ろまんくらぶ「仮面の天使」90
茉莉はまたボンベイのソーダ割りを頼むとバーからフロアを少し眺める。
先ほどの金髪の男はもう他の女性に声をかけて一緒に踊っている。それを見ると茉莉はため息を吐く。
「誰でもいいんだ」
断ったけれど、何だかがっかりする。
「要するに好きとかではないんだよね」
少しふてくされる。
グラスに気をつけながら、茉莉はフロアの脇の通路をゆっくりと歩き、席へ戻る。友人2人は腰掛けていて、だるそうにしている。
「何飲んでんの?ともちん」
茉莉に言われて友人の智子はボブをかき上げる。細めの少し長いピアスが光る。
「ジャックダニエル。さっきとおんなじ」
「京子は?綺麗な色」
「テキーラサンライズだよ。甘いの飲みたくなったから」
京子は長いストレートの黒髪を揺らす。赤いドレスに艶めきが映える。
透明な液体のグラスをテーブルに置くと、茉莉はゆるくウェーブのかかったミディアムヘアを片手で後ろへたらす。
「でさー、見たよ。さっきの金髪」
「ああ、アレ?」
「結構イケメンじゃん」
「でももう他の女と踊ってる」
「あ、ホントだ。かっるー」
「ね。軽いよ。関わると面倒」
「だよねー。めんどくさ。女いっぱいいそう」
茉莉は面倒な恋愛に巻き込まれるのはごめんだった。ソファにもたれ友人と話している方が何倍も良かった。恋愛を面倒くさいとは思っていなかったけれど、面倒ごとに首を突っ込むのは嫌だった。お酒が回ってきて、踊る男女を眺めていると、さっきのバーカウンターにいた若い男がステップを踏んでいる。よく見るとその脇で彼に寄りかかりそうになっているミニスカートの女が見える。
「なんだ。彼女いるんだ」
茉莉はポツリとつぶやく。
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