ろまんくらぶ「Thirteen 13ー再生ー」5

 若い母親と共に冷たいコンクリートの路上に放り出された剛は、その後アメリカを後にしたその母にも見捨てられた。彼女は自分一人分の飛行機代を捻出するのがやっとなのか、受け入れてはくれなかったその大地を、逃げるように去っていった。ひとりニューヨークに置き去りにされた彼は、当然のごとく養護学校に入ることになった。しかし、それから程なくして、ある夫人が剛に注意を払うようにと援助を申し出たので、その期待に応えなければならないと学園長に告げられ、養護学校から寄宿学校へと移される。それはただ足長おじさんというような生易しいものではなかったし、かといって何か過酷で冷酷なものでもなかった。

「私が、あなたに今こうするのは、将来あなたに頼みたい事があるからなのです。これは取引のようなもの。強い意志を持つ人にしかできない仕事があります。今のところ、それが将来できそうなのはあなたしかいないのです。だから、何も負い目を感じる必要はありません。ただし、しっかりと生きていけるよう、私が全て手配します。あなたにはどうしても実行して欲しいことがあるのです」

まだ5歳だった剛は、夫人のその言葉を全て覚えていたわけではない。それに30年以上も前のことなので、あの当時、夫人はまだ若かった。その時以来、その夫人が確かに剛の学業や生活の援助をしてはいた。ただ、その女性が、まるで里親のごとくに面倒をみたりということは決してなかった。それはまるで、ある種の契約関係の様だった。まだ親が必要だった幼子には、それは厳しい対処の仕方だったのかもしれない。ただ、夫人はその時に、彼女は決して親にはなれないと明言していた。彼女はそうすることは全く望んでいなかった。

その遠い過去への回想を打ち破るように、夫人は唐突にはっきりとした声で口をきいた。

「My grandfather is killed by」

「World War Two」

「Why you understand?」

「I feel, I don't know」

口をついて出てきた自分の言葉に、剛は自身で驚いていた。

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