ろまんくらぶ「仮面の天使」75
健と茉莉が眠りについている間、運命の神も天上でうとうとしていた。ぐっすり眠るということはなかったけれど、今は2人の仲をそっとしておこうと思っているのだろうか。2人は深い眠りに落ちているようで、夢にうなされるという様子もなかった。すやすやと寝息を立てていた。
翌朝、健が目覚めると、茉莉はもうとっくに起きて出る支度を済ませていた。
「朝食は?」
少しの沈黙の後、彼女は答える。
「いんない」
「お腹空くよ?」
「うるさいなあ」
彼女はぷいっと横を向く。 刺激しないように彼は黙ってしまう。
「出かけるから、じゃ」
「鍵渡しておくよ」
健はスペアキーを彼女に差し出す。彼女はそれを黙って受け取るとさっさと靴をはいて玄関を出る。彼は肩を落としため息を吐く。
「やっぱりすぐ仲直りは難しいんだろうな」
ひとりぐちをこぼす。
玄関を出ると茉莉は大きく伸びをする。閉まったドアに向かって彼女はあっかんべーをする。今夜は早く戻ってなんかやるもんかと毒づく。
「ふん、だ」
彼女は勢い良く歩き出す。
ひとり家に残された健は、とりあえず朝食の支度を始める。会社は10時からだったからまだ時間はあった。コーヒーを沸かすと、トーストを焼き、ベーコンエッグをこしらえる。それにサラダを添えると満足する。
「あ〜あ、茉莉にこれを食べさせたかったな」
椅子に座るとフォークで卵料理をつつく。窓からは爽やかな朝日が入ってくる。それを目にすると彼は食べるのをやめ、物思いにふける。実際どうしたらいいのかまだよくわからなかった。
茉莉を傷つけたことは紛れもない事実だった。
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