性格も子供、、。健は茉莉と婚約したことを後悔し始める。 彼女が居間に入ると彼は紅茶をいれに行く。そうしながら亜紀のことをまた考える。さっぱりしていて、優しくて、大人で、、、何よりも仕事のことをよくわかってくれる。仕事はよくできるし、、、と茉莉と亜紀のことを頭の中でぐるぐると比べる。 お茶を運んでくると、彼は彼女をジロジロと見る。彼の目つきがまるで蔑んでいるような感じなのに彼女は気づく。それでも、あんな焼きもちを焼いたからと彼女は自分を責め始める。彼は彼女が黙っているのでまだ嫉妬しているのかと疑う。めそめそぐずぐずしているように見える。彼ははっきりと亜紀のことを考え始める。昨日一晩で物事が変わってしまったように錯覚する。彼も黙っている。茉莉に対する気持ちが揺らいできて自信が持てなくなってくる。 「あの、、」 茉莉が口を開く。健はため息を吐く。はっきり言ったほうがいいのだろうか、、。 「あの」 「俺、ちょっと、、、君とのこと考え直したい。その」 突然のことに茉莉は驚いてまた推し黙る。 「悪いけれど、君が、あんなに嫉妬深いとは知らなかった正直言って」 彼女は絶句する。彼は続ける。 「あんなこと気にされたら、俺、仕事できなくなるから」 茉莉は目が赤くなってくる。そんな、、、なんで? 「少し考えたいなら、もし、君が望むなら、、、婚約、解消したい。無理することないから」 私?私がどうして、、?君が望むって、私が?茉莉は狼狽する。彼女は泣くまいと我慢する。今泣いたらまた子供だと思われると感じて必死に堪える。彼女の瞳に涙が溜まってくるのは健はよくわかっていたが、嘘を吐きたくなかった。彼女は若いからと彼は思っていた。他にも相手が見つかるだろうと思っていた。 「ごめん。でも今回本当に俺困っちゃって」 健はあくまで仕事のことを考えようと努める。 彼は彼女がこの後泣き喚くと思っていたが、彼女は意外な反応を見せる。