ろまんくらぶ「仮面の天使」45
噂がほとんど現実とは違うかもしれないことに健はほっとする。ほっとすると同時に自分に向かって「バカ」を連発する。
茉莉はトイレに向かうと、気持ち悪くなっくる。お酒の飲み過ぎで悪酔いしていた。しばらくすると気分が回復してくる。前よりもお酒に強くなっている。とにかく、以前の自分は死んだんだと、時々戻ってくる昔の姿や心情を自分自身で踏みつけようとする。そうしながら自分自身を馬鹿にする。気分が少し回復するとまた店に戻ろうとする。健が化粧室の入り口で立ち塞がる。
あれ、このひと、えっと、とお酒で朦朧としているので茉莉はうまく認識できない。えーっと、えーっとと頭の中でぐるぐる考える。相手はサングラスをかけているし、真っ黒の服で少し気味悪い。酔っているのと健の変装のせいで、茉莉は彼の顔がよくわからない。にしてもえーっと、このひとは何で入り口を塞いでいるんだろう、と考えがまとまらない。茉莉には世界が歪んで見えている。健は茉莉がこちらの姿もわからなくなる程、お酒を飲んでいるのがわかる。彼女はぼんやりと彼を見ながら、トイレの奥の洗面台と壁のところを背にしてもたれている。えーっと、、、わたし、そうだ、戻らなくちゃと茉莉は意識をしっかりしようと努める。昔の彼女ならまず着たりすることのなかった赤いミニのスーツに体を包まれている。高めのピンヒールのパンプスをはいてふらふらしている。彼女は明らかに以前よりも痩せていた。
その内に他の客が化粧室に入ってくる。健はどかざるをえない。何だか気分が悪そうな様子の一群だった。健は茉莉の状態を理解する。彼女は下手するといつもこんなに泥酔しているのだろうか。まさかそこまできていないことを彼は祈る。彼女はよろよろと出口に向かう。彼は彼女の腕を掴む。掴みながら、彼女が弱々しくて、痩せて体に力が入らないのが分かってしまう。
「え?なにあんた誰?」
健は嘘を吐く。咄嗟に出まかせを思いつく。
「あの、教授が急用で、実は倒れてしまって」
言ってからどうしようかと彼はびくびくする。
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