ろまんくらぶ「仮面の天使」21
健はでもその内に、茉莉の両親から何も言ってこないため不思議に感じる。土曜日になるがまだ何も言ってこない。少し気になるので、茉莉の家へ電話をかける。彼女の母親は愛想がいいのでおかしいと思う。どうもまだ向こうの両親は何も知らないらしい。茉莉が電話に出る。元気なふりをしているのか、喫茶店へ来てくれと呼び出される。2人は新宿で会うことにする。
指定された店には彼女が先に待っていて、彼が席に座ると、開口一番に彼を驚かせる。
「しばらく黙っていて欲しいから」
そう彼女は言い出す。
「でも」
「私、大騒ぎしたくないし、口出しされるのはもう嫌だから」
運ばれてきたコーヒーに口をつけると、彼女は自分の分の代金をテーブルに置く。彼は以前とは違う彼女の様子に驚き、彼女がひどく大人びて見える。騒がないし、黙ってコーヒーを飲んでいる。目は少し腫れていて、泣いたのがわかる。
「しょうがないよ、私がいけないんだし」
コーヒーを飲み終わると彼女は続ける。
「じゃ、そんだけ。あともうしばらくフリしててよ。うちの両親心配するから。時々電話してよ、それらしく。そのうちに私から話すから。今はまだ知られたくないから」
彼女は一旦黙ってから続ける。
「 もう会わなくていいから、私、フリくらいできるから。じゃ」
そう告げると茉莉は健を残してさっと店を出る。
彼は思わず立ち上がる。彼女は振り向かないで人混みの中に消えていった。彼はおかしいと思い始める。茉莉はどうしようもない子供ではなかったのか。
茉莉はひとりで新宿をふらふらと歩く。早く帰ると両親に怪しまれる。法子に電話をかけると事情を知っているので、彼女は茉莉を家へ誘う。そこで茉莉は少しの慰めを見出す。友人は頼りになると茉莉は初めて両親を蚊帳の外へ置いて考え始める。
一方の亜紀は付き合っていた男と別れるとほのめかす。健は慰めながら、亜紀と付き合いたいと告白する。2人は付き合い始めるが、健は自分の家には彼女をまだ頻繁に連れてくるのは避けていた。
茉莉は全てを忘れようと学問にしゃかりきになる。そのうちに一人暮らしがしたいと言い始める。初め、父親は反対したが、母親は寛容だった。婚約しているのだから、自立心を養うためにも結婚前に1〜2年はいいのではないかと話す。父親はそれから渋々承諾する。健の両親に向かってぶつぶつと言うが、息子も家を出ているのだから、いいのではないかと、茉莉の両親を安心させようと努める。
久しぶりに2つの家族がみんなで集まった時、本当に傑作なくらい、茉莉は何気なさを装っていた。健はなんだか後ろめたかった。
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