ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」26

「君は、ブランド物とかは興味ないのかな?」

「そういうわけでもないけど、でも」

そこで彼女は話を中断する。

「お金がないの?」と言いそうになって、剛は口を閉じる。それを、今こういう服装の自分が言えば、単なる嫌味にしか聞こえない。彼女は相手のそういう気持ちを察したのか、話を少しずらして続ける。

「嫌いなわけではないけど、例えばイタリアの服とか、着心地が良さそうだし、でも、その、着て行く場所があるわけでもないし」

「まあ、そうなるね」

「そう。服が歩いているみたいになっちゃうし、ガラじゃない」

「似合いそうだけどね」

「また、お世辞」

「お世辞ではないけどね」

食事も終わりに近づき、透明な琥珀がかったルビー色の美酒も残り少なくなった。理沙は、剛の、その酒量に驚いていた。珈琲と、それに添えられた小さな焼き菓子が出てくる頃には、少なくとも 二人はある程度の親近感をお互いに抱いていた。それを利用して、彼女の生活に入り込むためには、あとひと押しだった。

そしてその晩、剛が突然、理沙の家まで連絡もせずにやって来る。というか彼女が帰るのを、駅からのルートで彼女が必ず通るだろう場所で、トヨタを駐車させて待っていた。

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