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ろまんくらぶ「仮面の天使」23

でも茉莉は家へ戻ると結構ワーワーと大声で泣く。強がっていても涙が勝手に出てくる。彼女はほとんど毎晩泣き続ける。夜の内に泣けるだけ泣いて、昼には大学の研究室に閉じこもっていた。 そのうちに彼女は、かなり年配の大学教授と付き合い始める。彼は以前から彼女をとても気に入っていた。教授と付き合うことになった翌日、彼女は腰まであった長く美しい髪を バッサリと切り落とす。やっと肩に届く位まで短くした。その頃くらいから彼女は感覚が徐々におかしくなっていく。 健は、茉莉に会うこともなくなったので、何も知らなかった。亜紀と上手くいっていると思い込んでいた。一方で、茉莉に対する気持ちが再び燻り始める。彼は自分自身で茉莉を2度も遠ざけたのに、彼女が彼から完全に離れようとしているのを意識すると今度は落ち着かなくなってくる。 彼はまた亜紀と仕事で遅くまでスタジオに残る。彼がちょっと外へ飲み物を買いに出た時、亜紀はスタジオの中から友人に電話する。 「え〜?上手くいったよ。ほんと、ばっかみたい」 亜紀は上機嫌だった。

ろまんくらぶ「仮面の天使」22

 帰りがけに彼女は 「もうしばらく1年くらい嘘を吐いてくれ」 と告げる。 健は躊躇いがちに尋ねる。 「ひとり暮らししてるの?」 「うん。先月から。家には顔を出しているけれど。ずっと一緒だと煩わしいから」 「あの、、」 「うん?あ、そのうちに、彼氏でも作るから。そしたら、いいんでしょ?それから私はっきり両親に言うから」 「え?」 茉莉のその言葉に健は自分の中で燻り出すものを感じる。彼氏作るって、、。 「じゃね」 彼女は行こうとする。彼は彼女の腕を思わず掴む。彼女はその腕を外すと、足早に行ってしまう。 その内に、茉莉は車の免許も取った。母親に似てのんびりしていたはずの娘が、だんだんと父親の性格も見せ始める。2度の婚約破棄。2度も振られたことで、彼女はなかばやけになってきていた。顔は相変わらず童顔で微笑んでいたものの、心の中では荒れ狂っていた。 健は彼女の腕を振り払われて、少し驚くと同時に、彼女の言葉が気になりだす。 「他の彼氏、、」 おまけに茉莉は家を出てしまっていた。これからは彼女を見ている人間は側に居なくなる。

ろまんくらぶ「仮面の天使」21

健はでもその内に、茉莉の両親から何も言ってこないため不思議に感じる。土曜日になるがまだ何も言ってこない。少し気になるので、茉莉の家へ電話をかける。彼女の母親は愛想がいいのでおかしいと思う。どうもまだ向こうの両親は何も知らないらしい。茉莉が電話に出る。元気なふりをしているのか、喫茶店へ来てくれと呼び出される。2人は新宿で会うことにする。 指定された店には彼女が先に待っていて、彼が席に座ると、開口一番に彼を驚かせる。 「しばらく黙っていて欲しいから」 そう彼女は言い出す。 「でも」 「私、大騒ぎしたくないし、口出しされるのはもう嫌だから」 運ばれてきたコーヒーに口をつけると、彼女は自分の分の代金をテーブルに置く。彼は以前とは違う彼女の様子に驚き、彼女がひどく大人びて見える。騒がないし、黙ってコーヒーを飲んでいる。目は少し腫れていて、泣いたのがわかる。 「しょうがないよ、私がいけないんだし」 コーヒーを飲み終わると彼女は続ける。 「じゃ、そんだけ。あともうしばらくフリしててよ。うちの両親心配するから。時々電話してよ、それらしく。そのうちに私から話すから。今はまだ知られたくないから」 彼女は一旦黙ってから続ける。 「 もう会わなくていいから、私、フリくらいできるから。じゃ」 そう告げると茉莉は健を残してさっと店を出る。 彼は思わず立ち上がる。彼女は振り向かないで人混みの中に消えていった。彼はおかしいと思い始める。茉莉はどうしようもない子供ではなかったのか。 茉莉はひとりで新宿をふらふらと歩く。早く帰ると両親に怪しまれる。法子に電話をかけると事情を知っているので、彼女は茉莉を家へ誘う。そこで茉莉は少しの慰めを見出す。友人は頼りになると茉莉は初めて両親を蚊帳の外へ置いて考え始める。 一方の亜紀は付き合っていた男と別れるとほのめかす。健は慰めながら、亜紀と付き合いたいと告白する。2人は付き合い始めるが、健は自分の家には彼女をまだ頻繁に連れてくるのは避けていた。 茉莉は全てを忘れようと学問にしゃかりきになる。そのうちに一人暮らしがしたいと言い始める。初め、父親は反対したが、母親は寛容だった。婚約しているのだから、自立心を養うためにも結婚前に1〜2年はいいのではないかと話す。父親はそれから渋々承諾する。健の両親に向かってぶつぶつと言うが、息子も家を出ているのだから、いいのではないかと...

ろまんくらぶ「仮面の天使」20

「わかった。あなたがそう言うのなら。でも、少しあっちの部屋へ行ってて。そこの扉、閉めておいて」 ひとりになると茉莉はあまり声を出さすに泣き始める。書斎にいながら、彼女が泣いているが健に聞こえる。彼女は堪えるように泣いている。彼は机に肘をついて、頭を抱えていた。 俺は2度も、彼女を、それも今度はひどいやり方で振ることになる。彼女はかなり長いこと居間に閉じこもり泣きながらじっとしていた。ひとしきり泣いて、涙が乾いてくると彼女は彼に 「帰るから」 一言告げ、そのままマンションを出て行こうとする。彼は書斎から出てくる。彼女は彼に背中を向けたまま弱々しく言う。 「あなたが別れたいなら、私」 彼は何も言えなくなる。 「じゃ」 彼女はそのまま帰って行く。彼は扉を閉める。扉の後ろで自分の取った行動に悩み始める。悩みながら今はこれでいいんだと思い始める。 茉莉は家へ戻る。とにかく騒いだり人前で泣いたりしたくなかった。また両親が色々と言ってくるに決まっているから、内緒にしておこうと思った。健は健で、どうせまた彼女の両親が何か言ってくるに違いないと思っていた。彼女が全部ぶちまけて、俺が悪者になるに決まっていると予測していた。 家へ帰ると茉莉は両親の前でにこにこする。食事をきちんととって、夜中みんなが寝静まると、ひとりで泣いていた。朝になると、一生懸命、蒸しタオルでまぶたの腫れをとった。とにかく家族に心配をかけたくないし、健を周りから責められるのは嫌だった。茉莉はもうかなり大人で、このことはひとりで処理しようと決めていた。健は、月曜日も、火曜日も、茉莉には電話しなかったし、話をしたくなかった。しばらくすれば、彼女の父親や母親が怒鳴り込んできて、自分の両親や弟も騒ぐと思っていた。 会社ではあんなことがあったにも関わらず、亜紀が親切で、何も気にしていないので、健は本当に亜紀に惹かれていった。彼は彼女と付き合いたいと思い始める。

ろまんくらぶ「仮面の天使」19

茉莉は今度は実際にあったことをまるでなかったことのように思おうとして苦しむ。玄関のベルが鳴り、彼女が来たことが健にわかる。ドアを開けると彼女が立っている。不安げな彼女の瞳の色に彼は気づかない。 「入ったら?」 黙って彼女は彼のマンションに入る。彼は少し意地悪い視線で彼女をまじまじと見て亜紀と比べる。身体も細いしよく見ると子供っぽい。おまけに性格も子供、、。健は茉莉と婚約したことを後悔し始める。 彼女が居間に入ると彼は紅茶をいれに行く。そうしながら亜紀のことをまた考える。さっぱりしていて、優しくて、大人で、、、何よりも仕事のことをよくわかってくれる。仕事はよくできるし、、、と茉莉と亜紀のことを頭の中でぐるぐると比べる。 お茶を運んでくると、彼は彼女をジロジロと見る。彼の目つきがまるで蔑んでいるような感じなのに彼女は気づく。それでも、あんな焼きもちを焼いたからと彼女は自分を責め始める。彼は彼女が黙っているのでまだ嫉妬しているのかと疑う。めそめそぐずぐずしているように見える。彼ははっきりと亜紀のことを考え始める。昨日一晩で物事が変わってしまったように錯覚する。彼も黙っている。茉莉に対する気持ちが揺らいできて自信が持てなくなってくる。 「あの、、」 茉莉が口を開く。健はため息を吐く。はっきり言ったほうがいいのだろうか、、。 「あの」 「俺、ちょっと、、、君とのこと考え直したい。その」 突然のことに茉莉は驚いてまた推し黙る。 「悪いけれど、君が、あんなに嫉妬深いとは知らなかった正直言って」 彼女は絶句する。彼は続ける。 「あんなこと気にされたら、俺、仕事できなくなるから」 茉莉は目が赤くなってくる。そんな、、、なんで? 「少し考えたいなら、もし、君が望むなら、、、婚約、解消したい。無理することないから」 私?私がどうして、、?君が望むって、私が?茉莉は狼狽する。彼女は泣くまいと我慢する。今泣いたらまた子供だと思われると感じて必死に堪える。彼女の瞳に涙が溜まってくるのは健はよくわかっていたが、嘘を吐きたくなかった。彼女は若いからと彼は思っていた。他にも相手が見つかるだろうと思っていた。 「ごめん。でも今回本当に俺困っちゃって」 健はあくまで仕事のことを考えようと努める。 彼は彼女がこの後泣き喚くと思っていたが、彼女は意外な反応を見せる。

ろまんくらぶ「仮面の天使」18

亜紀がまさか電話を盗み聞きしていたとは健は思わない。とにかく亜紀と茉莉を鉢合わせさせるわけにはいかない。亜紀はわざとのんびりする。健は亜紀に少し気持ちが傾いてきていて、彼女につっけんどんにできないので、わざと「彼にすまない」と言い訳を始める。 早くしないと、茉莉が来る。亜紀はぐずぐずする。亜紀はわざと窓際にいると、茉莉がやって来るのが見えないかとマンションの建物の前の道の両端をじっと観察する。マンションのベランダから見ると、どちらの方角から茉莉が来るのかわかるはずだった。亜紀は、茉莉の姿が見えるまで、そこを動かなかった。健もベランダに出てくるが、まさか亜紀がそんなことに注意しているとは考えなかった。それにだいたい茉莉が来ようが来るまいがどうでもよくなってくる。 そこへ茉莉がやって来る。彼女はベランダを見るともなく見てしまった。一目で亜紀を見つける。 亜紀は目の端で茉莉を認める。 「私、帰るね」 茉莉は遠目に亜紀と健の様子を見つめる。2人は何やら話している。 「うん、ごめん。ほんとに」 「いいって、気にしないで、、。明日は仕事でしょ」 「だね」 健から亜紀の背中を抱くようにするのを茉莉ははっきりと見る。まさか、でも、日曜の昼間だし、、。でも、また今疑ったら、、。そう必死に疑うまいとする。彼女は思わず隠れる。健の亜紀への接し方が気になる。 亜紀に見られたくないので、茉莉はそのまま隠れている。亜紀はマンションから出て来ると、茉莉がいる方角とはわざと反対へ向かう。茉莉は、どうしようと動揺し、逃げ出したくなる。健は怒っているし、彼と亜紀がまさかと思うと、胸が潰れそうに苦しくなる。でも、友人の言葉を思い出す。それと健が言っていたことも思い出す。亜紀は資料を届けに来たりするから、、。茉莉は同じ過ちを繰り返さないようにと自分に言い聞かせ、気を取り直すとマンションへ向かう。

ろまんくらぶ「仮面の天使」17

健は、亜紀に送らせると「水をくれ」とか色々と言って、彼女を引き止めようとする。茉莉のために買ったこのマンションのことを考えると何だか情けないし、悲しくなってくる。 「どうしたのちょっと」 亜紀が側にくると健は思わず抱きつく。 「あ、ちょっと、やだ」 「いいから、じっとしていて」 やけになった弱さから健は亜紀の身体を強く抱きしめる。事が思惑通りに運んだ彼女は少しだけ抵抗するふりをする。茉莉とは違う女を抱きながら彼はますます情けない気分になってくる。その一方で茉莉とは違う亜紀の感触とその反応に一時癒される。 そのまま朝を迎え、昼頃、健は目を覚ます。亜紀は遅い朝食の支度を始める。本当はこんなことは苦手だったが、あざとく家庭的なふりをする。 「ごめん、君にこんなことさせちゃって」 「いいわよ。私こそ、勝手に台所使っちゃって」 健は亜紀にすまないと思う。成り行きとは言え、彼氏のいる女性に手を出してしまった。 「あの、昨日はすまない」 「いいわよ、あんなこと、たいしたことじゃないし 。私もちょっと油断していたから。仕方ないわ」 ちょっと上目遣いで漬け込む感じ。 亜紀が寛容なので健はほっとすると同時に、彼女に気持ちが傾いてくる。亜紀はほんとに明るくてさっぱりしていて、、、と、彼女の芝居を見抜けない。健の目には、何もかも茉莉が悪いように見えてくる。 法子に勧められ、チェックアウトを済ませると、茉莉は急いで帰る。自宅には戻らずに、健のところ行って、直接謝ろうと思っていた。彼に電話をかけると、コール音が続いた後、彼が出る。茉莉の声に彼は思わずギクリとする。まだ亜紀が側にいる。 「あの」 「何?連絡も寄越さないで、いきなりいなくなっちゃって」 「あの、私、その亜紀さんのこと」 「またその話?いいからさ、もう。で?何の用?」 健の冷たい態度に茉莉はショックを受けると、言いたいことも言えなくなる。 「あの、ごめんなさい、私」 弱々しい声の彼女に、彼は意地悪く応える。 「ごめんなさいって、いったい、何のこと?」 「あの、今から行っていい?そっちに」 「え?何のため?」 腹立ちまぎれな健は不快そうな態度を崩さない。それに、亜紀がいることを気づかれたくはなかった。日曜の昼に一緒となれば、茉莉がまた神経質になるし、実際、そうなってしまったので、できたら茉莉と今話したくはなかった。 少し沈黙した後、健...

ろまんくらぶ「仮面の天使」16

「君はいくつ?」 「え?わたし?23だけど。履歴書読んだんでしょ?」 「まあね。でもあまり俺は年齢とか注意していなかったから」 心の中で健はまた亜紀と茉莉を比べる。2つ3つ違うだけで、こんなにも差があるのかと。 彼は、気分がさらに落ち込んでくると、もっと飲み出す。俺、早まったのか、と思うと何だか自分自身にむかついてくる。こんな、亜紀みたいな理解のある女にすれば良かったと、テキーラをがぶ飲みする。亜紀はやめさせるような素振りをする。 「ちょっと、もうやめたら?」 「うるせー、飲ませろ」 そのうちに健はべろべろになって、気分が悪くなり、トイレへ行って勢いよくリバースする。スッキリしたけれど、だんだん惨めになってくる。よく考えたらいくら親同士が知り合いだからって、婚約したからって、何も結婚しなくてもいいんだと思い始める。 いっそのこと、別れちまおうか、、、あの焼きもち女、、。ちくしょう、俺の気も知らないで、、。 鏡に映った疲れた顔をじっと見つめながら健はつぶやく。 深いため息を吐き、席に戻ると亜紀は優しい。 「大丈夫?車でしょ?こんなに飲んで」 「ん〜、あ〜君、運転できる?」 「できるけれど、もう少し時間おかないと」 「さっきっから全然飲んでないね。もしかして帰りのこと気にして?」 言われて亜紀はちょっとドキッとする。飲んだから事が冷静に運べないから。 「だって、飲めないよ。相方がこんなべろべろじゃ。それこそ、帰り、まずいじゃない?」 「あ〜、そ。じゃあさ、俺んちまで送ってよ。君、もう醒めてるでしょ?」 「え?でも私帰れなくなったらやだよ。まじ」 作戦が成功しそうで亜紀は実のところほくそ笑んでいる。 「いいからさ、車貸すから。ね。明日、取りに行くから」 「え〜?」 「いいじゃん、ね」 「わかったわよ。いいけど、少し待ってから行こう。夜中過ぎてるからどうせ」 「は〜いよ」 健の車に乗ると、酔っている彼の代わりに亜紀は運転する。遅らせながら健は亜紀の香水の匂いに刺激される。そうだ、茉莉はいないし、どうせ避けられている。スマホに連絡しても繋がらない。いちいちホテルにかけなくちゃいけない。それならちょっと亜紀と、、、なんて、やけくそ気味に思っていた。茉莉の焼きもちに健は疲れていた。 一方の茉莉は、夜、何回か健に電話をかけるが出ないので諦める。健からの連絡を避けたくて、旅行に出た最...

ろまんくらぶ「仮面の天使」15

 亜紀はまるで健の心の中を読み取っているかのように、痛いところをついてくる。 「あの、茉莉さんは?今日は」 「え?ああ、彼女、旅行」 「最近スタジオにも来ないじゃない?」 「え、ああ彼女は焼きもちやきだからさ。ほんと、子供で参っちゃうよ」 「え〜?彼女いくつ?」 「大学生」 「う〜ん、まだ子供かもね」 話しながら亜紀は、その時着ていたジャケットを脱ぐ。 「あ〜なんか、あつくなっちゃった」 彼女は下に、谷間が見えるくらいの、ぴっちりとした大きく胸の開いたタンクトップを着ている。酔っ払ってきていた健の目は思わずそこに釘付けになる。彼は飲み過ぎだったが、大抵の男性よりもお酒が強い亜紀は平然としていた。 本当は茉莉に会いたいけれど、腹を立てていて意地になっていて、会えない健はやけくそな気分。茉莉がまだ怒っていて連絡が来ないのだと気分はダウンしっぱなしだった。 こうして見ると亜紀は茉莉よりも肉付きがかなり良かった。下には生地の薄いジーンズを履いていたので、太ももの肉付きもわかる。ついいけない考えを健は起こしそうになってくる。茉莉に対して、半分、「ちくしょう」という気持ちになる。俺が我慢しているのに、あいつは、こんなこともわからないのかと、今度はイライラが募ってくる。 「ちょっと、あの、飲み過ぎなんじゃないの?」 亜紀は健の背中を撫でるようにして、体を近づけてくる。彼女のその胸が彼の鼻先にくる。健は自分の中で欲望が頭をもたげてくる。茉莉を大切にするあまり、いつも押さえてきた肉体の欲求が起こってくる。

ろまんくらぶ「仮面の天使」14

友人と出てきているから、食事でもしないかと亜紀は誘ってくる。健は「ほら、亜紀はさっぱりとした女性じゃないか。なんなんだ茉莉は」とぶつくさ言い始める。 呼び出されて待ち合わせの場所へ行くと、亜紀は友人と先に着いていた。結局、健、亜紀、彼女の友人の久美の3人で焼肉を食べることになる。景気づけに生ビールで乾杯し、みんなでカルビをぱくつく。別に色気っていう訳でもないじゃないかと、健は茉莉が勘違いしていると、また彼女を子供っぽいと思う。ちょっと大人になったのは見かけだけかと少しがっかりする。 お腹がいっぱいで、いい気分になった後は、バーへ行き、そこで健はついテキーラをぐいっとあおる。それから3人でクラブへ向かう。 そこで久美は亜紀と打ち合わせたとおり、こっそりと抜け出す。出る時に、亜紀に目配せしながら、 「うまくやりなよ」 と耳打ちをする。亜紀は健と薄暗い場所で2人っきりになる。24時も過ぎるとお酒が相当まわってくる。 「あれ?彼女は?」 久美がいなくなったことに健が気づく。 「さっき帰ったよ。彼氏に呼び出されたって」 亜紀はしらばっくれる。 「そう?ま、しょうがないよ。で?君はどうするの?彼氏心配するんじゃない?」 聞かれて彼女は少し口ごもる。うまく誤魔化さないと計画がおじゃんになる。 「私?あー、うん。彼、仕事だから。しょうがないよ。理解してあげないと」 彼女のその言葉に、大人だなと健はまた茉莉と比べる。心の中で、「あ〜あ、この位、茉莉が解ってくれたらと、がっかりにちょっと幻滅が加わる。茉莉の焼きもちがだんだんうざったくなってくる。何よりも、茉莉が、健が彼女のために仕事も頑張って、マンションまで買ったのを理解していないのかと思うと、無性にイライラして腹が立ってくる。