ろまんくらぶ「仮面の天使」46

ええい、ままよ、と健は意を決する。

茉莉の当たりはきつかった。

「えー、なんで?彼、こんな場所、知らないハズだよ。どーして、あんた知ってんの?」

そんな彼女の言い草に心を痛めながら彼はまた出まかせを告げる。

「教授は全て知ってるから、だから迎えに行ってくれって」

そう言った後、彼は苦々しさを感じる。

「えー?そうなの?えーと、えーと、じゃあ、車出してもらうから。ちょっと待っててよ。店の中に運転手いるから」

「いや、彼等には言ってある。それに私は、車で来ているから」

「そうなの?」

茉莉はふらふらしている。とにかく健は嘘を吐き通す。下手に彼女に騒がれたら全てがおじゃんだ。

「うーんと、じゃあ、コート取ってくるから」

彼はコートを差し出す。

「えーと、じゃ、行く?」

彼女は足取りもおぼつかず、ビルの外へ出て行く。通行人がぶつくさ言いながら絡んでくる。健はふらついている茉莉の腕を捕まえると、自分の車の場所へ引っ張っていく。彼女はふと彼をじっと見る。

「アレ?ホント、あんた似てるよー」

彼女は呂律が回っていない。彼はぎくりとするとわざと少し声を変える。

「それは、ないですよ。今日初めてあなたに会いましたから」

わざとらしい他人行儀な演技。今気付かれたら彼女が騒ぎ出して逃げると思ったので、とにかく彼女を車に乗せようと警戒する。茉莉はじーっと彼を見る。

「そーお?あの」

「とにかく急がないと教授が」

「そうだねー」

投げやりな茉莉の言葉が健の心臓にグサリと突き刺さる。とにかく彼女をここから遠ざけようと努める。


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