ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」6
それと同時に夫人の奥底に眠る、自分と同質の果てしない孤独を剛は見ていた。戦争で傷を負った永遠に理解されることのない人々の終わり無き彷徨。そして彼はその言葉「第二次世界大戦」によって何かを思い出しかけていた。その戸惑いを夫人は敏感に感じ取る。戦争の言葉を、それに剛は、ある場所で聞いていた気がする。面会に来た、この夫人が話していたことだったのかもしれない。
「あなたは必ずやってくれる。私には分かる」
それには剛は答えずに、孤独で澄んだ瞳をじっと夫人に向ける。
「探して欲しいものがあります。私の先祖が所有していたもの」
「分かりました」
それが何を意味するのか剛にはすぐ飲み込めた。人間が獣に変わった第二次世界大戦。いや、きっと多分太古の昔から、人は人ではなかったのかもしれない。今も悪魔と天使が神の意思を確かめようと戦っている。命を消す側に立つのか、守る側に立つのか。
「あなたならきっと見つけてくれるはず」
「品物は?」
「古い宝石です」
その言葉がさらに剛の中の何かのボタンを押した。何かを捜し求める自分が「宝石」に反応していた。
「分かりました」
声がはっきりと大きくなる。
「詳細はこの資料を読んでくだされば分かりますが、終戦前にその宝石を日本のある古美術商が所有しているというところまで私の父は突き止めたのです」
「日本、ですか」
「そうです」
夫人はそして沈黙した。日本、という言葉が剛をさらにある衝動へと駆り立て始めていた。
「あなたが、昔言った、私に頼みたかったこととは」
「そうです」
「どうして私に?」
「それはその内に分かるでしょう。あるいはあなたには分からないかもしれない。分からなければ調査は難しいものになるかもしれないし、あるいはその事とは関係なくあなたは続けてくれるでしょう」
「そんな抽象的な言い方では不明瞭で、最初から調査の障害になると思いますが」
「分かります。でも、私も全てを知っているわけではないのです。私が知っているのは、私の父が、宝石を捜している時に、殺人事件があり、宝石の行方がそれ以来分からなくなったという事なのです」
「でも何故私に?」
「それはあなたが自分で理解する事です。あなたが知りたい何かが、そこにあるはずです」
「私の、、」
「あなたには、日本語教育を充実させるよう、だから学校を選びました」
「この、ために?」
「それもあります。でも、それ以上に、あなたの母国語は日本語なのです。それはあなたの文化なのです。たとえあなたがアメリカ国籍だとしても」
「私の文化、、、文化か」
しばらくふたりは沈黙していた。
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