ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」21

 人いきれから抜け出し、裏の玄関口の側でスマホを取り出すと、先ほどの従業員が近づいてくる。

「おかえりですか?」

「ええ、やはり時差のせいでしょうか。少々疲れました」

「夫人に挨拶なさいますか?」

「いえ、まだブレイク氏がおりますし、他のお客様の相手でお忙しいでしょうから、今日はこれで」

「お車ですか?」

「ええ、運転手を呼びますので」

そう言うと、剛はすぐに来てくれるよう連絡する。

「今晩は少し冷えるようですね」

「そうですね」

「お迎えがすぐ来るとよろしいのですが」

そう、言い終わらない内に、会社の裏口に黒いベンツが横付けされ、運転席のウィンドウが下がった。中では眼鏡をかけ、白い手袋をした年輩の男性がハンドルを握っている。

「お待ちになりましたか?」

「いや、早かったね」

「今晩はお戻りになられますか?」

「そうしてくれ」

「かしこまりました」

後部座席のドアが開くと剛は乗り込む。店の従業員ひとりと軽く挨拶を交わす。ウィンドウが音も無く閉じると、黒光りのする重い車体はゆっくりと滑り出す。

車を見送りに出てきていた従業員は、剛が相当な地位の人間であると、身なりや、運転手の様子から判断する。それに、アメリカの匂いのする外見や身のこなしとはどこか違う、ある種の重厚な、底知れない雰囲気が周囲を威圧していた。どこか売買の世界からかけ離れたものだった。

その夜から二週間経っても、理沙から電話がかかってくることはなかった。彼女はどうやら剛に全く興味が無いようだった。女性に対してそれなりに自信があったため、そのことがなんとなく気に入らなかったものの、調査上そんなことを考える暇は剛にはなかった。彼女にはどうにか接近する必要があった。いずれ周防家に近づくにしても、外国語関係の情報を全て読み取っていく必要性があった。

それに、まさかとは思うものの、彼女が今回の作品の消失に関係がないかと言うと、断定はできなかった。何らかのことを知っている可能性も否定できなかった。

それを知るためには、彼女のプライベートに入り込む必要があったため、とにかく剛は自分から美術商に電話をかける。相手を警戒させないために、なるべく何気なさを装い、とにかく昼食に誘い出すことをまず考えた。

「はい、周防美術でございます。はい、宇津木ですね。少々お待ち下さい」

机の上の内線が鳴ると、ちょうど、理沙は次の書類の翻訳に取り掛かろうとするところだった。

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