投稿

FGOのイベントが始まりました(^^)

 ついについにビースト実装です!!それになんとなく可愛いのがいいです! ユーザー待望の実装です。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」50

そうして娘が気を許し、目を離した隙に解錠された金庫の中を見るために、今度は娘が不在の時にオフィスを訪れればいいだけだった。それは簡単なことだった。足繁く通ううちに、娘が不在の時があることに気づき、その時間帯を狙って訪問し、彼女を待つふりをしながらオフィスで作業をすれば良かった。幸い受付係のいる席とオフィスは少し離れた場所にあった。間には応接室もあった。 金庫の問題がほぼ解決したと同時に理沙との関係はますますこじれていく。電話をしても繋がらないし、剛自身メッセージを残すもの気がひけた。今はこのまま放っておくしかないとはいえ、瑠璃とのキスシーンを見られたかもしれないのに、何で理沙は全く反応を示さないのだろうか。反応のなさが彼にとっては冷たさとして突き刺さってきていた。そして、 「彼女は俺に本当に気持ちがないのか」 という当たり前の感情が彼の中に起こり、それが起こったことに彼自身が戸惑っていた。今まで自身を冷たいと思っていた彼は、それ以上に「冷たい」と思われる、理沙の反応に驚いていた。彼女は表面は柔らかく優しげだが、内側には何処か違う何かを隠していた。 ただ、今はそんなことは言ってはいられない。それにかまってはいられなかった。 剛の恐怖や動揺はアメリカの同僚を通して夫人にすでに伝わっていた。夫人はそして、それでいいと考えていた。 事件の答えは彼の動揺の中に、動揺の奥底に眠っていた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」49

 もちろん瑠璃とてひとりの女なのだから、剛に全く興味がないわけでもなかったが、彼女の動物的な勘がその男が別に本気なのではないと告げていた。生まれながらに財宝に囲まれて育った娘の、男に関する嗅覚はその点では優れていた。相手が財産に興味があるのかないのかということも分かっていた。ただ、彼女は、自身の心のことは恐らくあまり分かってはいなかったのかもしれない。 彼女が作品の説明を終えて、化粧室へ行ったその一瞬の隙をついて、剛は金庫の場所を探した。そして娘が机の上に置いたこのオフィスの鍵束のの中から金庫の鍵を捜し出し、金庫を解錠して置いた。金庫にある古い台帳が目的だった。金庫は誰の関心も引いていないようで、少し錆び付いていて、鍵がなかなか入らなかった。これで別の機会にいつでも中身を見ることができる。 その晩、剛は理沙からの電話を待った。さすがに普通なら、何か言ってくるだろうと思った。でも夜中の二時を過ぎても彼女からの連絡はなかった。彼はさすがに痺れを切らして自分から電話を手に取る。 「もしもし、俺だけど、寝てた?」 「起きてたけど、もう、寝ようかと」 「さっきのことだけど」 言われて理沙は口を閉ざす。沈黙の中に彼女の痛みが見え隠れしていたが 「別に、どうでもいいって、言ったよね」 という言葉が、すぐに真実を覆い隠す。 「寝るから、じゃ」 そう告げると彼女は彼に一瞬の隙も与えずに電話を切る。切られた電話の通信音を聞きながら、剛には、彼女のその硬さが自分のことのように感じられて、言いようのない激しい痛みを覚える。その硬さは、まるで何かを遮断するかのように彼女の表面に時々姿を現す。 そしてそれは彼の中にもあったために、彼はそれを感じ取ることができた。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」48

 そうしてその何かに動かされるように剛は瑠璃に接近していく。理沙はそれを見て見ぬふりをしているのか、それに対して一言も何も言わない。言い訳する気もなかったし、言い訳する余地もなかった彼は、理沙から連絡がないのを口実に、自分からも意図的に連絡しなかった。店に近づかなければ彼女と特別顔を会わせることもなかった。それに瑠璃は主に知人の経営する他の店のオフィスにいたから、彼はただそこへ足繁く通えばよかった。彼はそれに「演技」が上手だったから、瑠璃に信用されるようになるのに、そう時間はかからなかった。 彼女は彼女で自身の「女」を使って彼に高い商品を買わせようとしていた。二人の関係はまるで狐と狸の化かし合いだった。 雨がひとしきり降る週末、瑠璃のいるオフィスへ秘書からわざわざ使いを頼まれた理沙は、剛が娘に口づけしようとしているのを目撃する。理沙は見たことを二人に気づかれたくなくて、一度外へ出ると、今度はわざと大きな音を立ててドアから入ってくると「瑠璃さんいますかあ」と大声で娘を呼ぶ。理沙のその声にさすがに剛は彼女の顔を正面から見ることができず、背中を向けて作品を見ているふりをしなければならなかった。娘は書類を受け取ると目配せをして、理沙を追い払う。邪魔者だとわかると、理沙は何かを感じているのかいないのか、わからないような表情を一瞬浮かべる。それはまるで虐待の痛みのひどさに耐え続けて、いつかそれを感じなくなる子供のそれに似ていた。剛は、その、彼女のその一瞬の表情と、彼女の心の動きの、何ものも映し出さない瞳の空虚さと冷たさを見逃さなかった。 彼は、理沙の中にある、深い寒々とした淵と、どんなに手を尽くしても決して癒すことの出来そうにないひりつくような傷跡を感じた。それと同じものを彼自身の内側に感じた。感じると同時に理沙を強く抱きしめたい衝動が起こり、手が痙攣していた。 「失礼します」 感情を込めずに一言。理沙はその場を立ち去った。 瑠璃はせいせいしたというそぶりを見せ、また先程の作品の説明に戻る。剛はもう娘の体に触れる気もなかったし、娘は娘で彼を客としてしか見ていなかったため、先程の出来事はただのちょっとしたサービスにすぎなかった。後は作品が売れさえすれば今度のパーティーでまた彼女は花形になれるのだった。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」47

確かに瑠璃は真紅のイヴニングを身に纏っていて、華やかで非常に人目を引いていたため、多くの男達が芳醇な蜜に群がる蝶のごとく吸い寄せられていた。その中に剛が混ざっていたとしても何ら不思議ではなかった。そのため彼の演技はカモフラージュされ、ごくごく自然なものとして周囲には見えていた。 彼のその様子を理沙は見逃さなかった。彼女の視線を彼は背中で痛いほど感じていた。それでも「情報」を得るためには手段を選んではいられないと彼は演技を続け、ひたすら自分の本心を隠そうとする。その必死さが逆に瑠璃に気に入られようと躍起になっている男のそれとして、周囲の目には映った。 剛と瑠璃の僅かな接近にすでに嫌気が差していた理沙は深く傷つき、赤いワインの入ったグラスを持つ指先が微かに震えていた。震えていたがそれをひたすら押し隠して、押し殺して、パーティーが終わり客が帰ってしまうまでぎこちない笑顔を保っていた。 彼女は、剛が瑠璃と早く二人きりになりたがっているそぶりを敏感に感じ取り、まるで隠れるように身支度を整えると、彼が理沙を気にし始めた時にはもう会場にはいなかった。彼女がいなくなり、彼女に誤解されたことを感じると、彼は彼女に特別な感情を抱いていることをはっきりと意識し始める。意識し始めるが、こじれるのは分かっているが、それでも調査をやめることは出来ない。彼にはもちろん義務もあったが、何があっても調査をやめさせない何かが彼の中で蠢いていた。蠢くものは、彼の中で、知りたいという強烈な欲望に突き動かされると同時に、途轍もない恐怖と戦っていた。 彼には分からなかった。何故、恐怖なのか。 夫人の言葉を思い出す。 「あなたにしか出来ない。真実にたどり着くことが出来るのはあなただけ、、」 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」46

そうして様々な話の中には理沙に対して客とつきあっているのかという上司の小言が聞こえる。彼女はそれを否定するが、何かを感じ取っているのか、上司は相手の希望があれば、全て上に報告しろと命じている。 それを小耳にはさんだ剛はもうぐずぐずしてはいられないと感じる。理沙にもいずれ、色々と知られてしまうと思うと、アメリカの夫人に頼んで研修目的で店に張り付く人物を寄越してもらう。日本語が片言の学生を装った人物で、実際は日本語が完璧だった。できないふりを演じながら店の資料を研修目的で見せてもらう。短い時間で事務所の資料を調査する。剛とは電話やメールでの連絡はせず、美術商や外での面会も無し。宅配業者をその人物が装い、特別な場合を除き、週1〜2回、文書で経過を連絡。アジア人とのハーフで元々は薄いブラウンの髪に緑色の瞳だが、帽子、カラーコンタクト、ウィッグで変装して報告書を剛の家のポストへ直接届ける。 彼、モディアノは研修の一環として印刷された顧客台帳をもとに、パーティーの招待客への招待状を送る作業を手伝いながら、顧客の名前を頭に入れる。管理業務を習得するため、管理台帳の記録方法を学習する。必要なのは古い台帳だったから、現在の台帳はあまり見せられないと言われた事が幸いした。 モディアノから送られてきた台帳のコピーを剛は念入りに調べたが、問題の作品らしきものは見当たらない。加えてコピーには1960年代から1970年代に購入、販売したものしかないことに気付く。店が戦前からあったことを考えれば、それは奇妙なことだったが、疑問はすぐに解決された。よくよく見るといくつかの作品の移動年月日の前に1950等の年の記録がある。つまりこの台帳よりもさらに古いものがあるようだった。そう思ううちに剛はふと耳にした従業員同士のある会話を思い出す。 「ねえ、この作品の資料はどこにある?」 「ああ。それは古いから倉庫にあるよ。確か一番古い台帳と一緒だったかと」 「一番古い台帳って?」 「ああ、確か、、、えーっと」 そこで古参の社員が口を挟む。 「その台帳は金庫に入っているはずだよ、鍵付きの」 「じゃあ、鍵は社長が?」 「それと、、、確かお嬢さんも持っていたかと」 「じゃ、お嬢様に借りればいいのかな?」 「多分」 そうか、その、一番古い台帳、、。 会話を思い出した剛は瑠璃にもっと近づく決心をする。理沙の手前、、、何か...

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」45

興味の方向が調査からずれたことに剛は焦りを感じつつも分析を続ける。理沙の周辺からは重要な情報は全く拾うことができない。つまり彼女は「あの」事件とは無関係なのだ。それはもちろん彼女の入社年月日からも容易にうかがう事ができるし、会社での彼女の位置からすると、周防家の秘密を知るような立場にはいない。日常の彼女の仕事内容は翻訳等が主なもので、売買には殆ど関わっていはいないようだ。そんなわけで彼女の周辺からは彼女のプライベートなことしか分からない。 例えば剛の家に来た時、テレビで巨大クラゲを見ていたりして「ゲローイ」とかそういう言い方をしている。あるいは大抵は漫才やコントを見ていたり、流行りの貧乏番組を見ていたりしてゲラゲラ笑っていたりする。彼女は一見ちょっとばかっぽい女なのだった。そんな彼女の一番のお気に入りは、あのミスタービーンらしかった。 それでも時々彼女が同僚や会社を非難することがある。彼女が特にイライライしていたのは、ある部分アメリカを模倣してドライなビジネスを展開しながら、その一方で古くからある湿った日本的な仕事の運び方から抜け出すことができないことだった。グローバル化を目指しながらもそれとは全く反対の人間達で、海外の作家の作品を扱いながらも外国人の対応からは逃げ回っていることだった。 従業員は寝ずに働いている者もいるが、周防家の連中は年がら年中バカンスに出かけている。彼等の浪費は留まるところを知らず、社長は身だしなみとヘルシーになることだけに精進している。 その間、会社は不況の波の中で溺れそうになっている。 調査は相変わらず、何の手がかりも得られず、千々として進まなかったが、観察を続けていくうちに、二、三人の古い営業マンがある意味で組織を動かしていることに剛は気付く。その中には社長に対して指図する者がいた。その人物は他の多くの従業員がいないところで、そういう態度をとっているらしかった。それをはっきりとわかっているのは、社長一族と立ち聞きしていた剛くらいなものだった。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」44

 「どうして、そうやって逃げる?」 問い詰められて、理沙は一瞬、剛を見つめる。 「あなたは、嘘で塗り固められた世界に生きているような気がする、、。何となくそう思う。あるところ以上には近づいて欲しくないでしょう?」 言いにくいことを彼女ははっきりと告げる。 「どうして、そんな事がわかる?」 言い返す彼の声のトーンが少し上がる。 「勘、、、かな」 彼女は冷静に答える。 「それだけなのか?」 「あと、、、心理学にはちょっと詳しい」 「分析には慣れてるってわけか」 「まあね」 「俺が嘘をついているって、でも、断定できるのか?」 「さあ、、、まあ、決めつけるのも、ね」 「じゃあ、興味があるってわけ?」 言われて、理沙は瑠璃のことを思い出し、話をはぐらかす。 「うーんと、どうでもいいかな。興味ない。本当のことなんて」 「どうでもいい、ね」 彼は苦笑する。 「相手の見えない心を見ようとしてもどうしようもない、、」 理沙は呪文のように呟く。その言葉は何か重要な意味を持っているかのような響きがある。女から「どうでもいい」などと言われたことのないある意味での自信家の彼は、彼の中に眠っている、何かを覆い隠すようにしているもの、そこをこじ開けようとする彼女の言葉にかすかに動揺する。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」43

話を聞いた社員がいずれ何か企むに違いなかった。それなりに評判がいいにもかかわらず、滅多に人物を元にした造形は行わない亜由美の、そのめがねにかなったとあれば、価値が上がるだろうことは予測された。だから彼女に作品を作らせて、野上剛に購入させるという腹づもりになる。 亜由美がその場を離れる時、しかし、彼女は野上剛が彼女を見ているのに気付いた。その視線を避けるように彼女は足早にその場を立ち去る。何かを感じ取ったのか、剛はその男へゆっくりと近づいて行く。 「野上様、いつもおいでいただいてありがとうございます」 「こんばんは。盛況ですね」 「ええ。今、ちょうどあなたのお話をしていたところですよ」 「私の?」 剛の目が鋭く光る。 「ええ、あちらの先生ですが」 男はすでに店の戸口に手を掛けている女性の背中を指差す。体調が思わしくないのを口実に彼女は逃げるように去って行く。 「彼女、山野先生が、あなたをモデルになさりたいとおっしゃってまして」 「私を?」 「ええ、非常に珍しいことなのですが、気に入られたようで」 「それは、また、どうしてですか?」 「さあ、私も、そこまではお聞きできなくて。でも、いい機会ですから、ぜひ」 社員はそこでセールストークに入り、剛にしきりとモデルになることを勧める。剛はそんなことには全く興味がなかったので、適当に相槌をうちながら、その時は話を上の空で聞いていた。 一方、剛が瑠璃に近づく様子を店で見せてから、理沙と彼の関係は表面上は何の変化もなかったが、その裏でお互いに相手に対する苛立ちが募っていった。彼女からよくよく見ると彼はいつも何かから逃げているような気がしてきていた。だからそういう相手とはもしかして多少距離を保つ事がいいように彼女には思われた。 そんな彼女の距離の取り方に彼はイライラしてきた。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」42

 たとえ商売上の理由からであっても、幸い相手もまんざらではなさそうである。理沙がその場にいても、彼女にも他に男がいるかもしれないと勘違いしている剛は、それを言い訳にしながら彼女に対して後ろめたさを感じずにいられた。剛が資産家であると思い込んでいる理沙は、所詮縁の無い人間かも知れないと、瑠璃と剛の接近に、どこかで冷めた目を向けていた。ただ、自分の目の前でそれをやられると流石に腹が立ってきた。理沙は二人を見ないようにとなるべく背を向けていた。 そんな剛と瑠璃から少し離れた場所で、なんとなく欧米の色に染まった年配の女性が社員と話していた。 「これはこれは亜由美先生、お加減はいかがですか?先週はおいでいただけなかったので」 「ちょっと体の調子がすぐれなかったの」 「そうお聞きしています」 「それはそうと、あそこにいる、、、あの、瑠璃さんの隣の方は?」 「先生は、お目が利きますねえ、、」 「いえ、瑠璃さんがあんなに親しそうなので、また、新しい恋人かと」 「いえいえ、、、彼は、ブレイク氏の紹介で、出入りするようになったんですよ、、。野上さんといって」 「野上、、?」 亜由美の顔は緊張した面持ちになった。 「えっと、あの、どうかされましたか?」 亜由美の表情は相手にそれとわかるほど強張っている。急に、過去の、惨めで陰惨な生活の現実と秘密が重くのしかかってくる。 「、、、先生?先生、、」 「あ、ええ、すみません。ちょっと、気分が」 「まだ、本調子じゃないのでしょう、、、あちらでお休みになられますか?」 「ええ、、」 亜由美の視線は剛に釘付けになっているので、それに気付いた社員は付け加える。 「あの、よろしかったらご紹介しましょうか?瑠璃さんもいることですし」 「いえ、今はやめとくわ。ちょっと、作品のインスピレーションモデルにでもと考えたの」 「ああ、人物を元にした造形ですか?これは、これは、おめずらしい。先生のおめがねにかなったんですね?彼は」 「まだ、そこまでは、、、でも、今日はいいわ。疲れてるから」 亜由美は慌ててはぐらかす。 「かしこまりました」 モデルのことを話してから、亜由美はしまった、と思った。まさか、自分の事が、相手にバレるのではないかと思うと、早々にその場を離れる。