ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」23
しかし、会社もリストラが進み、残った者も辞めさせられた人々の分のつけを払わなければならない。いくら早く仕上げても、どうせ賃金は平行線だと思うと、今ひとつ理沙のやる気も失せる。所詮身内優先の会社で、全くの外部の人間にはたいした支払いはないのだから。先日も、まるで仕事をしている様子もないアルバイトよりも賃金が安いことを知ったばかりだった。ただその人物は周防瑠璃の友人なのだった。
おまけに妙な客からのアプローチのことを考えると頭痛がしてくる。あんなイタリアのブランド物で全身を固めた感じの男性とは住む世界が違うと、彼女は最初から線を引いていた。トラブルはごめんだと、忙しすぎるせいか、気持ちのゆとりは全くといっていい程なくなっていた。反動で、昼休みになると、全身から力が抜けてしまうような虚脱感に襲われる。それにたとえいくら良さそうに思えたとしても、客は客だった。
時計を見るともう12時を回っている。あと30分で、どの位こなせるだろうか。そう計算しながら、彼女は必死にパソコンのキーを叩く。
サザンテラスビルの一階ロビーに着いた頃には、もう一時を十分も過ぎていた。慌ててそこへ駆けつけると、野上剛はすでにそこで待っていて、時計をしきりと気にしていた。その姿が目に飛び込んでくると、理沙は急いで、ドアを押す。
「申し訳ございません、お待たせしてしまって」
「いえいえ、こちらこそ、お呼びたてしてしまって」
意外にも待たされていた彼は、彼女が遅れたことを気にしながらも、怒っているという風でもなかった。それはでも、彼女には奇妙なことに思われた。普通、店のひょっとして将来のお得意様になるかもしれない、資産の有りそうなこういった人物は、待たされることが嫌いな場合が多かった。ましてや国際的な忙しいビジネスマンはなおさらそうだった。
彼女がすまなさそうな気持ちでいるのを見抜くと、剛はそこへつけ込むことにした。彼女の背中に半ば強引に手を回すと、さっさと自分の考えている店へ連れて行く。
「予約してあるから」
「え?あの」
「時間がないので」
「すみません」
彼が彼女を連れて行った店は、どこか薄暗かった。
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