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ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」61

藤木には歌舞伎町で篠田という男が殺された事件に関与した疑いがどうやらかけられていたらしい。店では、藤木はその男を殺したという罪に苛まれ自殺したということで処理されていた。話は瑠璃を通じて注意を傾けていた剛の耳にも当然入った。美術商は突然きな臭い雰囲気に包まれ始めた。あるいは古くから従業員の間で燻っていたものが出てきたとでもいうのか。 母親の姓を継いでいる剛が、その篠田の息子であるということは周囲ももちろんのこと、当の剛さえまだ知らなかった。 「Shinoda? OK. I'll check it, as soon as possible」 剛は篠田という名前の人物のことを同僚に報告し、調べてもらうように依頼した。答えはヌッセンバウムからの通信で返ってきた。 「Mr.Shinoda is the man who was waiting for arrival of Madame's farther to find the article...then, he was killed by someone before he communicated the information about the article to Madame's father...at Shinjuku...then...Madame demanded to me to tell you Mr.Shinoda is probably your father...but we don't know exactly...we」 そこまで読むと剛の指は震え出す。 「篠田」が俺の父、、。何故、今そんなことを知らせてくる、、。夫人は知っていたのか?このことをずっと?だから俺にこの件を担当するようにヌッセンバウムに依頼したっていうのか!? 半分怒り混じりに剛は夫人へ電話する。電話口に出た夫人の声は極めて冷静だった。 「かかってくると思っていたわ」 「どういうことなんだ。俺の父が篠田というその人物だなんて」 「私も本当ははっきりとはわからない。ただその可能性があると伝えたかっただけ」 「どうして調査の始まる前にそれを言ってくれなかった?」 「告げれば調査に支障が出るからよ」 「なんで、、、いまさら」 「やっと、その名前にあなたがたどり着いたから」 「なんで、俺の父は、、。じゃ...

FGOのイベントもひと段落

 毎日クラススコアを上げています。(^^) これが結構強化として有効なようです。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」60

しばらくして剛はハワイにある隠れ家に理沙を案内する。別荘はソーラーシステムで稼働していて、不在の時にはシステムをオフにしてある。ラニカイビーチのすぐそばにあり、夜はロマンチックな雰囲気がする。ハーブの入ったアイスティーを飲みながら、一緒に夕日を眺め、こんな過ごし方をしたかったと告げる彼に、彼女は初めてほっとした。彼の表情は自然なもので、日本でのどこか緊張した面持ちとは別の穏やかさがあった。アメリカ育ちの彼の魂はアメリカのものだった。 だが、日本へ戻ると落ち着く間も無く、店の現代作品を中心に取り扱っていた、一見陽気だった人物、藤木正一の死をまず知らされる。 藤木の死は不審死とされた。出張したまま半年経過しても連絡が取れなくなり、家族からは失踪届が出されていた。藤木はパリの森深くで頭を撃ち抜かれ横たわっていた。目撃者は出ず、犯人はすぐには見つかりそうもなかった。そしてそのすぐ後、藤木の妻は衰弱して病に倒れ、程なくして亡くなった。彼等の娘は父母を同時に亡くしたことにショックを受け、吸い込まれるように死を選んだ。その日、同線の別の車両に乗車していた理沙は、しばらく列車の中で足止めをされた。駅員に聞いたところ、亡くなっている場合は検死に一時間はかかるだろうとのことだった。去年から多数の事故に遭遇していた理沙は深いため息を吐いた。 一体、誰がこの国を救えるのだろう、、。 藤木の通話記録を警察が調べたところ、違法な通信機器が使用されていた。藤木は何者かに言葉巧みフランスに呼び出されていた。おおかた取引の誘いか何かだろう。買い付けのための海外出張は日常よくあることのため、誰も不審には思わなかった。違法な機器であっても元の持ち主の契約自体が生きて継続している場合、繰り返された転売の足跡を辿ることは容易ではなかった。最後に誰の手に渡り、どこで使われたのか、海外の通信網が関わっているとなると捜査は困難を極めた。 藤木はそしてパリに呼び出され、ホテルに一泊した翌日、忽然といなくなった。彼は一体誰に呼び出されたのか、、。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」59

剛は調査の進展がないことに対する苛立ちが募り、それを誤魔化すように六本木の派手なクラブに足を運んだりしていた。夜の豪奢な街を象徴する、鱗粉で飾り立てたような店や、肉の欲望で艶光りしているレストランにも通った。淫猥な内装のフレンチレストランでは、毎夜爛れた関係の男女が高価なワインに溺れていた。行き着く先は崩れかけた高層ホテルのスイートあたりだろう。そこでどんな夜を過ごすのか、そんなことは剛の知ったことではなかった。バブルの崩れたこの国で、消えた泡をもう一度その手に掴もうと、よじれた夢の欠片を拾い集める男と女が蠢いていた。 そんな光景を目の当たりにしていると、なんだか飲まずにはいられなかった。酔い潰れ理沙の家に転がり込むことも増えていった。 彼女の仕事が翌日ない場合は、昼近くにベッドから這い出て、二人で近所のスーパーまで買い物にいった。それがまるで普通のカップルのようだったので、彼はよく苦笑いをしていた。その態度にはどこか皮肉っぽいところがチラチラと見え隠れしていた。 「Oh shit!」 「Quoi?」 「何だ、その鶏の鳴き声みたいな言葉は」 「えー、だから、くそっとか言ったじゃん。だから、何?とかって意味だけど。What?みたいな。で、何?」 「肉が小さい、薄い、美味しくなさそう」 肉が並べてあるスーパーの陳列棚を見ながら、彼はいつものようにぶつくさ文句を並べる。 「うーん、小さいのも、薄いのも認めるけど、別に不味くはないし」 「えー?どうなのかな」 「違うよ。肉好きのフランス人が、美味い!という肉だってあるんだから」 「奴らは、また考えが違うから。どうせ、霜降りだろ?」 「それは、そうだけど」 「俺の食いたいのはそういう肉じゃない。赤身の目の詰まった分厚い肉だ」 「あー、うーん、、、そう」 言われても理沙は大抵相手にしていない。郷に入ったら郷に従えとでも言わんばかりだった。彼女自身、帰国してから色々あったせいで、どこか諦めムードだった。日本ではワインもコーヒーもパンも確かに違う味がする。それは海外で入手できる「日本米」と称するものが違う味がするのと一緒だった。日本とは水の種類も違うから、現地の水で炊いたらたまにより奇妙な味になる。 時間があれば、彼女は巨大なアメリカンマーケットやヨーロッパから出店してきているマーケットに彼を連れて行く。そういった場所には彼の好きそ...

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」58

 「一度、精神科医に診てもらった方が」 促されて剛ははっきり答える。 「俺には何もない。トラウマもない。第一日本語での鑑定なんて俺には必要ない。俺には特別引っかかるような記憶もない」 「どうしてそうはっきりと分かるのかな」 「もう、実は、診てもらったことがある。とっくの昔に。まだ、思春期の頃に。退行催眠も行った。何も、全く何も出てはこない。何かの、記憶の欠片でも出てくれば話は別だけど」 「そう。それじゃ、コーヒーの取り過ぎは?この間も言ったけど、問題があるとすぐに分量が増えるとか何とか、、」 「かもしれない」 「いつも言うけどカフェインは中毒性があるから」 「分かっている」 「滞在状況はどうなの?」 「大丈夫だが、ただ」 「ただ?」 「この事件は思っていたよりも根が深い。それに」 「それに?」 「いや、大したことじゃない。その、プライベートなことだから」 「女?あなたの身分を打ち明けた相手のこと?」 「まあ、そうだ」 「本気になった?」 「かもしれない。俺自身よくわからない」 「それは仕方ないわ。私もそうだったから」 「そうだな」 「彼女は日本国籍ね」 「ああ」 「どうするの?」 「まだ、決めてない」 「私は、アメリカに連れて帰ってきたけど」 「アメリカに、、、か」 「そうすればいいんじゃない?相手がよければ」 「そうだな」 「ま、あなたが、自分で決めることよ」 「まあな」 「私達だって人間だから」 「愛することもあるってわけか」 「当たり前のことよ」 その当たり前のことが剛には今までできなかったのかもしれない。そのことを同僚には言えなかったものの、問題の一部を同僚が理解していることに多少ほっとする。 「ありがとう、色々」 「ヌッセンバウムに言伝は?」 「いや、今日はない。メールした報告書を渡しておいてくれ。進展無し、さ」 「了解」 切れたツーツーという通信音がどこか二国間の距離を思い知らせていた。

FGO オーディールコール導入とペーパームーン

終わりました。特に難しいこともなく、なんとなくのんびりと。 クラススコアは少しずつ上げていってます。 ペーパームーンは出撃制限がかなりあるので手持ちのサーヴァントが 殆ど活躍できなかったのは残念です。  

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」57

理沙が警察に行かなかったのは多少調査の助けにはなった。これで問題の一つはなんとか解決することができた。しかしそれが剛の精神状態を改善させるのには全く役立たなかった。何かがヒタヒタと彼の魂に近づいてきていた。 その影から逃れるように彼は度々あまり人気のないひっそりとした古いバーで深酒をするようになる。いつも決まってボンベイをオーダーしていた。酔い潰れながら事件の真相に近づきつつあることをどこかで意識していた。 そして店から出ると繁華街の夜が待っていた。しかしそこは徐々に空洞になっていった。ある場所はリニューアルされ活況を取り戻したが、ある種の盛場は人気も無くなっていった。かってバーには銀行家がたくさん来たものだとある店の主人はこぼしていた。バブルが崩壊した後は彼等は殆ど寄り付かなくなった。住むところすらない人々が増え、毎年厳冬に耐えかねて息を引き取っても小さなニュースになるだけだった。煌びやかな表の裏の、崩れていく世界、これが日本の現実だった。階段を下りたところにあるバーのマスターもこう語った。 「平日はさっぱり人が来なくなりましてね、、。昔は良かったんですけどね。多くの人々が来てくれて、、。そんな時代も終わったんですかね。今は金曜日位でしょうか。まあ、土日は会社がお休みなので、夜は皆さんさっさとお帰りになって店には来ないんですよ。ホラ、宅飲みってんですか、それですよ」 目に見えない「真実」に近づくほどに剛の体調は何故だか悪くなっていき、アメリカの同僚の調査官にも指摘される。 「剛、あなたも何かあるんじゃないのかしら?この間からどうもやっぱり調子がおかしいようだわ」 「何故わかる?」 「眠れないようなことを言っていたし、通信文には大きな感情の乱れがあるからよ。文章が時々長くて冗長で歯切れが悪いわ」 そう言われて、この頃、髭を剃るのも億劫になってきているのが分かる。鏡を見ても眉間にしわが寄っている。今まで過去にこんなことは一度もなかった。いつもは、真実の匂いが清々しささえ 感じさせてくれた。 それが何故、今回に限って、、。

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」56

 翌週の雨の晩に、公園のトイレの青白いランプの下で、赤ん坊の引きつるような鳴き声を耳にした途端に、剛は激しい嘔吐とめまいを感じ、身体を引き裂くような恐怖に襲われた。急いでその場を立ち去るが、何故そうなったのか理由は分からない。 「一体、何が起こったのか」 あるいは何が起こり始めているのか、分からなかった。日本に来てから、衣食住、肉体生活、全てにおいてアメリカとは違っている影響から、軽い身体的、精神的衰弱が時折感じられるようになり、それがやがて継続するようになっていた。その症状はなんだか徐々にひどくなっていくようだった。世界の端からバランスが崩れていくようだった。 調査はそして難航していた。 彼の体調が芳しくないことはアメリカの同僚にもやがて伝わっていった。 「I think you feel bad」 「Yeh, I can't sleep... 」 「コーヒーとか飲んでいる?」 「そうだな、結構」 「カフェイン中毒かもね」 「そんなもんなのか?」 「とりすぎは良くないかな」 「問題があるんだ、色々とね」 「調査の上での?」 「まあね」 「進んでいない?」 「ああ。もうそろそろまずい状況かもしれない」 「周囲にあなたの身分が露呈しそうとか」 「それも、心配している」 「滞在が長引いているから?」 「そうだ。それに、彼女に気づかれた」 「頭の良さそうな女性だから」 「最初はそうは思えなかったが、そういう部分を隠していたのかもしれない」 「どうするの?」 「実は、もう説明した」 「あなたが調査会社の人間だってこと!?」 「そうだ。仕方なかった」 「それでどうしたの?」 「彼女をとりあえず説得した。というか彼女は警察には行かなかった、最初から」 「そう、そうなの」 同僚は電話の向こうで考え込んでいるようだった。

お詫びです

このたび身体的な疲労にて本日の連載はお休みいたします。 お詫びいたします。よろしくお願い申し上げます。 

ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」55

 理沙をリビングのソファに座らせると剛はキッチンから水割りを持ってくる。 「飲むと気分が落ち着くよ」 それを受け取り彼女は黙って口をつける。しばらく見ていた彼は彼女の手からグラスを受け取ると落ち着かせるように肩を撫でる。彼女を引きずり込むことになっていながら、何故か彼女に引きずられるような感じがする。彼女のどこに「俺を引っ張りこむ力があるのか」とだんだん彼は自制心が効かなくなってくる。彼女の中に存在するある種の波長との一致が原因で、彼自身を奥底から目覚めさせ、調査にも影響を及ぼしている。同時にそこから全てが崩れていくような感じがしていた。 そして、その夜、生まれて初めて剛はごくごく当たり前の想いが彼を動かしていることを感じた。生まれて初めて「愛している」と口にした。その言葉と彼女への接し方が何か深刻な色を帯びていたため、彼のその言葉を疑うことは難しかった。彼の愛の言葉には何かせっぱ詰まったものがあった。 その夜、多分、出会ってから初めて、二人は深く結びついた。二人の結びつきの中には、しかし理屈では説明できそうもない深い闇が横たわっていた。