ろまんくらぶ「仮面の天使」17
健は、亜紀に送らせると「水をくれ」とか色々と言って、彼女を引き止めようとする。茉莉のために買ったこのマンションのことを考えると何だか情けないし、悲しくなってくる。
「どうしたのちょっと」
亜紀が側にくると健は思わず抱きつく。
「あ、ちょっと、やだ」
「いいから、じっとしていて」
やけになった弱さから健は亜紀の身体を強く抱きしめる。事が思惑通りに運んだ彼女は少しだけ抵抗するふりをする。茉莉とは違う女を抱きながら彼はますます情けない気分になってくる。その一方で茉莉とは違う亜紀の感触とその反応に一時癒される。
そのまま朝を迎え、昼頃、健は目を覚ます。亜紀は遅い朝食の支度を始める。本当はこんなことは苦手だったが、あざとく家庭的なふりをする。
「ごめん、君にこんなことさせちゃって」
「いいわよ。私こそ、勝手に台所使っちゃって」
健は亜紀にすまないと思う。成り行きとは言え、彼氏のいる女性に手を出してしまった。
「あの、昨日はすまない」
「いいわよ、あんなこと、たいしたことじゃないし 。私もちょっと油断していたから。仕方ないわ」
ちょっと上目遣いで漬け込む感じ。
亜紀が寛容なので健はほっとすると同時に、彼女に気持ちが傾いてくる。亜紀はほんとに明るくてさっぱりしていて、、、と、彼女の芝居を見抜けない。健の目には、何もかも茉莉が悪いように見えてくる。
法子に勧められ、チェックアウトを済ませると、茉莉は急いで帰る。自宅には戻らずに、健のところ行って、直接謝ろうと思っていた。彼に電話をかけると、コール音が続いた後、彼が出る。茉莉の声に彼は思わずギクリとする。まだ亜紀が側にいる。
「あの」
「何?連絡も寄越さないで、いきなりいなくなっちゃって」
「あの、私、その亜紀さんのこと」
「またその話?いいからさ、もう。で?何の用?」
健の冷たい態度に茉莉はショックを受けると、言いたいことも言えなくなる。
「あの、ごめんなさい、私」
弱々しい声の彼女に、彼は意地悪く応える。
「ごめんなさいって、いったい、何のこと?」
「あの、今から行っていい?そっちに」
「え?何のため?」
腹立ちまぎれな健は不快そうな態度を崩さない。それに、亜紀がいることを気づかれたくはなかった。日曜の昼に一緒となれば、茉莉がまた神経質になるし、実際、そうなってしまったので、できたら茉莉と今話したくはなかった。
少し沈黙した後、健は答える。
「どうしてもって言うんなら、来れば?」
嫌そうな返事に茉莉は言葉も出ない。
「じゃ」
健は電話を冷たく切る。
亜紀は彼の様子から茉莉がくるかもしれないのに気づく。
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