ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」28

そんな様子が相手に伝わったのか、あるいは何かに勘づいたのか、彼女はお茶を飲みながら剛をじっと見つめている。何か気付かれたのではないかと彼は多少ひやひやする。

「変わった人」

「変かな」

「そう、なんとなく不思議な感じがする」

「そうかな。こういうことはしないのかな」

「日本では殆どないかも」

「そうなんだ」

「海外では普通なのかも知れないけど、いつもこんな感じ?」

「まあね」

彼はお茶を濁す。彼女の強い視線に動揺しながらも、言われた内容にほっとする。 真っ直ぐな理沙に後ろめたさを感じながらも、目的は達成することができたので彼女のアパートを出る。

彼はこれから始まる調査が確実に相手を巻き込むであろうことを思うとどこかで後悔し始めていた。同時に、いつもは冷静な自分が、こんな些細なことで、早くも私情を挟み始めたことに戸惑っていた。彼女の中にある何かが彼を動揺させていた。


そうして始まった店への出入りと理沙への接触からは、最初はたいした情報を得ることはできなかった。特に、彼女には、ごく普通のオーエルの生活パターン以外、何も見つけることができなかった。一週間くらい調べたところでは、彼女は大体夜の七時三十分から八時くらいに帰宅して、その後は、入浴したり食事をしたり、テレビを見たりしていた。おおむね静かに過ごしているようで、出かけることも滅多になかった。

店での情報収集は特に宝石の所在が何処か、それだけに焦点が絞られて始められた。およそ二月、作品を見るふりをしながら、剛は足繁く店に通った。その間に、仕事の流れが見えてくる。

周防家は運転手付きの車で来て、朝十時のミーティングを済ませ、簡単な打ち合わせをすると、大概何処かへ消えてしまう。そうなると捕まえるのが難しくなってくる。ひどい時には出社せず、美容院だとか買い物に時間を割いているようだった。どうも仕事をする意志がなさそうだった。そういう様子がわかるにつけ、剛は苦笑する。秘書の仕事の五割が結局オーナー一族の旅行の手配で埋まっていて、ホテルの予約、飛行機の予約、列車の予約にゴルフの時間調整、それにレストランのメニューの選定に車の手配、、。スキーの道具の手配にスキーコーチの予約、、。旅行先はアメリカ、アジア、ヨーロッパ、バハマ、、。ディズニーランドのチケットの手配があった時には、さすがの剛も驚いた。年配の秘書が、たかが小中学生のお守りまでしているとは思わなかった。その子供達と言えば、両足をしばしば事務机に乗せているらしく、一族の中で、多少とも常識のある人がいる時には注意しているのが聞こえてくる。おまけに一族が、場合によっては一ヶ月にも及ぶ長いバカンスから帰ってきた時には、記念写真や土産の贈答に追われている。これでは一体いつ仕事をしているのだろうか。

それにたとえ日本にいたとしても、やれパーティーだ、夕食会だと仕事以外の活動の時間が長い。オーナーが事務室にいて書類をめくっているのはどうやらほんの僅かな時間らしい。会議は滅多に行われない。大体週の半分も会社にはいない。暇さえあればどうやらスポーツジムにでも出かけているようだった。アメリカのトップとはえらい違いだった。

それでは誰がいったい会社を動かしているのか、、。

それは事務室に結局朝から晩まで張り付いている事務員達だった。

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