ろまんくらぶ「仮面の天使」86

 健のことをふと思ったその気持ちを打ち消そうと、茉莉はビールを追加する。

「もう一杯、同じもの」

「かしこまりました」

「茉莉ったら飛ばし過ぎじゃない?」

「いいのいいの」

運ばれて来たグラスに口をつけ、茉莉は勢いよく飲み始める。そのうちに頼んだ料理が運ばれてきてテーブルは一気に賑やかになる。

「美味しいね、このクラゲの前菜」

「ちょっとピリ辛ね」

「ピータンもいける」

「ねえねえ、紹興酒頼む?」

「いいねいいね」

「ボトルで?」

「いっちゃえ」

3人は紹興酒をボトルで頼む。

「カンパーイ」

「カンパイ」

「ぐいっと」

そのうちに肉料理も魚介料理も運ばれて来て、3人はかなりの勢いで食べ続ける。

「ねね。茉莉って教授とできてるの?」

「え?」

「噂になってるみたい」

「まっさかあ」

茉莉は否定する。2人の仲はあくまで非公式だった。大学の教授と学生の恋愛なんて聞く人によっては眉をひそめる。

「どんな噂?」

「何だか2人が喫茶店で親しそうに話してたって」

「ああ、それ。だって先生が教授室じゃなくて、ちょっと息抜きに外でコーヒー飲みたいって言ったから。論文の相談だよ」

「なんだあ」

「それ以上はナイナイ」

茉莉はうそぶく。あんまり大学で2人が付き合っていることを大っぴらにする気はなかった。

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