ろまんくらぶ「仮面の天使」9

 仕事を終わらせると健は、車で茉莉をどこかに連れて行こうと考える。食事は彼女の差し入れで済ませたので、バーとか映画とか色々と思い浮かべる。

「どこか行きたいところあるかな。バーとか映画とかその他何か。どっちがいい?」

「どっちでも」

「じゃあ、映画にしてみる?」

「うん、、」

健は疲れているので、茉莉が沈んでいるのには気づかなかった。映画館に入ると彼女はさっきのことしか頭になくなる。そのうちに健はうとうととし始める。こうなると映画のストーリーはあやふやになる。


帰りの車の中で茉莉はやっと少し不安を口にする。

「あの、さっきの亜紀さんって」

「あ、彼女?スタッフだよ。よく仕事してくれてるし、助かってるよ。彼女が何か?」

「ううん。別になんでもないけど」

それ以上はなんだか説明しずらい。

「あー、今日はまじ疲れちゃったよ」

「あの、いつも、あんなに遅くまで、その、彼女」

「う〜ん。結構ややこしい仕事してもらってるから。ま、週2〜3回は」

「そう」

「何で?さっきっから」

「いや、あの、大変だなって」

誤魔化そうとして茉莉は嘘を吐く。疲れているせいで健は彼女の微妙な心の動きにまで気が回らない。もし、健がもっとよく亜紀と茉莉を見ていたら、状況が飲み込めたはずだったが、とにかくその日は帰って眠りたかった。


茉莉を家まで送ると、いつものように健は彼女にちょっとキスをする。無理をしたくなかったので、あんまり彼女を引き止めなかった。茉莉にとって、そんな健の態度が、逆に彼女に対する関心が薄れたかのように見える。だんだん女らしくなってきた茉莉には、それが疑いの種になってくる。

もしかして、あの亜紀さんと、、。

茉莉はそうやって疑いの泥沼に、少しずつ、少しずつ、落ち込んでいく。

健は、茉莉におやすみを言うと、帰っていく。疑いに取り憑かれたまま、茉莉はぼんやりと家の前で彼の車を見送る。彼女は、生まれて初めてと言っていいくらい、苦しい嫉妬の気持ちを覚える。あの婚約者の時は、事がすぐばれて、苦しんでいる時間はなかった。でも、今回は、ただ、疑いの気持ちが覆いかぶさってきた。そんな茉莉の思いを健は何もわかっていなかった。

家へ入ると茉莉は、ゆっくりとお風呂に入り、気分を変えようと努める。でも、ベッドの中で、天井を見つめると、もやもやした気分を持て余し始める。

車を車庫に入れると、健は足早に家へ入る。荷物を片付け、シャワーを浴びるとぐったりと眠り込む。

茉莉の家族も彼女の変化に気づかない。彼女はひとり悩み始める。

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